俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第4話 学校に行っても休まるところがない件について③
第4話 学校に行っても休まるところがない件について③
「先輩、先輩、先輩、先輩、先輩!」
全力疾走で
「先輩、先輩、先輩、先輩、先輩!」
俺の右斜め前に来てもまだ何かを言っている。ちなみに今の状況は前に
妃菜の様子は横目で確認できるが、一所懸命になっているな。
どう考えてもこれじゃあ、俺が「先輩」であることは明白だよな・・・・・・なんとか辰弥に見えないか? まぁ、妃菜が俺の方を向いている時点で無理があるか・・・・・・
やっぱり、名前で呼ぶのはやめよう。こんなやつと少しでも仲がいいと思われるのはきつい。また呼び方を考えないといけないな・・・・・・ゆっくり考えよう。
「先輩、先輩、先輩、先輩、先輩!」
「えーと、誰だ」
反応せずにいたが、それではこいつの気が収まらないらしいとわかったので、しょうがなく、俺は阿呆の方を向いて・・・・・・他人のふりをした。
だが、どうやらドエロお花畑にはそんなことに付き合っている暇はないようだ。
「この女は誰ですか!」
エミリーを指さしながら問い詰めてきた。
もちろん、俺にとってエミリーはただの幼なじみで、お花畑に至っては命を救っただけ(それはそれで、すごいことだが)の仲だ。それがどうやらバカにとってはそうでもないようだ。
いきなり「この女」呼ばわりされ、さらに指まで指されているエミリーがどんな顔をしているのかわからなかったが、ほぼ確実に状況がつかめていなさそうな顔をしているだろう。
辰弥の方をチラリと横目で見るとぽかんとした表情を浮かべていた。蚊帳の外感が強いのだろうな。
そんなことはどうでもいいので、爆弾魔の質問に答えるべきだろう。
「えっと・・・・・・幼なじみ」
名前を紹介すればいいのか、それとも俺との関係を説明すればいいのかわからなかったのでとりあえず後者を選択した。
どうやらそれが当たっていたようだ。爆弾魔の顔が青ざめた顔をした。(もしかしたら、前者の説明の方がよかったのか?)
「お、幼なじみ・・・・・・」
驚きと悲しさの混じったうめき声に似たような声がドエロお花畑から漏れ出た。そんな反応をするか?幼なじみくらいいるだろ。
幼なじみが同じ学校にいるのがそれほど特殊なことなのか? この場には辰弥とエミリーの幼なじみ二人がいるのだが。珍しいのか? どうでもいいか。
だが、ドエロお花畑にとっては幼なじみが珍しいというわけではなさそうだ。
「幼なじみ・・・・・・いや、大丈夫。私は先輩に命を救われているんだし、後輩っていうポジションもあるし、一緒に住んでるし、キスもしたし、あんなこともしてるし・・・・・・」
ブツブツと何かをつぶやいている。
後輩がどういうポジションなのかわからないし、一緒に住んでいるというよりも住みついたと言う方が正しいだろう。おまけにキスもあんなこともしていない・・・・・・はず。俺の知らない間に、されていなければ。
「あ、あのー」
遠慮がちに参加を求める声がした。エミリーの声だ。これだけ自分が参加していないのに、自分が話題にされていれば入りたくなるのも仕方がない。
参加者が増えることはとてもありがたいことだ。発言してもらおうと口を開こうとした瞬間、
「すみませんが、幼なじみのビッチさんは黙ってもらえますか?」
爆弾魔がおそらくエミリーの方を向いて、爆弾発言をした。どうしてそう爆弾を投げたがるんだ。
爆弾魔の顔は邪魔者でも見るような顔でエミリーの方を見ていた。まるで「じとー」という効果音が似合いそうな目だ。
「ビッ・・・・・・」
左斜め後ろから声が聞こえた。面倒くさくなることは確定だな。
ちなみにエミリーがビッチかどうかなんて俺は知らない。ただ、だてに長い付き合いなだけあって俺もエミリーのことはよく知っている。エミリーの性格上そんなことはないだろうとは思う。
「あんたこそ何よ! 亮ちゃんとどういう関係?」
いや、その聞き方はまずい。もう修羅場としか言いようのない現場になってしまった。
今度はドエロお花畑のターンかと思ったら何やらブツブツ言い始めた。
「えっ・・・・・・亮ちゃん? 亮ちゃん? そう言えば私、先輩のこと先輩としか呼んでないような・・・・・・」
どうやらあだ名で呼んでいたエミリーに後れをとっていると思ったようだ。
「えっと・・・・・・あの・・・・・・」
さすがに会話の途中でそっぽを向かれては笑里でも二の句が継げなくなってしまったようだ。
妃菜が(やっぱり名前の方がいいな。爆弾魔とかドエロお花畑とかで呼んでいると良心の呵責に耐えられなくなりそうだ)小さくガッツポーズして俺を直視した。なんとなくこの後の展開がわかる。
「先輩! 私も先輩のこと『亮ちゃん』って呼んでいいですか?」
「拒否する」
妃菜が言い終わるのとほぼ同時に、速攻で拒否した。
「わー、何でですかー」
俺をポコポコと叩きながらだだをこねる子供のような反抗を見せてきた。わー、かわいい(棒読み)。自然とため息が出てしまう。
ポコポコと叩かれながら俺はエミリーの方を見た。必死に助けを求めたつもりだったが、どうやらエミリーも困惑しているようだった。初めてこんなものを見せられたら困惑してしまうのも無理はないだろう。
今度は辰弥の方に目を向けた。さすがは俺の幼なじみだ。「はぁ」と小さくため息をついて妃菜の肩をトントンと叩いた。どうやら助けてくれるようだ。
妃菜が辰弥の方を向くと今にも泣き出しそうな目だったので、辰弥も一瞬たじろいでしまった。だが、それよりも亮祐の目の方が気になったのでなんとか正気を取り戻した。
「えっと・・・・・・君は?」
あぁ、そう言えば妃菜の自己紹介はまだだったな。って言うか、この場にいる全員自己紹介していないのではないか? 俺は普段、自分から自己紹介することはないが、するのが常識ということは知っている。
「私は一年の
言い直しの方がひどいと感じるのは気のせいか・・・・・・真っ赤な嘘で塗りつぶされた自己紹介をした。
嘘をつきすぎだろ。合っているのは名前だけだ。俺は妃菜と婚約どころか付き合ってさえいない。故にラブラブな新婚生活など送っているはずがない。
だだ、どうやら辰弥はこの状況を少しずつ楽しみだしたようだ。ニヤリと笑って俺の方を見てきた。よくここで笑えるな。これが、カーストの最高峰にいるやつの余裕なのか・・・・・・まぁ、辰弥がそんなやつではないことぐらいわかっているが。
「亮祐、お前面白いやつを連れてきたな」
前言撤回だ。本気で楽しんでやがる・・・・・・これが辰弥のいいところでもあり、悪いところでもある。
「阿呆か。殴るぞ」
とりあえず辰弥に、あわよくば妃菜に聞こえるように突っ込みを入れた。こんな阿呆なことはとっとと終わってほしい。不可能だろうが。
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