俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第2話 家に帰ってもおかしなやつが俺の家にいる件について③
第2話 家に帰ってもおかしなやつが俺の家にいる件について③
「そんなことはどうでもいいんで、食事にしましょうよ!夜のために栄養をつけないと!」
いや、どうでもよくないだろう、と突っ込みたかったがこのお花畑の前では常識が通じないことぐらいわかっている。
おなかも減っていたので(決して夜のためではない)テーブルに着いた。
俺が座ると同時に用意していたお茶をお花畑が差し出した。ここだけ見ると気が利く子になるのだろうか。
お花畑もテーブルについて食べ始める、と思いきや、じっと俺の方を見てきた。
俺は始め、「自分の料理を食べてる」などと思いたいのだろうと思った。だが、料理を持ち上げたところでふと思った。この「頭お花畑のドエロ」が食材だけにするか・・・・・・
「頭お花畑」に「ドエロ」がついているのは、まぁいったん置いといてほしい。今までの発言からこのドエロお花畑が俺と「夜」を行いたいと思っていることがわかった。そのドエロお花畑がアルギニンなどの栄養だけに頼るだろうか。
俺は恐る恐るこちらを見ているドエロお花畑を見た。ドエロお花畑は食事を食べたそうにしていたが、どうやら俺が食べ始めるのを未だに待っているようだ。(目を輝かせて)
「一応聞くが食べ物以外は入っていないよな」
「はい!食べられるものだけです!」
「他には?」
「何も!」
そんなに嬉しそうに答えられたら、疑うしかないだろう。
「じゃあ、隠し味は何だ?」
「私の愛情です!」
「具体的には?」
「先輩の料理には精力剤を、私の料理には媚薬を入れてます」
俺は始め、言葉の意味が理解できなかったので固まっていたが、徐々に意味を理解してくるとそっと箸を置いた。
「あー、何で箸を置くんですか?」
勢いよくテーブルに手を置きながら、残念そうに俺に言ってきた。
逆になぜ食おうと思う・・・・・・そんなドエロお花畑の様子を見ても俺は空腹に打ち勝つほどの危機感を持っていた。
本当は料理をぶちまけたかったが、それでは食材に失礼だと思ったのでさすがにそこまではしなかった。だが、この料理をどうしようか。
「先輩、食べないんですか? って言うよりも食べてくださいよ!」
怒ったような口調で何かを訴えかけてきた。
なぜ怒られる・・・・・・語尾を強くして料理を食べろと言われる理由が思いつかなかった。
確かに料理を残しているという観点から見ると怒られても仕方がないのかもしれない。だが、その料理におかしなものが入っているとなると食べる方が怒られるような気がした。だってそうだろ、誰がこんなものを口に入れようと思う?
だがそんな常識はドエロお花畑には通じないようだ。
よほどお腹がすいていたのか、それとも自分から仕掛けようとしているのかわからないが、とにかく料理を食べ始めた。
美味しそうな表情と血走ったような表情を交互に見せていることからその両方なのかもしれない。
俺は料理を食べる気がしなかったので台所に向かった。
台所に着く真っ白な冷蔵庫の扉を開けた。普通の一人暮らしにしては、と言うよりも一般家庭的に見ても大きな冷蔵庫だ。こんなもの俺一人で使えるわけがない。
何か入れていた記憶はなかったが、もしかしたら知らず知らずのうちに何か買っていたかもしれないと思って開けた。
すると意外なことに冷蔵庫の中にはたくさんのタッパーが入っていた。しかも日付と料理名、食品名まで書いたテープまで貼ってある。どう考えても、あのドエロお花畑が作ったものだろう。
意外な一面もあるのか、と一瞬感心しかけたがテープをよく見ると「精力剤入り」「媚薬入り」などの文字があったのですぐさま感心するのをやめた。
ため息をつきながら冷蔵庫をよく見るとチョコレートケーキが置いてあった。おそらく今日のデザートなのだろう。
チョコレート・・・・・・何から何まで徹底しているところは賞賛に値するだろう。だが、チョコレートを使うとは少々古風すぎる気もするが。もしかしたら、チョコレートにそんな効果があると知っているのは少数なのか? だとしたら俺も相当だな。
そんなどうでもいいことを考えながらチョコレートケーキを見ていた。すると、ふと考えが思いついた。だからこそそのチョコレートケーキを持っていこうと思った。もちろん、仕掛けをして。
「おい、これもか?」
「わー!先輩さすがですね!」
わざわざ自分の分まで持ってきてくれたことに感激したのだろう。ハイテンションさがそれを物語っている。
ドエロお花畑はちょうど料理を食べ終えたらしく、箸を置いた。
ドエロお花畑にチョコレートケーキを渡すと俺は自分の席に着いて、箸と料理の盛られた皿を持った。
「えっ!もしかして食べてくれるんですか!」
体を前のめりにして聞いてきた。その顔が少し赤くなって、目がとろんとしているのは気のせいだと信じたい。
「まぁ、料理に失礼だからな。だからそれでも先に食べてろ」
「はーい!」
俺が料理を食べてくれるのが嬉しいのか、それともやる気になってくれたことが嬉しいのか。全くその気などないのだが・・・・・・ドエロお花畑はチョコレートケーキを食べ始めた。
「あっ、悪い。電話だ」
と言うと俺は料理に手をつける前に席を立って、ポケットから電話など全くかかってきていないスマホを取り出して、リビングから出て行った。
階段を上って、自分の部屋に戻った。とりあえず、制服の上着を脱いで、ハンガーに掛ける。どうせこの後風呂に入って着替えるのだからカッターなどは脱がなくてもいいだろう。
「はぁ」
大きくため息をついた。まさか、家の中にまで押しかけてくるとは思いもしなかった。まぁ、思った方が異常だと思うが。
あのドエロお花畑は好きになるたびにこんなことをしているのだろうか? と言うか本当に俺を好きなのだろうか? また、父親か母親に近づきたいために俺にかまっているのではなかろうか。だとしたら、全く逆効果な近づき方だな。
少し気持ちを落ち着けてから(決して、ドキドキしたわけではない)部屋の扉を開けて、リビングに戻るために歩き出した。
リビングに戻ると朝のように、ドエロお花畑が寝ていた。天使のような寝顔とはこのようなことを言うのだろうか。
ポケットからスマホを出して履歴を呼び起こし、朝かけた番号にかけてタクシーを呼んだ。
「学習しろよ」
二度も同じ手に引っかかったドエロお花畑にぼそりとつぶやいて、お姫様抱っこで玄関まで運ぶ。もし起きていたら、死ぬほど喜ぶんだろうな。
玄関で五分ほど待っていると、タクシーが到着したという連絡があった。ドエロお花畑をタクシーに乗せるときに運転手に微笑ましそうな表情で見られていたような気がするが、忘れることにした。
ドエロお花畑のポケットに入っていた生徒手帳の住所をタクシーに伝えて、発車するのを見送り、俺は家に入った。
リビングに戻るといつの間にか料理は片付けられていて、俺の料理はどうやらタッパーに入れられたような形跡があった。皿洗いも終わっていたので俺のやることは全く残っていない。
意外と家庭的なところがあるのかもしれない。思えば、料理からはいい匂いがしていたし、盛り付けも父親ほどではないがきれいだった。
あの性格さえ直せば完璧なのにな・・・・・・まぁ俺には関係・・・・・・あるな。
もう考えるのが面倒だったので、食事もとらず今日は風呂に入って休むことにしよう。明日のことは明日考えればよい。
服を取りにリビングを後にした。
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