シルフィア世界・11
契約内容を、魂核から伝えられた。フェウィンは尋ねる。衝撃を受けた魂核は、凍りつく。藤紫色の光も陰る。魂も宿せなければ、砕ける。死ね、と、言われたも同然。質問した本人は、信用に値するか? 調べているだけ。
「力を返せ、と、言われなければ。……新たな候補を探す時間が欲しい」
「ふ~ん」
よろよろよろ。下がりながら、魂核は答える。信用できると、フェウィンは判断する。永遠の命など、どうでもよいが。力を溜めておける器があるのは、魅力的だった。体への負担が軽くなり、数日は寝込む状態を避けられる。魂核を助けて、恩を売っておくのもありか。
「俺の名前は、フェウィン。あなたと契約を結ぶ」
「では、フェウィン。我とそなたをつなぐ、魂を……。肉体があるうちは、思いの一部でも良いぞ」
見おろして、フェウィンは伝える。一気に、魂核は床から上がる。前のめりで、魂核は重要なことを言う。キセラと仲間のやり取りを思い出す。別の方法があると、告げた。
「では、半身を」
「えっ!?」
フェウィンは決めた。差し出すものを。考えれば、判ることだった。運命の歯車が逆に回転した影響を、まともに受けたことを。
運命の歯車がつむぐ、元々の道を行くはずだった人格。逆に回転したことで、新たにつむがれる道を行く人格。理解できないでいる前者の胸を、後者が突く。精神体が肉体から抜けて、魂核に入る。
「契約完了。……もう一つ、良いことを教える。そなたの母が呼んでいるぞ。会いに来て欲しい、と」
「はあ?」
「現在、世界を支えている、シルフィアさまが」
魂核が告げる。契約が成立した、と。微弱な力に載せて、呼び掛ける声を聞き取って伝えた。フェウィンのどちらの人格も飲み込めないでいた。一つの考えに至る。逆に回転して、運命が変わった。生と死が逆になった。術の失敗により、アレキサンドラが……。思念体なので、自然に還る。シルフィアが生きている。決定付けたのは、自分。身震いした。
魂核が胸元にくる。細い藤紫色の鎖が首に回り、装飾品になった。おかげで、フェウィンにも、働きかけてくる力を感知できた。硝子戸の方を向く。露台に、階段が作られていた。空に向かって伸びる。固唾を飲んで見守っていたラフィッツとルシアを伴い、向かった。
時と空間を越えた彼方。世界の狭間。運命の歯車と向き合える、浮島。人智を超える力で包まれた、お椀をかぶせた形の壁の中。室内に居る、二名の存在が身じろぎする。
「時空間がねじれたか」
「改めて、招待しよう」
光を司るティライトと、闇を司るダークコアが言う。フェウィンの自室。机の上。招待状が消えた。
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