俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第12話 新たな来訪者? みたいな件について①
第12話 新たな来訪者? みたいな件について①
「んー」
「おはようございます、先輩」
「
「いいじゃないですか。私と
「
妃菜が来てから二ヶ月が経った。一ヶ月前の一件から妃菜はますます俺になついてしまった。何てことをしてしまったんだ。そろそろあいつのことをどうにかしないと俺の
「私は朝の準備してきますね」
「早く出ろ」
妃菜がぴょこっ、という効果音が聞こえそうなジャンプでベッドから出た。そのせいで俺のかけていた布団がはだけてしまったのだが、そのおかげで目が覚めたのは表裏一体の結果だ。
俺も体を起こして、ベッドの上で伸びをした。妃菜との生活がほぼ二ヶ月過ぎたが、それに慣れてしまったからこそ体の疲れを感じる。今までなら疲れを感じる間もないほどのスピードですべてが過ぎっていっていた。
ベッドから降りて部屋を出る。目が覚めたと言ってもそれは一瞬のことで再びまぶたがくっつきたがる。俺と妃菜とは真逆だな。
「
「いつも通り洗面所だ」
「ふーん。・・・・・・別に気になったわけじゃないから!」
「朝から大声を出すな」
頭に響いてくる。飲み過ぎたときこんな感じなのか? まぁ、二十歳になるまでまだまだ時間もあるし、んなこと考えてもしょうがないだろ。
にしても、
俺は階段を降りて洗面所に向かう。顔を洗って髪も直す。そろそろ切った方がいいのか? よくわからないが、とりあえず妃菜に頼むのはやめておこう。
「お兄ちゃん! 何で化粧道具があるの!?」
「お前のだろ」
今朝の絡み方はどこか変だ。いつもなら抱きつくなり、キスしてくれと懇願してくるのに、どうして化粧道具があるのかって? それは妃菜が持ってきたんだろ。まぁ、俺の買ってきたハンドクリームを気に入ってくれたから、ちょこちょこ買ってきているが。
今朝の絡みに付き合うのもおっくうになったので(今朝ではなくともおっくうになっている)、俺はさっさと洗面所を出てリビングに向かった。
あれ? さっきの妃菜の声少し低い気がしないか? それになんとなく話し方というか、声の感じというか、なんとなくアユに似ている気がする。
なわけないか。アユは海外だもんな。ったく、妃菜が「お兄ちゃん」とか言い出すから変な勘違いした。後輩、妻と来て次はイモウトなのか? 妻よりも格が下がってないか?
そんなどうでもいいことを考えながら俺はリビングに入った。
「先輩、ジャムはストロベリーとブルーベリーどちらにしますか?」
「うーん、ブルーベリーかな」
「妃菜ーベリーですか!」
「やっぱりどっちもいらない」
「えー! せめて妃菜ーベリーだけでも!」
何だよ妃菜ーベリーって。どう考えても食ったら死ぬだろ。妃菜ーベリーを見たいやつはこいつに頼め、そのとき俺は三キロ先にいると思う。
って、どうして妃菜がここにいるんだ? さっきまで洗面所にいて、今はリビングにいる? 俺が出るときには洗面所にいたはずなのに、俺よりも早くリビングにいるだと。
洗面所からここまでは一本道だ。俺は途中に抜かされてはいない。急にミステリーかホラーっぽくなったな。何があったんだ。
「ちょっと、お兄ちゃん! これはどういうこと!」
俺の後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。
さっき聞いた声。さっき聞いた「お兄ちゃん」というフレーズ。
いや、俺はこの声を知っている。最近は聞いていなかったが、それでも忘れてることはない慣れ親しんだ声。この声の笑いを聞きたがってきた声。
「先輩! 不法侵入ですよ!」
「それはあんたよ! どうして人の家に勝手に上がってるの!」
「私は先輩の妻です」
「つ・・・・・・お、お兄ちゃん」
「それより早く通報しましょう」
「お前ら・・・・・・ちょっと黙れ・・・・・・」
聞きたいことは山々だったが、ここでそのすべてを聞いてしまったら無法地帯になってしまう。だから、一番気になることだけにした。
「アユ、どうしてここにいるんだ?」
「お、お兄ちゃんには関係ないでしょ!」
「大ありなんだが」
「・・・・・・うっさい!」
面倒くせぇ。久しぶりにこの態度を見たが、改めてこの態度をとられると面倒くさいな。
俺の前には顔を俺から背けて、腕組みをしているアユがいる。もちろん魚のアユではなく、俺のイモウト、
俺よりも頭一つ分背が小さく、ショートヘアが異常に似合っている。海外でスポーツをしているわりに白い肌をしているが、それはバレーで日光に当たりづらいためである。
妃菜をかわいい、と形容するならば、アユはどちらかと言うときれいな顔だ。たまに中性的な顔と言われているところを見るが、女子にしても男子にしても美形だ。
さて、大変なことになりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます