第11話 ソロでオーガを狩りまくろう!!



 全サーバー1位をとるなんて、正直夢のまた夢だ。ウォーリアーズ・オンラインの総プレイヤー数は、VRMMO界隈ではかなり多い部類に入る。かなり名の知れたゲームなわけだ。


 人数が多ければ、強いプレイヤーも同じように多くなる。悪どい剣士・ブライはさほど強くはなかったが、これ以降はそうはいかない。


 最強と名高いプレイヤーは何十名とあげられる。そのうち、全員が強いが飛び抜けて他を突き放しているような能力持ちはいない。誰が勝ってもおかしくないゲームだけある。


 サーバー内での順位というのは、<強者乱戦ウォーリアーズバトルロイヤル>の試合結果のみで決定される。<強者乱戦ウォーリアーズバトルロイヤル>というのは、自分以外が全員敵の、最後のひとりになるまで戦い続ける大会ことをさす。もはや「なんでもあり」の戦いで、各々が多種多様な技でぶつかり合う姿は、観客の目を釘付けにする。


 実は、<強者乱戦ウォーリアーズバトルロイヤル>への参加者は全サーバーでも少数派である。モンスターを倒すもよし、自由気ままにものづくりをするもよし、プレイヤー同士で戦うもよしのこのゲームでは、PvPだけにこだわる選手というのは、意外と少ない。


 少ない、といっても数万人がサーバー内の順位を測ろうと、PvPが可能な<強者乱戦ウォーリアーズバトルロイヤル>への参加者は全サーバーでも少数派に参加している。相当な人数だ。それを10チームほどに分けて一回戦をおこない、価値残った10人で別日に戦いを強いられるものだ。次の大会は3週間後。そして次が夏休み終了前のラスト。全サーバー1位という目標を果たすには、次回の大会で良い結果を残すことが大事となるだろう。


「よく考えたらキツすぎだろ……」


 順位、つまり全サーバー内での順位が二桁台に入った時点で、五万円の<ダイヤ>が手に入ることになっている。このゲーム内でのお金は<ゴールド>もあるが、<ゴールド>は<ダイヤ>よりも下の格付けで、ゲーム内でしか使用できず、換金することはできないのだ。金目当て・小銭稼ぎを目的として勝ち上がったプレイヤーは、そこで大会を辞退してしまうことがある。


 自分のメガネ代を賄うには、全サーバー1位による報酬、つまり賞金50万円を獲得しなければ稼げない。やはり、頑張るしかない。もうこれ以外に道はない。高校生でバイト禁止の俺って、だいぶ苦しい目に合わされていると思うよ。


「ああ、もうなんでメガネが壊れたんだよ、ボケが!!」


 現在、この俺、神目金矢は絶賛VRMMO中である。不意に心の底かから育ってきてしまった、人前ではなかなか出せない感情的な言動も、ここではやり放題だ。心理的な抑圧が外れたみたいに、ここでは色々と荒くなってしまうみたいだ。


 ガラ空きの<はじまりの草原>にて、俺は今、二十数体のオーガと対峙している。間合いにして、10メートル。かなり近い。赤みががった肌をした、筋肉質で荒っぽい種族のオーガ。動きは人間そっくりだ。むしゃくしゃ晴らしたい俺は、握っていた剣を、勢いのままに振ろうとする。だが、その前に下準備だ。


「<未来予測フューチャーサイト>!! <加速アクセラレーション>!!」


 敵の行動を読む。調子に乗って呼びすぎたせいで、<加速アクセラレーション>の力によって安心して動ける時間はそう長くはない。ただ、倒すことに気をつけるだけだ。


 敵の行動を遅くし、こちらがより速く動けるこの瞬間が、俺の戦場だ。強烈な魔法はない。時間を遅め、行動を予測した後は、剣一本での勝負だ。


 列になって迫ってくるオーガを、駆け抜けながら斬っていく。オーガは俺と比較するとさほど弱くないので、下手をするとこちらがやられかねない。


 今はただ、<未来予測フューチャーサイト>によって見える未来ゴールに向かって、真っ直ぐ走り抜けるだけだ。


 全てのオークに剣を入れたのち、俺は<加速アクセラレーション>を解除する。


 スローから解き放たれ、急激に時間が速まったオーガたちは、自分の身に何が起こったかを考えるだけで怖いだろう。この力は、完全な時間停止ではない。急激に、自分の動ける速さや認知が遅くなるだけだ。とはいえ、減速した時の中で、自分が傷つけられることは完治できなくもない。解除された刹那、敵は絶望に包まれる。


「「「ウガアアアアアア!!」」」


 斬ったことで、肉体が避け、生々しい血が垂れる。オーガは倒れ、光となって消失した。


「これで、10周目か」


 本日、すでに200匹以上は捌いている。魔石もたんまりだ。これで心子も少しは気が楽になるかもしれない。


 今日はいないが、次会うときには喜ばれるかもな。もちろん、これは協力関係にある仲間を、ガラにも無く思いやっているだけだ。


 何いってるんだろうな、俺。


 とはいえ、プレイヤーをどうやって倒すか、というのを疑似練習できた。これはあくまで俺のための練習だ。魔石はその副産物にすぎない。そうだろう?

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