第13話  13、住込み

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 「先生、いいお天気ですね。」

千本が久々に裏庭の畑に出て獅子唐をハサミで収穫していた時、向いの西野さんが声をかけてきた。

いつものように門の横の花壇に如雨露(じょうろ)で水やりしている。

昨夜は雨だったのに。

「ほんとに今日はいいお天気ですね。昨夜は雨だったようですね。」

「先生は最近あまり畑に出て来られないので心配してしていたのですよ。お元気でしたか。」

「はい、おかげさまで。最近、老後の健康のために仕事を始めました。それで忙しかったんです。」

「えー先生、そのお年で仕事を始められたのですか。どんなお仕事なんですか。」

「そうですねー、説明するのが少し難しいのですが、腕貸しますではなく頭貸しますって言うようなものです。」

「何屋さんなのですか。」

「貸出屋です。」

「レンタル屋さんですか。始めるのにお金がかかったでしょう。」

「宝くじが当ったんですよ。この歳になってから宝くじが当たるなんてタイミングが悪いですよね。もっと若い時に当っていればよかったのに。」

「人生ってそんなものですよ。先生一人でご商売なさっているのですか。」

「いいええ。若者を住込みで雇いました。」

「住込みですか。大丈夫ですか。」

「なかなかしっかりした若者です。西野さんもこれから時々目にすることがあると思いますがよろしく。」

「近くに若い人が増えるってことはいいですねえ。」

「そうですね。今は細々ですが商売が軌道に乗れば人の出入りが増えるかもしれません。」

「そうなるといいですねえ。どこに住まわせているのですか。」

「今は奥の離れで寝起きしてますが工場ができたらそちらに住まわせるつもりです。」

「そうなるといいですねえ。」

「そうですね。」

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