第3話ー6

「そっれじゃあテクスチャちゃんとはここでお別れだね」

「え⁉」

 まぁ、いきなり別れを告げられたらそういう反応をするよな。

 しかし、カルマちゃんはそんなこと気にすることなくテクスチャに別れを告げる。

「だってテクスチャちゃんは故郷に向かうんだよね。でも私はちょっと寄り道しなきゃならなくなったから、ここでお別れだね」

 カルマちゃんはニッコニッコ笑顔で述べる。

 それを聞くテクスチャは捨てられた子犬のように青い顔してうろたえている。

「え?えぇ」

 しかし、カルマちゃんはそれに気づかずに、テクスチャの手を取り語り掛ける。

「一緒に冒険できないのは残念だけど、いつかまた会えるよ。その時にまた仲良くしてくれたら嬉しいな」

 あぁ~、これはカルマちゃん。やっぱりツンデレに気が付いてはいないようだ。

 さて、どうするテクスチャ。

 俺様はカルマちゃんの味方をするけどそれ以外にはそうではないぞ。

 お前さんが望んでいる物があるならお前さんの口で言葉にしろよ。

「ダ……」

「ダ?」

「ダインスレイフ。ダインスレイフを今から探しに行くんですよね」

「……うん。そうだけど」

「それ、ボクも一緒に行きます」

「えっ?なんで」

 はいでました、カルマちゃんの天然。

 これ、素で分かってないんだよな。

 哀れ、スンっとした顔をするテクスチャだったが、すぐに気を引き締めて立ち直る。

「そ、ソレはもちろんかの伝説、トールキンの「コレクション」を直接目にする機会なんてそうそうないですから。このチャンスに見ておきたいんですよ」

「でも、里帰りはいいの」

「いつ帰るかなんて連絡してませんし、いつでも帰れますよ」

「でもある人が言ってたよ。「帰れる場所、いつまでもあると思うなよ」って」

「なんですかそれ」

「実際にワタシの故郷は滅んじゃって帰れないし」

「ァ―――――――――」

 カルマちゃん。

 それじゃあまるでテクスチャと行きたくないみたいに聞こえちゃうよ。

 実際にテクスチャの顔はどんどん沈んで行ってる。

「それでも付いてくるの?」

 カルマちゃんはそれが分かっていながら問いつめる。

 それにテクスチャは唇を噛んで決意に満ちた顔で答えた。

「行きます。それでもカルマさんと行きたいです」

 建前を捨てたテクスチャがカルマちゃんの顔をしっかりと見据えて決意を表した。

「てか、なんでこんなにシリアスになってるんだ」

「そこはノリだよ」

 俺様の疑問にカルマちゃんはそう返してきた。


「それじゃあ改めてよろしくね、テクスチャちゃん」

「ハイよろしくお願いします」

 こうしてテクスチャとパーティーを組むことになった。

「それじゃぁ、冒険者ギルドに行って簡単なお仕事、何か魔物退治でもあればそれを受けよう」

「あれ、ダインスレイフを探しに行くんじゃ」

「その前に即席のパーティーなんだからコンビネーションの確認をしとかないと。この前みたいなことになるよ」

「この前—―――」

 この前とはカルマちゃんがテクスチャをかばって左腕を切り裂かれたことを言っているのだろうが、その時のことを思い出したのかテクスチャの顔が暗くなる。

「ダインスレイフを持っていった人たちが手練れだとするなら、事前にワタシ達の呼吸を合わせておかないと」

「なるほど、そうですね。納得です」

 そうして俺様達は冒険者ギルドに向かったのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「敵襲~~~~~~~~~~~~」

 砦にその声が響き渡る。

 それは砦に詰めていた兵士たちに伝わりガチャガチャと具足を鳴らして走り回る音となった。

 また、時刻は夜の中場。

 休息をとっていた兵士も多くいた。

 そしてそれはこの砦の最高責任者である将軍も同じだった。

「状況を素早く知らせろ」

 将軍は戦装束に着替えながら伝令の兵に報告を求めた。

「はっ、現在砦の東門が何者かの襲撃に会い火の手が上がっています。まだ確認はとれていませんがアヴェントエイムからの攻撃の可能性あり」

 その報告を聞いて将軍は凶暴なまでに口角を吊り上げる。

「なれば僥倖、返り討ちにして開戦の狼煙としてくれるわ」

 将軍はアヴェントエイムの西にあるグランマキナ帝国でも強硬派に属しており、ことあるごとにアヴェントエイムへの侵略を唱えて来た。

 それでも慎重派が力を持つ現在の帝国中枢では異端とされて意見は受け流されてきた。

 ここにアヴェントエイムからの攻撃が有ったとなれば、慎重派も交戦に反対はできないだろう。

「カカカカカカカアカカカカカアアアアアアア」

 将軍は来る戦への興奮から笑いをこらえることができなかった。

「報告!」

 そこに1人の兵が飛び込んでくる。

「て、敵の総数はたったの2人です」

「なんじゃと!」

「加えて、前衛は奇妙な大型の武器を扱う小柄な少女です。もう一人はフードで詳細は分かりませんがかなりの火力を有したウィザードである模様。すでに東門は壊滅状態です」

「カカカ、亜人共の国には化け物もいるというか。ワシが出る。兵はむやみに前へ出るな」

「ハッ」

 伝令は指示を受けると部屋を飛び出し指示を部隊に伝えに言った。

 その後を戦装束に身を包んだ将軍が闘気をほとばしらせながら続いたのだった。

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