第6話 縁

4月10日金曜日


……眠い。10時に起きてしまい、吉川さんはとっくに仕事に行っている。テーブルの上に朝食と手紙が置いてあった。


『眠りの王子様へ


おはようございます!朝ご飯を作ったので食べてくださいね。私は仕事に行って来ます!』


 眠りの王子様かー。流石、吉川さん。言葉のチョイスが可愛い。保管しておこうかこの手紙。ご飯を食べて皿を洗ってから、ペットショップに向かった。入店すると子犬の元気な声が聞こえる。


「いらっしゃいませー!」


 女性の優しくふんわりとした声が聞こえた。


  店内の猫を見ていると、コミコミ1万や2万の子猫達も隅の方で販売されている。その子達を見ていると店員さんがそれぞれ、値段の理由を教えてくれた。ブリティッシュショートヘアーと言う猫を飼う事にした。病気も殆ど完治していて、価格が1万円だったからだ。手続きが長い。飼育方法や注意点を聴いてオススメのエサやトイレの砂など必要な物を買った。


「奥の部屋は病院にもなっているので、何か有りましたらお越し下さい!」


「その時は宜しくお願いします!今日はありがとうございました。」


 感謝を述べ外に出る。吉川さんもそうだが接客中、笑顔を浮かべ続ける姿に思わず見惚れる。たとえ、作った表情だとしても可愛いと思う。

 

 脱走対策をしてから子猫を部屋に放した。仔猫はとにかく走り廻った。時々、脚を滑らしながら。お腹が空いたのか人懐っこいのか、擦り寄って来る。ご飯は45gでふやかして1日に2回だからまだ時間的にまだ早い。猫ジャラシで遊んだり、昼寝したりした。起きたら居ませんでした……何処行った?色々探して本棚の裏にモコモコした物を見つけた。焦ったー……。突っ張り棒で軽く突っつくと出て来る。非難の声を上げながら。名前、どうしよう…神秘的な灰色をしていた。ネズミ、グレー……グレーを名前ぽくしよう!


「グレイ!」


 名前の響きも良いしこれで行こう!グレイはゆっくりと歩いていて名前を呼んでも反応しない。


 グレイのご飯と水を用意すると鳴きながら寄って来た。名前を呼んで撫でてからご飯をあげると名前を覚えるのが早いそうだ。夕飯を作りテレビを観ているとグレイは俺を使って爪を研いでから隣で一緒にテレビを見ている。


「ただいまー!可愛い猫さんですね!」


 元気良く吉川さんが帰って来た。グレイを見つけたのか、頬が緩み穏やかな表情だ。


「お帰りなさい!朝食、ありがとうございました!とても美味しかったたです!」


「お口に合ってよかったです♪名前は何て言うんですか?ロシアンブルーですか?」


 俺もこの子を見た時はロシアンブルーだと思った。


「グレイって言います。種類はブリティッシュショートヘアーです。」


「グレイさんですか〜綺麗な毛ですね!触り心地が良いです。大人しいですね♪」


「それでも中々首輪をつけられ無くて…」

「代わりに着けて貰えませんか?」

 

「良いですよー?」

「えいっ!」


「うぐっ…」


 可愛い掛け声と共に俺の首に着けやがった。苦しい……やり返してやる。ニヤリとしてしまうのを堪えた。


「着ける対象が違いますよ?」


「うふふ、違いますか?」


 吉川さんの背後に周り、首輪を着けた。


「エッ?」「ヒャッ!」


 そのまま、大きい胸を両手で鷲掴みにする。

驚いた顔から恥ずかしそうな表情を浮かべた。

やり過ぎだが、後悔はしていない。そっと手を離し、首輪を外してグレイに着けた。



「ニャ〜」


 吉川さんは可愛い声を上げた後、顔がみるみる赤くなった。

グレイは嬉しそうに首輪の鈴を鳴らして遊んでいる。


「もう!そんなに胸が好きなんですか?時々、胸ばっか見てますよねー。」


「最高でした。また揉みたいです。」


「エッチな人ですね〜」


「吉川さんの胸限定です。」


「……」


 両手で胸を隠した。

これ以上やると追放されそう。そう言えば、明日は暇だ。


「わかりました〜お休みなさい!」


「おやすみなさい!」


 部屋に戻って布団に入った。そっと目を閉じる。

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