第4話 噂話し
4月8日水曜日
新たに生活するアパートの前に到着すると部屋の中から吉川さんが出てくる。時刻は午前9時55分だ。今日はかなり余裕を持つ事が出来た。
「おはようございます!」
「おはようございます!北村さん、お待ちしてました〜!」
挨拶をすると明るく元気に応えてくれる。明るくて可愛い元気の良い女性って人気高いよねー。なんだか心が癒される気がするし。
鍵を受け取ると
「北村さん!髪型、良く似合っていますね!カッコ良いです!」
服装と髪色、髪のセットをしっかりやっていて良かったー!学校だとどんな風に見られるんだろう。
「ありがとうございます!吉川さんも凄く可愛いですよ!」
「うふふ、ありがとうございます♪それでは、私は失礼させて頂きますね?荷物の整理頑張ってください!」
「お仕事頑張ってください!今日はありがとうございました。」
「頑張ります!何か有りましたら連絡してください!行ってきます!」
「わかりました。行ってらっしゃい!」
吉川さんが居なくなった後、お母さんが荷物を届けてくれた。事前に前に貰った部屋の情報が書かれている紙を渡してある。
「荷物届けてくれてありがとう。」
「それは良いんだけど、この部屋の紙に書いてある※告知事項有りってなんだったの?部屋がリビング入れて3部屋あるし広めのロフト付き、風呂とトイレ別、各設備と床、壁新品で家賃3万円は安すぎると思う。それに交通の便も良いし……」
「何かあったって話は聞いて無いよ。前の住人が長く住んでて劣化が進んでたからリフォームしたって言ってた。」
「ここら辺ってワンルームでも家賃、6万円が相場よ?何もなければ良いけど。」
「怖い事言うなよ、せっかく良い所見つけたんだから。」
「そう。近所の挨拶廻り行って来なよ?荷物も置いたし帰るから。」
「わかった。」
挨拶廻りをしていると気付いた事がある。106号室って聞くと、あーあそこね。みたいな反応をするが誰も理由を話してくれない。すると、アパートの住人らしき人が帰って来た。
「おはようございます!106号室に住む事になった北村です。よろしくお願いします!これ、良かったらどうぞ!」
挨拶廻り用の品を手渡す。すると相手はにこやかに応じた。
「おはよう!ありがとう!しっかりしてるな!」
「俺は105号室に住んでる白川だ。こちらこそよろしく!」
「はい!」
「……部屋の経緯とか聞いてるか?」
「経緯ですか?古くなったからリフォームしたとしか。」
「そうか、何も聞いて無いならそれで良い。」
「そこまで言ったら何かあったのは分かっちゃいますよ!」
「……人が亡くなってるんだ。火事で。」
「バリバリの事故物件じゃないですか!」
「遺体は見つかっていないがそれらしき人型の炭が見つかったそうだ。人間のものかどうか解らないほど丸焦げだがな。」
「それからリフォームの後、噂が流れたんだ。少しの間、人影が映って明かりが消えたり。女性の話し声が聞こえたり、テレビの音、シャワー音がしたりな。火事が起こる前にファイヤーって叫ぶ声を聞いた。あれは自殺だな。」
……ヤバ過ぎる!
話しを聞いた後、荷物を整理して必要なものを買い足した。夕飯を食べてからロフトに布団を引き電気を消して中に入る。少ししてからガチャッと鍵が開く音がして微かに声らしき音が聞こえた。ロフトのある部屋まで足音が入って来る。
「……あれ?居ないのかなぁ?」
布団に潜っている為、声がくぐもって聞こえる。怖い……!でも泥棒の可能性もあるし姿を確認しないと……そう思うがロフトに続く階段を登る音がした。ギシギシと…やばい!布団を握る手に力が入る。恐怖で身体が動かない。
「此処かな〜?」
俺の居場所を特定したかのような声がした。ヤバイヤバイヤバイ、ヤバ過ぎる!
すると一気に布団を捲り上げられた。
「ギィャやああああ〜!殺される!」
思いっきり叫んでしまった。
「殺しませんよ!北村さん、落ち着いてください!凄い汗ですよ?」
吉川さんの声が聞こえる。俺の息は荒く、冷や汗が凄い。
「ハアハアハア……すいません、近所の人から怖い話しを聞いてしまって……」
「この部屋の火事の話しですか?」
「そうです。」
「大丈夫ですよ!誰も亡くなって無いですから。人型の丸焦げた物はラブドールだったんです!火事にした罰として退去してもらいました。」
「そうだったんですか〜」
なんだラブドールか……
「それでお越し頂いた用件をお聞きしたいのですが。」
「それは、告知事項を伝え忘れていましたので呼びに来ました!家賃が安く家電等も付いている理由は私が火事の後から住んでいて、同居する形になるのでこのお値段です!シェアハウスですねー!これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ宜しくお願いします!」
「私の部屋は看板を付けておきました。そこ以外の部屋は好きに使ってください!」
「わかりました!」
学生のうちに美人な女性と同居することになるとは思わなかった。
この日から俺たちの生活はスタートする。
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