第11話 煽り2

 教室についてから今日の科目の準備をして机の上に腕を乗せて枕にする。昨日の事が頭から抜けず、全然眠れなかった。暖かい日差しが俺を優しく包んでる為、直ぐに力が抜ける。


 「…きて…起きて!」


 身体が揺さぶられ、声がしだいにしっかり聞こえ目を覚ました。


「おはよう、朝だよ?」


 可愛く声をかけられる。こ、これは!


「美優さん、最高です!」


「朝の第一声がそれ?」


 ふふふっと和かに笑う。するとクラス全体が笑いに包まれた。今、思えば美優以外の声はなかった気がする。


「慶、お前最高だぜ‼︎ワッハハハハ!ウゲッ!ゲホ、ゲホ、くっふふふ…ワッハハハハ!」


「長げーよ!笑」

 

 思わず突っ込んでしまった。収束したかと思えば、復活したからな。徐々に笑いが収まる。授業開始だ!


「はい、みんなが黙るまでに5分かかりました。」


 先生の静かな声が教室に響く。後、少し口が悪い。


「だから何?早くしてくんない?時間の無駄。」


 顔が可愛いくて人当たりが良いと評判の小柄の女子が苛立ちげに言い放つ。あの子の口からあんな言葉が出るなんて想像すらしなかった。この勇気ある少女の名は月島 光里つきしま ひかりだ。話した事は無い。


 スースーと風が股間に流れ込んでくる。オイ!なんで勃ってるんだよ。ってちがーう!なんでズボンが無いんだー!驚きのあまり声を出しそうになる。


「慶、どうしたの?」


 声が少し漏れてたのか美優に声をかけられた。


「聞いてくれ、ズボン盗られた。」


「…え?脱いでたの?」


「脱ぐ訳無い笑」


「だよねー。犯人に心あたりは?」


「無い、それよりもジャージのズボンプリーズ」


 頷いてからこっそり渡してくれた。一番後ろの席で良かった。受け取り礼を言う。


「ありがとう、愛してる。」


 音を立てずに素早く履くと先生と目が合う。


「今日は13日だから、北村!この問題を解いてみろ」


 今日は俺の出席番号の日だったか。ん?これで前に行くのを拒否したら、犯人が野次を飛ばすんじゃね?


「先生!不可能です!」


「諦めんな!やれば出来る!」


「やれなければ、不可能です。パス。」


「あんな問題も出来ないの?」


 くそイケメンに挑発をされる。15-2の答えは簡単だ。貴様が犯人か!


「なんで簡単な問題で前に出なければいけないのですか?松崎君に譲ります」


「松崎!お前なら出来るよな?」


「もちろんです!」


 松崎 隼人が得意げな顔で黒板の前に立つ。


「出来なきゃ退学だ。馬鹿。」


 うっかり心の声が漏れる。

周りから苦笑してる声が聞こえて来た。美優も笑いを堪えてから笑みを溢す。


「それ、人の事言えないでしょ笑」


 因みに松崎は答えを間違えて笑い者にされていた。75-2と読むのが正しかったようだ。危なかった。授業が終わり席を立つ。


「情報を集めて来る。」


「いってらっしゃい。」


 美優とそっと言葉を交わす。クラスメイト達は俺の事や松崎、月島さんの話題で持ちきりだ。月島さんの所に行き、声をかける。


「月島さん、さっきはナイスだった。正論過ぎる笑」


 クラスメイト達は「何、あの子感じ悪…」や「マジで引くわー、アレは無いわー」と月島さんの評判を下げようとやっけになっていた。


「今日の北村君は最高に面白いね笑」


 満面の笑顔を見せた。


「あんま、可愛い過ぎると惚れるだろ?」


「……!」


 顔を真っ赤にして俯いてしまった。さて、ズボンを探すか。定番と言えば、窓の外に投げ捨てられているか、鞄の中。それかゴミ箱だ。初心者は探すのに苦労するが俺クラスになるとある程度のアタリをつける事が出来る。


「……」


ゴミ箱に捨ててあった。回収してトイレで履き替えて席に着くと美優にスマホの画面を見せられた。クラスのグループラインだ。そこには採寸を受けている俺の相棒が居た……!

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