シルフィア世界 2

「おい!」


 気づいた存在が、仲間に知らせる。視界を遮る、影。空を貫くほどの高さがある塔を、複数擁する。自分たちの古里で言う、石作りの城が建っていた。


 塔の土台に当たる建物が藤紫色に染まる。さすが、世界を創った方々の子孫が有する人智を超える力。笑けてしまうほど、力の量が多い。世界を形作る壁に、騙された。


 脳裏をよぎる。噂を広めて、自分たちを呼び。一網打尽にする。罠を仕掛けたとも考えられた。


「見つけた!」


 仕切る存在の一言。ピリッとした空気。感心していた仲間に伝わる。合図だ。主の座を奪い取る。仕掛けられた罠に踏み込む、覚悟をした。


 互いに、見合う。問い掛けるように。誰もが頷いた。一対多数なら、自分たちが有利だ。


 藍色の空を駆ける。またたく星を避けて。存在たちは閉口する。人智を超える力の扱いにくさに。


 飛ぶのは、基本的な力の使い方の一つ。もし、落ちたら、すべての存在から笑いものになる。永遠に。


「あっ! 流れ星!」


 間近で聞こえた声。不意を突かれた。幼さを残しており、侮った。隙ができて、存在たちの芯を貫く。宙に縫い止めた。


 侵入した後ろめたさがある。言い訳は効かない。


 正式な訪問の手続きを知っている。前もって、主に訪れたい旨を告げて、お伺いを立てる。知らないと答えれば、領域の価値が下がる。自分たちが住まう。


 裏口もあるが、主の招きが必要だ。苦労して、向きを変える。誰もいない。凍りついた。


 玉ころは、歓喜する。藤紫色の光を放つ者。自分に気づいた。引っ付いている存在の思考も読める。向かう気があるくらいは。連れていってもらうと決めた。


 我に返らせる、力の働き。侵入した存在たちは感知した。狭間も世界も貫く。


 知識は持っている。世界と狭間を釣り合わせる種類の力がある。片方に寄れば、余分な力を存在に分けられる。不定期で、どの存在に贈られるか。運命のつむぎ手の気まぐれ次第だ、と。


 誰もがもらす。暗い笑みを。自分たちがやろうとしている事こそが、正義。力の量の差を、分けられる力の塊で補える。


 教わった通りだった。一直線に、突き進んでくる。目配せし合い、仕切る存在が真下に移動。視界に入る、力の塊。


 たとえれば、水の塊。自分の力を底上げしてくれるか、喉を潤してくれるかの違いだ。


 待ち構える存在の真上で、失われる。他の次元へ、吸い込まれた。


「いっただきまーす!」


 力の塊。前にした玉ころは、パッと、離れる。一気に、力を吸い込む。圧縮して、溜める。傍目には、横取り。


 当の玉ころに、悪気はない。早い者勝ちだ。人間で言う、ホクホク顔で戻った。

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