俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第2話 家に帰ってもおかしなやつが俺の家にいる件について①
第2話 家に帰ってもおかしなやつが俺の家にいる件について①
日が傾いてきた。道路には帰宅する人、飲みに向かう人様々であった。
俺はコンビニのバイトを終え帰宅していた。
なぜかはわからない、いや心当たりはあるが、いつも以上に疲れていた。早く帰って寝たいという願望で気持ちがいっぱいだった。
わいわいと騒ぐ、小学生や青春真っ最中の中高生とすれ違いながら俺は家の前までたどり着いた。家の前に着くと今朝のことを思い出してしまった。
変な女子が来て、急に好きだ、と言いだしたことが無意識のうちに頭によぎる。
あの後、始業式が午前だったためお花畑をタクシーに乗せて俺は登校した。入学式は午後からだっため遅れたということはないだろう。優しい、と言う感想は受け付けていない。
始業式後はお花畑に気をつけながら学校を出たため会わなかったし、バイト先にも来なかったので顔は見なかった。
また明日の朝来るんだろうな・・・・・・そんなことを思いながら玄関の扉を開ける。明日はもう出なければ平気か、などと考えていた。出なかったとしても家の前でずっと待たれていそうな気がするが。
「ただいま」
誰もいないがこれが日課になっているので一応挨拶をする。毎日返事は帰ってこない。一人が慣れるとそんなことも別に悲しくなかった。
「お帰りなさい。先輩」
俺はその声を聞いて立ち尽くしてしまった。今までの人生の中で一番と言っても過言ではないほど驚いていた。
なぜか目の前に制服から私服に着替えているお花畑がいた。ゆったりとしたうすピンクのTシャツに、ちょっとしたことで下着が見えてしまいそうなミニスカート姿だった。
しっかりと正座して出迎えているその姿は、どこかのアニメの新妻か何かと突っ込みを入れてしまいそうなものだった。そう言えば、入るときに扉の鍵を開けた記憶がないな。
「お風呂にしますか?ご飯にしますか?それとも・・・・・・」
少し顔を赤くして人差し指を顎に持って行った。
「わ、私ですか?」
少し顔を傾けながらお花畑が聞いてきた。
俺は驚きすぎて思考が停止してしまっていたが、徐々に意識を取り戻していった。どう反応しようかと思ったがとりあえずやるべきことは一つだと思った。
ポケットに入れていたスマホを取り出して電話をかける。その様子をお花畑は、あれっ?、という表情で見つめている。
「あ、もしもし警察ですか。今家に泥棒が・・・・・・」
「あわわわわわ!」
手をばたつかせながら大慌てで俺の手からスマホをひったった。
お花畑は、急いで「すみません」と言ってから電話を切る。
「はぁ、はぁ、はぁ。何してるんですか!」
慌てすぎて呼吸が荒くなっている。
俺はその様子を笑うこともなく、突っ込むこともなく、ただただ呆然と眺めていた。
「・・・・・・泥棒がいるから」
「泥棒じゃないですよ!」
「じゃあ、詐欺師が・・・・・・」
「詐欺師でもないです!先輩の妻です!」
「結婚詐欺か」
「違います!貢いでもらおうなんて思ってないです!私が先輩のために体を張りますから!」
正直本当に警察に突き出したい気持ちでいっぱいだった。頭を抱えたい衝動を必死にこらえながら今の状況を整理しようとした。だがいくら考えようとしても頭が追いつかなかった。
「先輩、何を考えているんですか?」
不思議そうな目をして尋ねてきた。
お前が何を考えているのか知りたい。だが、それを言うとまたおかしな発言をされるに決まっている。もうどうすればいいのだろうか。
頭を抱えたい気持ちでいっぱいになりながら、俺は深くため息をついた。
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