現代・日本10

「リアーナさんは、友達の所?」


「取り戻したい」


 リアーナの進路は決まったのか、颯は訊く。咲也の答えは、晃の家に来ていると意味していた。通う気があるなら、自分たちを通した方が良い。直接、真意を聞きに行こうと決めた。


「後は、入院しているフィーラさんの容体次第だな」


「情報が入ってこないのがなあ」


 安否確認になってきたな。思いながら、颯はつぶやく。気がかりと、亨介も言う。透も頼子も咲也も同意した。悪化したとも、回復したとも聞いていない。小康状態を保っていると思われた。


「話が変わるけど、頼子さんの気づかいに助けられた。ありがとう」


「?」


「自覚なしか」


 しんみりした空気を変えるため、颯は話題を変えた。不思議そうに、頼子が見返す。亨介や透と共に気づく。


「ゴメン。訂正する。セレイラさんに助けられた」


「どういたしまして。私が言うのは変かな」


「いいや。頼子さんがセレイラを受け継いだんだから」


 転生前の記憶を失っていると告げられたのを、颯は思い出す。代わりに、教えた。受けて、頼子が言う。仲間と認めていると、颯は伝えた。町を覆う壁を作って、目眩まし。転生した皆を守った、と、説明する。


 さっき、術が解けて、亨介が近所に住んでいると、判ったと颯は話す。咲也が視線で問う。透は引っ越してきたと答えた。


「ちなみに、源さんの家は?」


「公園に面した……」


 颯は確かめる。家の位置を。頼子は住所を伝える。颯も亨介も透も知った。意外に、近い所にあった、と。


「各務 泉(かがみ いずみ)さんとは、高校が違うんだっけ?」


「うん。家も少し遠い」


 同じ町に転生してきた人を思い返して、颯は訊く。訪ねた経験がある頼子が答える。


「各務……。そうだ! 鏡。どこに入れたかな? ……あっ! しまった!! 門の柱の上に置いてきた。……戻ったら遅刻する」


 かがみつながりで、亨介は思い出す。上着や鞄のポケットを探す。家を出るまでの流れを、脳裏に思い浮かべた。玄関を出た時は、鏡を持っていた。仮置きしたとしたら、門扉を開く際だ。


「鏡!? まずくないか? それ」


「?」


「クレストが嫉妬する」


「どうかな。贈り物としては、鏡は向いていないと聞いた」


「う~ん」


 聞いていた透が指摘する。亨介が首をかしげた。恋人同士に見えていた透は、クレストが気を悪くすると告げる。嫉妬しないと、亨介は読む。悩みつつ、透は颯の方を向く。契約を交わして、性格を知る。フレイムと共に、判らないと正直に答えた。


 頼子も咲也も脳裏に浮かべる。クレストの姿を。言葉を交わしていないが。人間とは、かけ離れた独特な雰囲気だったのは覚えている。


「結構、高かったんだよな」


「渡したいなら、好きにすれば良い。ケンカになったら、仲裁に入ってやる」


 考えてもいなかったと、亨介の独り言。誰もが嘘だと思ったが、言わなかった。呆れて、颯は言う。喜ばせることだから、止められない。亨介は感謝した。


「で、取りに帰るのか?」


「いいや」


 どうするのか、颯は訊く。考えられる、一つの案を出す。亨介はかぶりを振った。

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