第10話 煽り

4月13日火曜日


 いつもの朝の日課を終え、学校に向かう。景色を観ながら桜の小道を歩くのが好きだ。足下には桜の絨毯じゅうたんが出来ていて、風が吹けば花びらが舞う。木は未だに大量の花を咲かせている。この時期の気温、風、天気、花の香りは最高だと思う。風が吹き花の匂いが鼻に飛び込んで来た。


「やっぱり好きだ……香り」


 突然、背後から腕を回して来てだ抱きしめて来た。思わず声が出る。


「ウォッ!!?」



「これでお前は俺の物だ…キリッ」

 

「何故その言葉を…!君はいったい‥…?」


「今さっき、私の名前言ってませんでしたっけ?柊木 香織ひいらぎ かおりです!はじめまして!笑」


「ちょ、初めましてじゃない笑笑笑」


「部屋、隣だから筒抜けですよ〜笑

何してたんですか?笑笑」


 筒抜けだったのか。どうしよう。演技の練習にしてた事にしようか。


「部活の関係で演技の練習をしていました。」


「何部ですか?」


「帰宅部です。」


「私もその部活に入れて貰えませんか?」


「歓迎しますよ!ようこそ、帰宅部へ笑

毎年、部員は増えますが無言で入って来るのが普通でしたのでなんだか新鮮ですね笑」


「これからも宜しくお願いしますね?」


 そう言って楽しそうに学校へと柊木さんは駆けて行った。後方からアル中……リア充共が近づいて来る。視界に入れないように全力で走った。


「ふぅ〜ハァ〜ゼェゼェ……」


 なんとか追い着いた、柊木さんに。ひっさしぶりに走ったー!


「どうしたんですか?」


「置いて行かないでくれ……」


 柊木さんは後ろを振り向き小さく笑う。


「奴らから逃げて来たんですね?」


「そうだ。」


「もう、嫌な思い、したく有りませんよね?」


「ああ」


「私もです♪共闘しましょう!」


 試すような視線から一瞬で惚れてしまいそうな笑顔を見せる。イケメンとその取り巻きから心無い事を言われたり、話しのネタにして笑い者にされたり散々だった。ショックな出来事で立ち直れていない時期から続いている。潰してやる!


「もちろんだ。やってやろうぜ!」


「い、生き生きしてるね… 」

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