第3話ー7

 カルマちゃんは迫りくる兵を次々と薙ぎ倒していった。

 そのカルマちゃんの戦闘機動にテクスチャは上手く魔法の範囲を絞ってカルマちゃんに当たらないように援護をしていた。

 正面から砦を攻めるカルマちゃんもたいがいだけど、それについてこれるテクスチャもたいがいだ。

 兵のほとんどが倒れ、砦もテクスチャの魔法で炎上している。

 時々散発的に矢が飛んでくるが、それらは一様に薙ぎ払われていた。

「ザック、バーストモード」

 バーストモード。

 それはかつて俺様を粉々に砕いた魔力を伴う戦闘機構である。

 しかし、俺様はあの時の俺様ではない。

 魔力によるカウンターダメージの計測も済んでおり、より魔力運用に適した形に改良されているのだ。

「バーストモード、起動」

 俺様のパーツの節々が赤い光を伴ってドクンッと鼓動のようなモノが響く。

 俺様達の前には砦の門が立ちふさがる。

 高さは8メートルくらいの人の手で押して開けられなさそうな重厚な門扉だ。

「いっくよぉぉぉぉぉ」

 ドカンと一発禿げ頭。

 なんかそんな表現が浮かぶくらいにあっさりと門は吹き飛んでしまった。

 いや、想像以上に威力上がってねぇ。

 そりゃカルマちゃんは天才だしすごいのは分かるけど、パワーインフレ起こしそうじゃないかな。

 とは言え、バーストモードは連発出来ないしクールタイムも存在する必殺技みたいなものなんだよね。


 とりあえず、破壊した門から砦の内部に入る。

 ここはアヴェントエイムと敵意対するグランマキナ帝国の砦になるそうだ。

 しかし、表向きは盗賊の砦であって俺様達が受けた依頼は盗賊退治ということになっている。

 ちょっと上の方の政治的な話になって来るおだろうが、俺様達はあくまで盗賊退治に来た冒険者ということになる。

「ってことでいいよなぁああ、爺さん」

「カカカカカ。喋る武器とは珍しい。折角だし盗賊の頭領らしく女は売ってその武器はいただくことにしようかのぉ」

「っけ、お前みたいなジジイに使われるなんてまっぴらごめんだぜ」

 門の向こうの広場に出れば兵士がうじゃうじゃいるかと思いきや、敵さんは奥に引っ込んでしまっていた。

 一人を除いて。

 広場の演説台に立っている目立つけど武骨な鎧を着た偉丈夫と呼べる大柄な爺さんが俺様達を出迎えた。

「一つ聞きます。何故盗賊なんかに化けて商隊を襲ったりしていたのですか」

 カルマちゃんがそう聞くと爺さんは「カカカカ。」と笑いながら答えた。

「なに、ワシは戦争がしたいのじゃが国が弱腰でな、だから代わりにそちらから兵を出してもらおうとたくらんだわけじゃよ」

「分かりました、貴方は悪者です。ここで倒してしまいますがいいですよね」

「カカカカカ。構わんよ。兵は下げさせた。一騎討と行こうじゃないか。ワシの名はデュラン。フン、今は盗賊の頭といったところか。して、おぬしの名は?」

「カルマです。冒険者のカルマです」

「では尋常に――――」

「――――勝負」


 デュランは演説台から跳躍した。

「おおぅ、お爺ちゃんなのにすごい足腰」

「カルマさん気を付けて、デュラン将軍と言えば――――」

「無駄口など叩く暇は与えん。【ランサーズ・レイン】」

 テクスチャが注意を促してくるが、それをかき消す大きな声が頭上から響く。

 カルマちゃんの頭上、5mぐらいの高さでデュランは手にした槍を構える。

 すると槍が光り輝き、

「ちぇららららららららららららららららららあああ。」

 デュランが槍を突き出すたびに光の槍が飛んでくる。

 その速さがまた尋常でなく文字どうり雨のように俺様達に降り注いできた。

「やあああああああああああああああ」

 カルマちゃんは俺様を体の前で回転させてその光の槍をはじき落としていく。

 ちなみにテクスチャは早々に門の瓦礫の影に隠れている。

「むぅ、やはりやるな」

 宙に滞空しているデュランが驚きの声を上げる。


「ザック、これ魔法じゃないよね」

「ああ、魔力は感じるが魔法ではないな。モンスターやリンが使ってた技に見えるが、威力が段違いだぜ」

「魔力の使い方が上手いんだね。さすがは年の功」

「感心してる場合か。このまま耐えるだけじゃ勝てないぞ」

「分かってますよ。私だって少しは魔力を使えるようになったんだから。見ててよ」


 そう言うとカルマちゃんは走りだした。

 俺様を回転させてたのも止めて全力で砦の壁に向かて走り出したのだ。

「むぅ」

 しかし、その後をデュランの攻撃が追いかける。

 否、進行方向に先回りして攻撃の雨を降らせてくる。

 それをカルマちゃんは背中に目があるように躱して走り続ける。

 首を傾げて、ジャンプして、時にはフェイントを入れてターンをかけて背中からの攻撃を躱していく。

 まるでバスケットボールのドリブルかのように華麗な動きだ。

 まぁ、実際は俺様が目の役割になっていて、後ろも見えているんだろうけど、それでもよほどの度胸が無ければ自分を殺しに来ている攻撃を背中を向けて避けることはできないだろう。

 そして砦の壁を垂直に駆け上がるとそのままデュランの頭上へ跳躍して見せた。

「馬鹿め。それではいい的だ」

 その通りだよ。

 これじゃあデュランの攻撃を避ける動作が出来ないじゃないか。

「これで終わりじゃ」 

 デュランからカルマちゃんに向けて渾身の一突きが放たれた。

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