神話の始まり 5
緩やかな波を打った、鮮やかな黄金色の髪が掛かった。卵形の顔が覗く。艶のある茶褐色の肌。長い足を踏ん張り、長い手が柱にできた穴を押し広げる。適度についた胸の筋肉が動く。締まった腰ごと前に出る。
「光を司るティライトさま。お召し物です」
足元から聞こえてきた声。眷属と呼ばれる、自分の支配下に置いた存在の。
疑問が生じる。自分の名前は、ティライトなのか。記憶がよみがえる。目覚めるたびに、変えてきた。新しい名を思いつかず。皆を混乱させるだけと思い直す。受け入れて、ドングリまなこを開く。
立ち上がって、歩み寄る。長方形の盆を持った、人間の姿に形作った存在が。
ティライトは手を伸ばす。上に載る畳まれた服に。広げて、逆三角形に開いた襟口から、頭を通す。長い袖に手を通せば。裾は、足首に届く。
「ありがとう」
「もったいなき、お言葉」
ティライトの一言。一瞬、存在と目が合う。喜びに満ちた顔をした。深々と、頭を下げる。微笑ましいと見守った。
「ティライトさま、こちらを」
服は素材のまま。色味も模様も乏しい。あまりにも、寂しい。考えた別の存在が、アクセサリーを盆に載せて差し出す。
「いらない。肩が凝る」
「は!?」
意外なティライトの言葉。思わず、眷属の全員が顔を上げる。服の上からでも判る。肩から腕にかけての筋肉。厚みのある胸板。支えられる足。それでも、肩が凝るのかと知った。
「せめて、マントだけでも」
「判った」
眷属の思いをくむ。ティライトはマントを受け取る。明るい色味。広げて、羽織った。楕円形の金の留め具で、襟元を留める。
「行ってくる。留守番は頼んだ」
眷属に言い置く。ティライトは狭間に出た。
あらゆる世界を挟んで、ダークコアとティライトは向き合う。互いに、見合ったまま、動かない。思いは、一致する。揃って、笑みを浮かべる。すべての存在に、不吉と思わせた。
「遊ぼうか?」
「ああ」
声を揃えて、互いに、相手に尋ねる。頷き合った。
「まずは、立ち会ってくれる物を決めるか?」
「決まっているじゃないか。彼しかいない」
ダークコアが争いを防ぐ方法を挙げた。ティライトはあらゆる世界、時空を越えても適任は。たった、一名しかいないと答える。名前をささやき合う。承諾した。
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