京都旅行編

第15話 そうだ京都に行こう!?の件について① 

 ドタバタとした一学期(主に妃菜ひなのせい)が過ぎ、俺たちの高校はは待ちに待った夏休みに入った。


 夏休みと言えば何を思い浮かべるか。海、プール、山、お盆などなど人によって様々だと思う。俺の今までの過ごし方は、さっさと課題を終わらせて一人のんびりと時間を過ごしていた。


 友達と遊びに行かないのか? とか思ったかもしれないが、俺には友達が・・・・・・少しはいるにはいるが、辰弥たつやにしろ|エミリー(笑里えみり)にしろ(幸運にも?)部活で忙しかったので俺と遊ぶなんてことはなかった。


 別に俺は寂しかったわけではない。いや、これが本当に。強がりとかじゃなくて。

 多少暇だなぁ、くらいは思ったことはあるがそれをなんとかしたいとか、誰かと遊びたいなと思ったことはなかった。


 この気持ちはあまり理解できないかもしれない。俺としても理解してほしいとは思っていない。ただ同情するのはやめてくれ。


 俺は友達がいないんじゃなくて、友達を作らないんだ。どうしてかは知ってるだろ?

 一応説明しておくと(誰に?)俺の両親は二人とも超のつくほどの有名人だ。


 俺の父親の嘉神かかみりくはフランス料理の鬼才と呼ばれる料理人だ。フランス料理の技法や食材と、和・中の技法、食材を組み合わせて革新的な料理を作ることで知られている。


 さらに顔もかっこいいというオプション付きだ。まったく、こんな人間がこの世にいるのかと思うと驚くと言うよりもあきれてくる。とにかく、俺の父親はそんなやつだ。


 一方の母親はと言うと、名前を嘉神優子ゆうこと言い、加賀かがゆうの名で世界的に有名な女優をやっている。


 しかもこれまた超のつくほどの美人と来た。『類は友を呼ぶ』ということわざがしっかりと合っているような夫婦だと俺は思っている。


 それでその二人の息子が俺だ。(と言っても少々ややこしい息子だが)自分の周りに有名人の息子がいたら普通の人ならどうする?


 そっとしておくという人もいるだろうが俺の周りはもっと活発的な子供や大人が多かったようだ。初めのうちは友達が多いな程度のかわいいことを思っていた。だが、徐々に周りの人間の下心があらわになってきた。


 そうしたら俺は気づくと他人を避けるようになっていた。逃げたと言われてもかまわない。何を言われようと俺は自分の行動が間違っていたとは思わない。


 あのまま人間の汚い部分に触れ続けるよりかは、俺は気の置けない仲間を少人数(過ぎるかもしれないが)作って、うちに固まる方がよかった。


 ここまでいろんなことを話したが、とにかく俺が言いたいのは俺は他の人とわいわい騒いだり、する必要はないと思っているのだ。


 だからこの目の前の状況はどう考えてもおかしい。


「ちょっと、ヒー! 私の唐揚げ盗ったでしょ!」

「えー、そんなことないですよ」

「アユミン、電車の中でうるさくしちゃだめだよ」

「でもエミリーさん」

「はは、あーちゃんは相変わらずだね」

「もータツさんまで」

「ふふふ」

「あっ、リンさんも! もう知らない!」

「あー、ごめんね。でも面白くて」

りんちゃん、アユミンには謝らなくていいよ」

「それどういうことですか!?」


 いや、全員うっせぇよ。小学生の遠足か? それとも中学生の修学旅行か? 何にせよ少しは黙れ。もう少し年相応の行動をしてくれ。


 俺たちは今、新幹線の中で駅弁を食べている。どこに向かっているのかと言うと京都である。俺、妃菜、アユ、辰弥、エミリー、鈴花すずかの六人で夏休み旅行である。


 男女比が絶対におかしいが、そこはまぁ仕方がないとして、やっぱり誰か保護者を連れてくるべきだった。こんな無法地帯を取り締まる役を誰がするんだ?


「あれ? 先輩お弁当が進んでないですよ」

 妃菜が俺の様子に気づいたように言ってきた。まずい、狙われた。


「しょうがないですね。あーんがいいですか? それとも口移しがいいですか?」

「どっちもやめろ」

「口移しですね!」

「そう言うと思った・・・・・・」


 そうすると妃菜は本当に自分の弁当の卵焼きを口に入れて俺に近づいてきた。(俺は窓側、右横に妃菜、その横にアユ、俺の前に辰弥、その横に鈴花、エミリーの順)


「ちょとお兄ちゃん! 何してるの!」

「そ、そ、そうだよ亮祐りょうすけ君! それはどうかと思う!」


 なぜか俺に集中砲火が浴びせられる。おいおい、アユも鈴花も俺の返事を聞いていたか? 俺は「やめろ」と言ったが、こいつが勝手に暴走したんだぞ。俺がとやかく言われる筋合いはないと思うんだが。


 どうしてこんなことになったんだ!?

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