シルフィア世界・6
白いもやがかかった空間。キセラの周りだけ、七色に染まる。広げた羽の色に。鼻先から離れた玉ころは、満足して見返す。対等の立場と受け止めていて、物扱いしないと判るところが気に入った。契約の内容を伝えた時の反応を見極めようとする(人間風に言えば)。
「我は、もろい。あなたの魂と有する人智を超える力の助けがなければ、砕けてしまうほどに。あなたが道義に外れた行動を取らぬ限り。あなたに永遠の命と、桁外れの力を授けよう。ただ、契約を結んだ後。あなたは、転生の輪から外れる。子を望めぬ。……子孫を代償とする。それでも良いなら、我に名乗れ」
聞いたキセラは、どうしたものかと思った。すでに、転生の輪から外れている。元々、子どもを望めない体だった。ランセムと揃って。世界を創れるほどの力を有したシルフィアを養子に迎えて、主の座に就いてもらった。世界を創る際と、次代が決まるまで維持したせいで。有する人智を超える力の量が大きく減る。羽を形作るにも、一年くらい溜める必要があるが。不便ではないので、欲しいとは思わない。
キセラは呆れてもいた。玉ころは、桁外れの量の人智を超える力を溜めておける器に過ぎないと見て取って。もう一つ、あらゆる世界の頂点に立つ世界に入り、永遠の命を保証されている。玉ころと契約を結べば。強化はされる。
「妾の名前は、キセラ。魂をやっても良いが。妾からも条件を出しても良いか?」
「条件……」
「なに、難しいことではない。……妾たちは、子どもが授からない体じゃった。じゃから、そなたに、妾たちの子どもになって欲しい。姿は、今から引き合わせるから、妾とランセムに似た姿を形作ってもらいたい。良いか?」
「うん!」
考えた末に、キセラは切り出す。自分にとって、魅力がある条件になるように。聞いた玉ころは渋る。内容を知って、明るくなった。
「我は、魂核。肉体の代わりに、魂を宿す器。人智を超える力を持ってして、魂をつなぎ止める。そなたの魂と力を寄越せ。それをもって、契約とす」
「魂?」
改まって、玉ころは伝える。分けられるだけの量の力を差し出したキセラは訊く。刃物で切ったら、意味がない。
「心……そなたの思いを、一つ」
玉ころに教えられた、キセラは差し出す。我が子に向ける、慈愛を。
「足りない」
玉ころは、不満をもらす。やはりな、と、キセラは思う。
「しばらく、待て。直に、あらゆる世界と狭間を均衡を保つための、余力が配られる」
キセラの返事を聞いた。立ち会いの玉ころは、しまったと思った。横取りしてしまった。言い出せなかった。
キセラは手の中に呼ぶ。自分の玉ころ……魂核と、立ち会った玉ころを。働きかける力に乗り、世界内に戻った。
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