俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第5話 鈴花と妃菜が面倒なことになっている件について②
第5話 鈴花と妃菜が面倒なことになっている件について②
「あー、しんどー」
俺は帰りのショートホームルームが終わると、ガラになく声を出して机に伏した。
あの後、
中学の水泳の授業以上に疲れた。精神の疲れが、身体にまでまわったかのように体がだるい・・・・・・帰る気力も残っているかもしれない・・・・・・
ちなみに言っておくと、弁当に変なものは入ってなかった。しかも、五穀米にほうれん草のおひたし、ひじきの炊いたん(煮物)、にんじんしりしり、鶏の照り焼きと栄養バランスが整っており、味はもちろん素晴らしかった。(俺、五穀米なんて買ってたっか? まぁ、それを言うと他のものも買っていないが)
料理の味も、栄養も素晴らしい。これだけ見ると本当にいい主婦になるだろう。だから、誰かもらってくれ・・・・・・すぐにでも結婚してやれ。俺は断固拒否する。結婚相手は多分、性欲が人一倍強い人が合うかもしれない・・・・・・
「亮祐、朝と同じ感じになってるぞ」
だから、なんで絡んでくるんだ。早く部活にいけばいいだろ・・・・・・
俺は顔を上げて、前にいるであろう
「まだ、学校が始まって二日だぞ。大丈夫か?」
「俺は多分、もうだめだ」
「元気ないな? 彼女連れてこようか?」
「俺に彼女はいないし、もしも辰弥が頭に思い浮かべてるやつを呼んできたら、俺はお前を殴る」
辰弥が俺に向かって楽しそうに話してくる。お前、俺と立場変われよ! カーストの最高位に位置する陽キャのお前なら絶対に妃菜に対処できる。だから頼む! 一生の願いだ! もしもここで一生の願いを使わなかったらもう二度とできないかもしれない。(いつ、襲われるかわからないからな。妃菜なら俺が死んでもホルマリン漬けにしそうだが・・・・・・想像したらすごいな・・・・・・)
そんなことを考えていると辰弥が急に俺の頭に手を置いて、髪をぐしゃぐしゃにし始めた。辰弥のスキンシップだってことは俺にだってわかる。だが、いきなりすぎるだろ。
「まぁ、元気出せよ。あんなにできたいい奥さんはいないぞ」
「だから・・・・・・付き合ってもねぇよ」
いた、ここにいた。妃菜の結婚相手に良さそうな人。今、「いい奥さん」って言ったよな? 妃菜のことを「いい奥さん」って言ったよな? 辰弥、後のことは任せたぞ。
「じゃあ、頑張れよ!」
そんな俺の心の声が届くはずもなく、辰弥は俺に右手を挙げて、教室を出て行った。
「はぁ」
深いため息をついて、俺は体を起こす。いつまでもこんなことをやっている暇はない。
いつもなら、すぐに家に帰るか、バイトに向かうところだが、今日は新入生の勧誘の打ち合わせか何かで、部活に行かなくてはならない。いつもなら嫌ではないが、今日は帰って早く寝たい。だが、帰っても妃菜に襲われそうだから部活もありか・・・・・・
鞄を持って教室から出る。去年も同じ担任だったが、ショートホームルームが早く終わることで有名なのはだてではない。周りを見ると今始めているところもある。これなら妃菜と会うことはないだろう。
他にも早く終わる先生は何人かいる。短い方がいいよな。無駄に長くされても面倒くさいだけだ。
俺の学校はロの字型の四階建て校舎が本館で、離れたところに、三階建ての旧館と百周年記念館がある。三年生、二年生、一年生がそれぞれ二階、三階、四階を使っており、俺が向かっている書道部の部室は一階にある。
階が違うので、部活を知られない限り妃菜に会うことはないだろう。辰弥が言わなければの話だが・・・・・・あいつ言いそうだな・・・・・・さすがにそこまでしないか。辰弥はそんなやつじゃないからな。
少しの心配を覚えながら、俺は階段を下った。一階に行くとそのまま部室に足を運ぶ。部室と言っても、芸術の授業で書道選択の人が授業で使っている教室を使っているだけだ。故に特別なものは何もない。
高校なんてどこもそんなものか。いちいち授業の教室と部室を分ける必要性がないもんな。分けたからと言って、俺たちの部活じゃ使う頻度が少ないんだから意味がない。
そんなことを考えながら俺は部室の前に来た。鍵はいちいちかけない。理由はさっきも言ったように(俺、最近独り言が多くなったのか?)授業で使うからだ。この時間なら顧問も
言い忘れていたが、俺と鈴花の他に部員はいない。去年までは二つ上の先輩が三人くらいいたのだが、もう卒業してしまった。一つ上は入っているには、入っているのだが、たまに顔を見せる俺以上に幽霊だ。
新入生の勧誘か・・・・・・誰も入らなかったらいよいよつぶれるかもな。入ってくれそうな人に心当たりは・・・・・・一切ない! これだけ言っておく。入ってくれそうな人に心当たりは皆無だ!
