第3話ー3
「して、何ようだ。おぬしのことだから別に女を口説きに来たわけではあるまい」
コンゴウさんがバルトにきつめにたしなめる。
「おう、そりゃそうだ。よっぽどのことが無いとお前さんみたいな怖い女には近づかねぇよ」
「ほぉう、ソレでそのよっぽどが起こったわけだな」
「実はなかくかくしかじかでよ」
「なるほどそれはやばいな」
「本当にかくかくしかじかで通じてるんですか!」
つい俺様はツッコミを入れずにはいられなかった。
ちなみにこの間、テクスチャはガチガチに固まっていた。
「なんだぁ、今カルマ嬢の方から声が聞こえたが」
「それならこれです。こちらザックって言います」
そう言ってペンダント状態の俺様をカルマちゃんが紹介した。
「俺様ザック、カルマちゃんの武器であり家族であり友である、ザックカリバー。通称ザックだよろしく――お願いします」
このバルトってやつ近くで見るとめちゃ恐い。
特に眼力が半端ない。
三白眼なんだけど、小さい瞳がまるでレーザーでも放っているようにギラギラしてやがる。
よくカルマちゃんはこんな奴と普通に話せるな。
「インテリジェンスアームか、なかなかの業物だな」
「えっへん。私が創りました」
「へぇ~、なかなかのもんじゃねーか」
バルトは俺様を見ながら舌なめずりをする。
やめて、お尻がうずく。俺様お尻ないけど。
「とりあえず、嬢ちゃんにも分かりやすく説明すると、俺が留守にしてる間に人間族が俺の巣に入り込んでたらしいんだよ」
「空き巣にあったんですか」
「アキス?なんだそりゃ。まぁよくわからんがそんな感じで巣にため込んでた財宝を持ってかれたんだよ」
「最寄りの警察に通報を」
「ケーサツってなんだよ。まぁいいんだよ。財宝に関しちゃ。俺はそうではないがドラゴンってのは町を襲って財宝をため込むもんだ。逆に「アキス」ってのにあっても文句は言えん。俺もそれに備えて罠とか設置してるしな」
「でも、財宝を取られたら悔しくないですか」
「そりゃぁ悔しいよ。こなクソ~って思うよ。でも、それで無差別に暴れるほどオレも若くはないんだ」
「では、今回はどうしたんですか」
「いやなぁ、ちょ~~~とヤバいのを持ってかれて」
「やばいの?」
「その~~~~~~な。」
「ダインスレイフだそうだ」
言い渋るバルトに代わってコンゴウさんが語る。
「他の財宝と一緒に適当にヤバい魔剣を放置してたら持ってかれたそうだ」
バルトって片付けが出来ないのか。
って、ダインスレイフはやばいだろ。ダインスレイフは。
ダインスレイフ。
俺様達の故郷、エデンの神話に登場する魔剣。
たしか、これを鞘から抜いたら、生き血を吸うまで鞘に収まらないとかいう魔剣。
全く同じモノとは思えないが、バルトほどの者が所持していて、盗まれたことに慌てるくらいにはヤバい代物。と、思われる。
「ダ、ダ、ダ――ダインスレイフ!」
それまで固まっていたテクスチャが突然叫びをあげた。
「それってあの伝説のドワーフの「コレクション」の1つじゃないですか」
「伝説のドワーフって誰?」
カルマちゃんが疑問を口にすると、興奮したテクスチャが説明してくれた。
「伝説のドワーフ、その名はトールキン。数多の伝説的道具や武器を生み出した「造物主」の二つ名を持つ神に等しい人物ですよ。ダインスレイフと言うのはトールキンが弟子のダインと共に打ち上げたという伝説がありす」
ほほぉう。
カルマちゃんを差し置いて「造物主」などという二つ名を持ったやつがいるのか。
「すごいんですよ。竜を殺す剣「バルムンク」や天上人の玉座になった「フリズスキャーヴル」、誰でも持つだけで達人になれる「勝利の剣」も彼の作品です。その数は計り知れず、総称を「コレクション」と呼んでいるのです」
なんかエデンでも聞いたことのある名前が出てくるな。
『ねぇザック』
『うおぉ、なんだこれ』
突如頭の中に響いたカルマちゃんの声に俺様は驚いた。俺様頭はないけどね。
『これは内緒話するために付けた通信装置だよ』
そう言われてカルマちゃんの方を見たら、カルマちゃんは興奮して話すテクスチャに笑顔で相槌を打っている。
『まさか感情がコロコロと表情に出ると思っていたカルマちゃんにこんな腹芸ができるとは――』
いやはや驚いた。
『エデンには汚い大人もいたからね』
『なるほどね。それで内緒話の理由は?』
『世界征服計画についてだよ』
『この話の流れからどうその話に繋がるんだ』
『それはね、この世界の伝説級がどれほどのものか調べて、それを超えるものを作ろうと思うんだよ』
『なるほどなるほど。つまりこの機会にダインスレイフとやらをちょろまかそうというわけだ』
『ちょろまかしたりはしないよ。ただ、近くでどんなものか観測したいな~って思っただけだよ』
『つまり、盗むのは技術だけ、ってか。それはいいけど、ならばその話にどう首を突っ込むんだ』
っと思っていたらバルトから、
「話を戻させてもらってもいいか」
と言われた。
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