俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第3話 二日目の朝になったらどこかの『頭お花畑のドエロ』が家にいる件について②
第3話 二日目の朝になったらどこかの『頭お花畑のドエロ』が家にいる件について②
「て言うか何でここにいるんだ」
ほとんど朝食を食べ終わったところで俺がドエロお花畑に聞いた。(みそ汁が美味しかったことはすでに言ったが、サラダのドレッシングもドエロお花畑の手作りだったようでそれも美味しかった。食材選びも抜群でトマトも酸味がほとんどなかった)
「先輩、忘れたんですか? 今日から私はこの家で生活するんですよ」
「またまたー」と手を俺の方にパタパタさせながらおかしなことを言ってきた。
そんな約束してないが・・・・・・したのか? 記憶のない間に? んな阿呆なことがあるか。阿呆なのは目の前のドエロお花畑だけで十分だ。
「俺は家に入れてないが」
「それは合鍵を使いました」
そう言ってポケットから取り出されたのは昨日の夜に見た違法に作られた合鍵だった。
しまった。昨日タクシーに乗せる前に回収しようとして忘れていた合鍵の存在を今思い出した。やろう、と思ったことはすぐにやらねば忘れるものだ。
すぐにひったくりたかったが、どうせ鍵の番号をどこかにメモしているに違いない。どうやら鍵を取り替える必要がありそうだ。
残っていた料理を食べ終えた。そのタイミングがドエロお花畑と一緒だったのはディスティニーではなく、フェイトだろう。食べ終えるのが一緒になったことに、少し喜んだような表情をしたように見えたのは気のせいだ。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
二人で手を合わせたあと、ドエロお花畑が俺の分を回収して台所に持って行った。昨日のように皿洗いもしてくれるのだろう。
朝食の準備、片付けを見れば家庭的だし、見た目は童顔で背も少し低いが道を歩けば二度見されるであろうかわいさだ。
俺は台所に向かうドエロお花畑の後ろ姿を頬杖をつきながら見ていた。評価を改めるべきかもしれないな。こんなに家庭的な人物はあまりいないだろう。
「私ってやっぱりすごいですよね。先輩が寝ているベッドに入ろうかどうか迷って入らなかったんですよ。おまけに、キスもしてないんですよ」
振り返ることなく声高らかにアピールしてきた。危うく頬杖から顔が滑り落ちそうになってしまったのを必死にこらえた。
前言撤回だ。どれだけプラスを積み上げようともマイナスの無限大まで発散してしまっている。これでは、家事をすべてやったとしてもマイナスかもしれない。
これ以上絡むのは正直きつかったので洗面所で歯でも磨こうと思って立ち上がって歩き出した。
「先輩、もしかして歯磨きですか?」
台所の方から声が聞こえた。その声で歩みをトンっと止めた。よく聞こえる耳だな。
俺が台所の方を見ると皿洗いをしながらこちらを見ているドエロお花畑の姿がかろうじて見えた。
「そうだが、何かあるのか?」
「歯ブラシが二本あるのでどちらでもどうぞ」
なんだ、そんなことか。今まで使ってきた方を使うに決まっているじゃないか。まぁ、わざわざ言ってくれるのも優しさなんだよな。これで爆弾発言がなければ万人受けするだろうに。
洗面所に行くと確かに歯ブラシが二本あった。いつものやつを使おうと思っていたがどうやらドエロお花畑が捨ててしまったらしい。古くなっていたので仕方がないことかも知れない。おそらくドエロお花畑の先ほどの言葉はこれを受けてのことだろう。
赤と青の歯ブラシがあったが、何も考えずに青色を選んだ。別に好きな色が青色というわけではない。ただただなんとなくだ。なぜだろう。トイレの標識的に男が青みたいなイメージがあるのか?
歯磨きをしながら洗面台の周りを見ると化粧品や化粧道具など女性らしいものが整頓されて置かれていた。そんなものを目にするのは母親が海外に行く四年前以来だ。ただ、母親よりも極端に少ないような気がする。おそらくドエロお花畑は必要最低限しか化粧をしないのだろう。
ナチュラルであのかわいさということに俺は少なからず驚いた。母親も美人の類いに入る人種で、その母親を小さな頃から見てきた(と言っても記憶が曖昧になってきているが)俺から見ても美少女だった。
やっぱり、あんな美少女に迫られている俺は幸運なのか? それでも迫られ方が、子犬がてくてくやってくるというよりも、戦車が戦車砲を向けて走行してくるようなものなのだ。
それを恐怖と言わずに何と言うのだ。この状況を幸運と言えるのはどっかの陽キャだけだろう。
そんなどうでもいいことを考えながら歯磨きを終えてリビングに戻った。リビングでは皿洗いを終えたドエロお花畑がいつの間にか制服に着替えた状態でソファーに横たわっているように見えた。
さすがにここまでしてもらっているのだからそろそろ呼び方を変えた方がいいのかもしれない。何がいいだろう? 阿呆? バカ? ドエロ?
それよりも寝るなよ・・・・・・さすがにこの時間から二度寝は遅刻コースまっしぐらだ。別にこいつが遅刻したところで俺に不利益はないが、俺が起こさなかったせいで遅刻したとなると後味が悪い。
仕方なくソファーに向かって歩き出した。L字型になったソファーなので、遠くでははっきりとした状況はわからなかった。だが、近くまで行くと俺の目に驚きの光景が入ってきた。
横たわっている阿呆の足を見ると(念のために言っておくと目に入ってきただけで俺に見ようという気はさらさらなかった)制服のスカートがめくれあがって、太ももが丸見えだった。
さすがに下着が見えるほどめくれあがってはいなかったが、逆に見えそうで見えない方がエロいかもしれない。って、俺は何を思っているんだ・・・・・・
「ん・・・・・・先輩・・・・・・」
急にドエロが声を出した。どうやら寝言を言っているようだ。それにしても艶っぽい声だな。一体どんな夢を見ているのだろうか。
「先輩・・・・・・そんな、だめですよ・・・・・・でも、先輩がしたいなら・・・・・・あっ、そこは・・・・・・ふん・・・・・・先輩大胆なんですね・・・・・・」
とうとう寝言だけではなく、体まで動かし始めた。動いてわかったことだが、制服の胸のあたりのボタンを閉め忘れているようだ。シャツから透ける水色の下着がチラチラと見えていた。
さすがの俺もその場に立ち尽くしてしまった。自分がバカの夢でどんなことを・・・・・・と考えて少し思うことができた。
「おい、起きてるだろ」
聞いた、というよりも脅した。
その声を聞いて小豆沢はパッと目を開けて、手をグーにして自分の頭をポンと叩き、ウィンクしながら舌を少し出した。あざとすぎるポーズだった。まさに「てへぺろ」という効果音が、
「てへぺろ」
言うんかい・・・・・・
怒った方がいいのか、それとも無視した方がいいのか。俺にはわからなかった。もう考えたくもなかった。もしかして俺は寝ているのか? もしかして夢オチか? それならそれで俺は万々歳だ・・・・・・
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