第2話 家に帰ってもおかしなやつが俺の家にいる件について②

「と、とりあえず中に入りませんか」

 えへへ、と笑いながら手で中に入るように促した。


 あれ、ここは俺の家だよな。いつの間にかお花畑の家のように感じていた。


 なぜこれほど図々しくできるのか聞きたかったが、このまま玄関に突っ立ったままなのもいやだったのでお花畑の言うとおり中に入ることにした。


「鞄持ちましょうか?」

「拒否する」

「上着もらいましょうか?」

「拒否する」

「頭なでてもいいですか?」

「拒否する」

「手つないでもいいですか?」

「拒否する」

「キスしてもいいですか」

「拒否する」


 靴を脱いでいるとき、廊下を歩いているとき、お花畑のアプローチ? が続いた。


 この頭痛に効く薬があるなら速攻で買いに行きたい気持ちだ、と俺は心の底から思っていた。

 横で手を出したり、引っ込めたりしているお花畑の手が俺の横目にちらつく。

 俺はなぜこんなやつを助けてしまったのだろうか・・・・・・






「さぁ、先輩どうぞ!全部私の手作りです!」

 リビングに入ると食事が用意されていた。

 鶏肉、牛肉、大豆、キュウリなどなど様々な食材が使われた食事がテーブルを彩っていた。


 だがなんとなく気になることがあった。

 なんとなく食材の栄養がタンパク質に偏りがちになっている気がする。他にも、亜鉛、アルギニン、シトルギンなどの栄養が多いように見えるのは勘違いだろうか。


 普通なら気にならないようなことだろうが、このお花畑が用意したから気になったのだろう。

「聞いていいか」

「何ですか?」

 どうぞどうぞ、と促してきた。


「この食材のチョイスはどういう意図だ?」

「それはもう、のためですよ!」

 無邪気な笑顔を向けてきた。普通に見ればかわいい笑顔なのだろうが、俺には悪魔の笑顔に見えた。

 やばい、頭痛が一層ひどくなった気がする。


「一応聞くが夜とは?」

「何を言ってるんですか?二人の大切な初夜じゃないですか?」

 無邪気な笑顔から何やら取り返しのつかない発言が飛び出してきた。


 「何を言ってる」はこっちの台詞なんだが・・・・・・

 警察に通報するべきなのかそれとも救急車を呼ぶべきなのか迷っていた。お花畑の心の火を落ち着かせるために消防車を呼ぶのもありだ。

 だがとりあえず、目の前にいる「頭お花畑」を刑務所に入れることができないか真剣に考えていた。(つまり、警察に通報だということ)


「通報は住居不法侵入でいいか?」

「だから、何でですか!」

「・・・・・・そうだろ」

「ちょっと待ってください!言い訳をさせてください!」

 言い訳、と言っている時点でアウトだとは思うが・・・・・・


 一応、念のため、聞くことにしよう。

「で?」

「今朝、先輩の家に来たときに玄関に鍵が置いてあったんですよ。私はこの家の鍵だと思って、すぐに鍵の番号を覚えたんです。それで入学式の後に腕のいい知り合いのお店に合鍵を頼んだんですよ。ものの一時間で作るってすごいですよね!」

 「感心、感心」と言いながらお花畑が頷いた。


 俺はもうあきれ果てていた。

「・・・・・・それが言い訳か?」

「はい!そうですよ!」

 にっこりとした笑顔で俺の質問に答えた。どうしてここまでの爆弾発言をして、すがすがしい笑いができるのだろうか?


 だめだ・・・・・・俺はこのお花畑とまともな会話をするのを(と言っても朝からほとんどわかっていたことだが)諦めた。

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