第10話  10、ハイエース

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 翌日は数件の問い合わせがあり、翌々日からはより多くの問い合わせや注文が入り始めた。

個人的な注文から、店の宣伝とか、派遣社員としての注文、農作業手伝いなどがあった。

多くは仕事内容の対価の設定と期間の不適切さで拒否した。

農作業のうち、荒れ地開墾の申し込みには普通型一体を貸し出した。

作業金額は百万円と設定してきたので1%の1万円をレンタル料金とした。

格安であるが宣伝になればいい。

 作業現場へのロボット輸送には一つの決断を必要とした。

輸送には千本のハイエースを使用することとし、ハイエースに重力制御装置を付けて改造することにした。

「ムンクさん、空を飛べるようにハイエースを改造できますか。」

「何の問題もありません。容易です。明日までに改造しておきます。」

その改造はすぐさま人目を引くであろうが、どのみちロボットで人目を引くであろうし、遅かれ早かれわかることであった。

 ロボットとムンクさんと千本は車庫から車に乗った。

ロボットの形態は男としてあるので男3人がハイエースに乗り込んで出発したことになる。

場所は長野県であった。

千本は河北潟の干拓地の農道まで道路を走行し、人目のない林に入ってから千mまで上昇し、ムンクさんが作ったナビの示す方向にハイエースを向けた。

ナビのディスプレイは立体画像で表示され、広域を続けて押すと日本の金沢の地表が中心となった地球が映し出された。

現在の日本はGPS用の人工衛星を持っていなかった。

日本はナビのない数十年前の生活に戻っていた。

 自動車の操縦は容易であった。

ハンドルを右に切れば高度を変えること無く右に向かい、戻せば直進した。

驚くことにブレーキを踏むと車は止まった。

空中に停止している。

改造に伴って取り付けられたものは小さなノブでシガーライターの上に取り付けられていた。

ノブの横には高度の刻みが描かれている。

0mから3000mまで刻まれているがその上は空白になっていた。

車はニュートラルのアイドリング状態であった。

 「ムンクさん、改造ありがとう。いい車です。これはどこまで上昇できるのですか。」

「地球重力の範囲内でどこまでも行けますが3千m以上はお勧めしません。空気も少ないし、寒いし、この車は与圧されておりませんから」

「ここに0と描いてあるのは地表ですかそれとも海面ですか。」

「地表高度です。地上に降りるのはブレーキを踏んで、高度を0に指定すれば降りられます。」

「スピードはどれくらい出せますか。」

「地球の加速度で達せる速度です。毎秒約10mの加速ですから、36秒間加速すれば音速になります。しかし、この車は構造が弱いですから、時速150㎞、秒速41m以上の速度はお勧めできません。ですから4秒以上のフルアクセルはお避けください。車の速度は地上と同様にスピードメーターで表示されます。速度はアクセルで制御できます。」

 「燃料はどうなっておりますか。」

「重力制御装置には燃料は必要ありません。速度はアクセルと連動していると言いましたが、空中ではアクセルを踏んでもエンジン回転数が増加することはありません。タイヤも回転しません。」

千本は気に入った。

車をもう少し丈夫にすればどこでも行けるだろう。

 「この車には防御機能は付いているのですか。」

「簡単な装置が一つだけ付いております。空中走行中は車全体に薄い膜が覆われます。もちろん目には見えません。幕は空気以上の分子量を持つものは通過させませんが、衝撃波には対処できません。ですからミサイルのようなもので攻撃されたら車は壊れます。」

「怖いですね。もっと強力な防御装置は付けれないのですか。」

「この車では無理だと思います。工場に帰ったらこの車と同じ形の丈夫な車を作ります。絶対に安全で水爆にも無傷で走行飛行できます。」

「ありがとう、待ち遠しくてワクワクします。与圧機能も付けて下さいね。」

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