第2話ー6
「なぁぁ~~~~~んもないな」
コンゴウさんに用意してもらった工房を見て俺様がつぶやいたのはそんなんだった。
あるのは広いスペースと木の机だけ。
入社したての新入社員が「ここが今日から君の仕事場だ。」と、連れてこられたら絶望してしまうような環境だった。
そんな場所にルンタッタ~~と足を踏み入れるカルマちゃん。
「それでカルマちゃん、鰹節はここで作れるのか。確か火で炙るんだっけか」
「やだな~、それじゃぁ鰹節じゃなくてカツオのタタキだよ」
「そうなのか」
何が違うんだろう。
「いい、ザック。鰹節は発酵食品なんだよ」
「ハッコウショクヒン?……え?あれが。チーズやヨーグルトみたいな発酵食品?でもそういうのってドロリと言うかウニョーーーーンってしてるものだろ」
「ところがどっこい、発酵食品ってのは柔らかくなるだけじゃなくって、固くもなるの。鰹節はエデンじゃ世界一硬い食材だったんだかっらね」
「マジか」
「マジです」
「それじゃぁ、この場所でその鰹節が作れるの?」
「作れるように改造します。機材を一から作っていきます」
「……言いにくいんだけどさ。それなら今日カツオをもらってくる必要はなかったんじゃないの」
「…………………………はっ!」
「どうすんのコレ」
カルマちゃんの手元には市場でもらってきた新鮮んなカツオたち。ハッキリ言って腐らせるのはかわいそうだ。
「う~~~~~ん。とりあえず倉庫にしまっておくかな。……いや、こうしよう。」
「お邪魔しま~~す。カルマさんいますか」
「あっ、テクスチャちゃんいらっしゃい」
工房へ伺うようにやって来た客人にカルマちゃんが声をかけると。
「火ィィィィィィィィィィ。火がアアアアア。ちょっとカルマさんすっごい燃えてますよ」
テクスチャは半狂乱で叫びをあげていた。
無理もない。
建物の中で燃え上がる火柱。
俺様だって心配だ。
でも、
「これくらいの火力はないとね」
とのたまうカルマちゃん。
カルマちゃんは今カツオのたたきを作っているのだ。
具体的に言うと、カツオの身を藁を燃やして生み出した火で炙っている最中なのである。
「いいんですかこれ~~~~」
「もうちょっとかなぁ~~~。―――――ここ!」
テクスチャの叫びにのんびりと答えるカルマちゃん。と思いきや、炙っていたカツオを素早く用意していた氷水の中に放り込む。
「よし、ねぇテクスチャちゃんも食べていく?」
「そんなことより火を消して下さい。火をおおおおおおおお」
なんてことがありながら改めまして、工房内のテーブルの上には熱々のごはんんとカツオのタタキが並んでいる。
まぁ、遅めの朝食か早めの昼食か、そんな感じである。
「なるほど、このカツオという魚で新しい商品を創るのですね」
「そうそれが鰹節」
カルマちゃんは簡単にその説明をする。
「は……半年ですか」
「うん、本来それくらいかかるよ」
その簡単な説明にテクスチャがドン引いていた。
「そんなに時間がかかるものを作るってことは、冒険はいいのですか?」
「やるよ。そのために時間を短縮する機械を作るんだよ。」
「キカイ……ですか」
たぶんテクスチャはよくわかってないのだろう。
それでも。
「自分に手伝えることがあったらお手伝いします」
そう言ってくれた。
「ありがとう。それじゃぁ、とりあえずごはんにしようか」
そう言ってカルマちゃんはテクスチャと共にカツオのタタキを食べたのだった。
それからカルマちゃんの物作りが始まった。
もちろん工房に泊まり切っり。
お風呂には入らないはもちろん、食事も魔物の肉をジャッキーにしたものをかじるだけの生活。
手伝ってくれるテクスチャもドン引きのハードスケジュールでカルマちゃんは設備を作り上げていく。
そして一週間後、工房は見違えるような設備が埋め尽くす場所になっていた。
「どうだザック、テクスチャちゃん。見違えただろう」
ああ。、見違えた。
あの可愛いカルマちゃんが髪はぼさぼさ、服はドロドロになって高笑いしていることに見違えた。
それでも。
それだけのことをやって、何もなかった工房は見違えるほどに綺麗な工房になっていた。
「ふふん、まだっできたばかりだから年季が感じられないのが残念だけど、性能は十分だからね」
そういうカルマちゃんの言う通り、設備はどこかの実験室のように綺麗で汚れが見当たらない。
汚れてるのはカルマちゃんだ。
「それじゃぁ早速鰹節づくりに―――――」
「それより先にお風呂だね」
「そうですね。お風呂ですね」
俺様とテクスチャとの間で意見が一致した。
「はい。そんなの鰹節作ってる間に入れば――――」
「あ~~~~、はいはい、食べ物作るんだから体はキレイにしましょうね」
「そうですよカルマさん。カルマさんが汚いとせっかくの商品まで汚く見えますからね」
「放せ~~~~~~。お風呂くらい自分で入れる~~~~~~~」
問答無用。
テクスチャと共にカルマちゃんをお風呂に放り込んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます