第3話ー2
「竜が出たぞおおおおおおおおおおおお」
「ドラゴンだ。赤い鱗の真竜だああああああああああああ」
俺様達が居るのは旅館の奥まった場所にある宴会場だ。
そこにまで叫び声が聞こえてくるということは外は相当な混乱になっていることだろう。
「ドラゴンかぁ。お肉が美味しそうだね」
そう言ってよだれを垂らしながら立ち上がるカルマちゃん。
しかし、そんなカルマちゃんをコンゴウさんが止めた。
「待っておくれ。それ、ワシの知り合いやろからから食べんでくれなはれ」
そう言った後、コンゴウは口元に手を当て何かを囁いている。
「お頭。大変です。ドラゴンが――――」
「安心をしぃ。今ワシが確認取った。それはワシの客人や。街の守備隊にも攻撃せんように今言伝を送った所や。それより最上の客や。今すぐ出向の準備をせい」
「ご案内はどちらに……」
慌ててやってきた男性はコンゴウのその言葉で平静を取り戻して訊ねて来た。
「ここでええよ」
「それはどのように」
「心配しなさんな。彼奴も人型に成れるぐらいの歳は食ってる。準備が出来たら空飛んでる彼奴に声かければ降りて来はるよ」
「かしこまりました」
そう言って男性は部屋を出ていった。
「コココ、悪いな。今から客が1人来る」
「では私たちは席を――――」
「いやかまわん。そのままてくれてよい」
席を外そうとしたカルマちゃんをコンゴウさんは引き止める。
「ワシの知り合いやさかい気にする必要はない。むしろコネを作れるチャンスやで」
「それならお言葉に甘えて」
「ちょ、ちょ、ちょとカルマさん。ドラゴンですよ。聞けば赤い鱗の真竜、そんなの吐息のひとつで人が蒸発しますよ。なに会おうとしてるんですか」
「だって、興味深いじゃない」
「ドラゴンってそんな気持ちで会っていいモノじゃないですよ」
「じゃぁ、テクスチャは下がっている?」
「え?いや。う~~~~~~ん。分かりました。私もご一緒します」
そう言ってテクスチャはガチガチになって正座し始めた。
それからしばし待つこと。
「お待ちください。まだお迎えの準備が――」
「構わん構わん。別に観光できたわけでは無いからな。下手に気を遣うな」
という先ほどの男性と、低音ながらよく通る男性の声が聞こえて来た。
パァン!
大広間の襖が勢いよく開かれて一人の男が入って来る。
身長は180㎝ほどの燃えるような赤い髪を逆立てた男がズカズカと宴会場に入って来る。
細身ながら筋肉質で貴金属で体を飾り立てた男。
肌の色も赤みがかっておりアラブの王族かと見まごう豪奢な男だった。
「なんだ。先客がいたのか」
「いえ、私はせっかくだから「コネを作っておけ」と言われてこの場にとどまったものです」
「ハハハハハハハハ、なかなか気風うのいい女じゃねえか。まだ子供に見えるが年はいくつだ?」
「名前も聞かずにいきなり女性の年齢を聞くのは失礼じゃないですか。」
「ギャハハハハハハハ。すまんな。この年になると貴様みたいな子供は雄雌のちがいが分からなくなるもんでよ」
こいつ、いくら何でも失礼すぎやしないか。
しかし、カルマちゃんは気にしたそぶりを見せずに。
「一応これでも雌です」
と答えた。
それに「ひゅーー。」と口笛を吹いた男が笑いながらカルマちゃんに近ずく。
「ははは、最初見た時は何処のガラクタかと思えば。」
こ、こいつ!
「バルト、流石に口が過ぎるぞ」
コンゴウさんが俺様より先に口を開いた。
「怒んなって。褒めてるつもりなんだからよ。コンゴウ、お前よりこっちの嬢ちゃんの方が大人かもしれねぇな」
バルトと呼ばれた男は改めてカルマちゃんに向き直ると、さっきまでの軽薄な顔を引込めて、真面目な顔で話しかけて来た。
「俺はバルトアンデルセン。レディーのお名前を聞かせてもらってもいいですか」
と、途端に紳士的な態度でカルマちゃんの前に片膝をついて尋ねる。
「カルマと申します。バルトアンデルセン様。見ての通りガラクタのような体で御座いますが良しなに」
と、カルマちゃんはそれは淑女の様に返して見せた。
「それについては失言でした。どうかご容赦のほどを」
正直、このバルトという男にこんな畏まった態度は似合わないとい気持ちが一杯一杯だ。
それはコンゴウさんも一緒なのか「うぇ~。」って顔しながら二人を見つめていた。
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