「ガラガラガラ」と音をたてながら扉を開けて俺は中に入った。やはり中には誰もいなかった。顧問と鈴花が来るまで待っておこう。
「あっ、先輩! お疲れ様です! 私も少し前に来たばっかりですよ!」
とうとう、ここはお化け屋敷になったか。今少し遠くから聞こえてきたのは昔ここで亡くなった女子生徒の声だろう。
なぜか俺の学校は教室にこっており、この教室は上履きの脱ぎ場を除いてすべて畳み張りになっている。上履きを脱いで、畳の上に上がり、荷物を置く。
「どうして畳なんですか?」
だから、こってるんだって。幽霊なのにそんなことも知らないのか? それとも亡くなったときはフローリングだったとか?
「畳の上でヤルと痛いんですかね?」
幽霊なのに痛覚があるのか? 最近は何でもかんでも進化するんだな。そのうち、犬と話せるようになるんじゃないか?
「でも、私は先輩となら痛くても、それを快感にする自信があります!」
そう言えばこの幽霊、俺のこと「先輩」って言ってないか? あぁ、先輩に未練があって成仏できないでいるんだな。だから、誰彼かまわず「先輩」って言ってるのか。
「何でさっきから無視するんですか!」
徐々に声が近づいている気がするな。気のせいか。それよりもどうして無視するかって? 幽霊を直視したいやつなんてどこにいるんだ。
「もう知りませんよ! 先輩が反応してくれるまで、私は一枚ずつ服を脱いでいきます!」
あぁ、はいはい。幽霊の声のする方にしっかりと背を向ける。幽霊って服が脱げるんだな。と言うよりもどこからどこまでが服なんだ? どこで買うんだろうか?
「ジー」
ファスナーが下ろされる音がした。すごいリアルな音だな。まるで本当にファスナーを下ろしているみたいだ。
「今、スカート脱ぎましたから!」
いちいち報告するな! しかも下からかよ! 普通上からだと思うんだが! って俺も何言ってんだ?
制服の上着が墜ちる音がする。今度はもっと軽い音だ。おそらくブレザーだろう。やばい・・・・・・そろそろ逃げるか。
「ガラガラガラ」
そう思ったときに運良く? 運悪く? どちらかはわからないがドアが開いた。
「あっ、亮祐君、もう来てたん・・・・・・」
そこで言葉が途切れた。鈴花の目が俺の後ろを凝視している。わかるぞ、その気持ち。俺は昨日からそんな気持ちがずっと続いてる。
「ど、どうして、下着姿の女子がこんなところにいるの!?」
「下着姿じゃないですよ。ちゃんと靴下は履いてます」
鈴花が指を指して驚いた声を上げた。普通の反応だな。
下着姿に靴下か・・・・・・誰がそんな格好喜ぶんだよ・・・・・・
「安心しろ、鈴花。あれは幽霊だ」
「幽霊じゃないですよ! これから先輩とヤル予定の妻ですよ!」
「つ・・・・・・」
いや、鈴花、そこで固まるな。頼む、なんとかしてくれ・・・・・・
「ん? どうしたんだ、
すると近づいてくる担任の声が聞こえてきた。その担任はすぐに入り口の扉のところに現れて俺たちの方を見た。
教室の中と鈴花を交互に見る。
「
「俺も同意見です」
もう帰ってもいいか?
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