第4話夜の外は異常

乃生兎公園にいたのは数分間だけで、すぐに家に帰る俺。


玄関扉を開けて、家に入ると母さんが抱き締めてきた。

「おかえり、直人。遅いじゃない、心配させないでね。パパから連絡がきたの。明日帰ってくるらしいの」

「母さん、連絡がくるわけないよ。父さんからなんて。母さん、どうしたの?幻聴を聞いたの?おかしいよっ、ねぇ母さんっ」

「おかしくないわよ、直人。幻聴なんて聞いてないわ、直人どうしたの。直人がおかしいよ」

さきほどの笑顔は消え、大声をあげる母さん。

いつもの母さんじゃない。父さんから連絡なんてこない。絶対に。なぜなら、父さんは病気で、夏休み前に亡くなっている。

「父さんはもういないんだよ。なんかあったの、母さん?」

「何もないわよ。パパはいるのっ。あっ、帰ってきた。パパ、おかえり」

「怖いこと、言わないで。母さん寝よっ、ねっ」

俺は、震えながら母さんを寝室に連れていく。連れていく間も、「いるじゃない、パパ。直人みてよ」と叫んでいる。

身体中が恐怖で、異常な震えでまともに動けない。

母さんをベッドに寝かせ、床に座り込み震えながら友達に連絡をする。

すぐに友達に繋がり、震えながら聞く。

「あの、さっあ、紗奈ぁぁ、何か変なこと起きてない、か?」

『どうしたの、なーくん。変なことなんて。あっ、妹が帰ってきた──』

「行くなっ、紗奈ぁぁ」

紗奈からの通話が切れた。紗奈に妹なんていない。自殺してこの世にいないのだから。

「何だよぉぉぉぉ、これぇぇー。皆おかしいぃぃぃよぉぉぉ。誰かいないか誰かいないか」

ひっしに助けを呼べる人を探す。

誰か誰か誰か、いないか?

そうしていると、スマホが震え画面をみると一緒に乃生兎公園に行った女性から連絡がきた。

「もしもしぃっ、助けてくれませんかっ。お願いしますぅ、うぅぅ」

『なおちゃんもそうなの?筒金駅に行くから、なおちゃんもきてっ。そうじゃないと、助からないかもっ』


俺は、震える脚で、リビングの方から外に出る。

早く早く早くっ。彼女がいる筒金駅に行かないと。

家に帰るまで、誰にも出くわさなかったのに、異常な人数が所々を歩いている。まるでこの世のものではない何かに見える。


俺は、なんとか、筒金駅に到着して、彼女を探す。

売店の前で彼女の後ろ姿を見つけ、駆け寄ろうと走り出すと、後ろから腕を掴まれ、彼女の声がした。

「なおちゃん。アレは違う、うちはここだよ」

俺は、振り返ると彼女がいた。

えっ、彼女が二人いる?

もう一度、売店を見ると誰もいなかった。

「ありがとう、ございます。助けてくれなかったら、今頃......」

「無事で良かった。今日はここで寝よう、なおちゃん」

「はっはい」


目を覚ますと、日常に戻っていた。駅は人で溢れかえっていた。

俺は、おそるおそる家に帰ると、母さんはいつも通りで昨日のことは覚えていなかった。




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