第1話ー7

「それじゃあ、明日はこの3人で観光するということでいいかしら」

「OKです」

「その3人にボクって入っていますか」

「もちろんよ」

「ちょいちょいちょい、ちょぉっと待ってよお嬢さん方。それじゃあ俺様が数に入ってないんじゃなぁいのぉ」

「入ってないよ(キッパリ)」

「がーーーーーーーん。そんなぁ~。カルマちゃん御無体だ~。俺様を置いて出かけるなんてあんまりだよ~」

「大丈夫だよ置いてかないよ。ただ、ザックは人じゃなくて個だもん」

「カルマちゃんの中で俺様ってそういう認識なの」

「ザック、貴方は私の武器であり家族であり友である。――――だけど貴方は人じゃないのよ」

「がが~~~~~~~ん。俺様のセリフがカルマちゃんにパクられるなんて。しかも人格否定」

「いや、人格否定はしてないよ」

「人の格と書いて人格。人じゃないと言われた時点でそれは人格否定だよ」


 まさかこんなところに来て俺様とカルマちゃんの仲に亀裂が入るなんて、俺様まったくの予想外。

 どうするどうする、ありえないよ。

 このまま俺様達の仲がドンドン離れて行って俺様の存在意義が無くなったら?

 もしもカルマちゃんが俺様以外に新しい武器を作ったら。

「私、今日からザックなんかより格好良くて高性能な新しい武器と生きていくわ。左様ならザック。あなたは分解して新しい彼のパーツになってもらいます」

 とか何とか言われたら本当にどうしよう。

 そうなったら――――

 そうなってしまったら――――

「お~いおいおい、目から涙が止まらないぜよ。俺様目ないけど」

 もう泣くしかなかった。


「あ~~~、悪い悪い、ザック君も入れて明日は4人で観光しよう。なっ、だから泣くな」

「……ぐすん。俺様仲間外れじゃない」

「仲間ハズレにしないよ」

 そう言って俺様を慰めてくれるトーンが天使に見えた。

「ごめんね~~。いつもザックにはからかわれてたからそのお返しのつもりだったんだけど、まさか泣くほどショックを受けるとは思わなくって。大丈夫だよ。ザックは私の大切な家族なんだから人格否定なんてしないよ」

 カルマちゃんもそう言って俺様を抱きしめて慰めてくれる。

「カルマちゃん、カルマちゃん、俺様を捨てて新しい武器に乗り換えたりしない」

「しないしない」

「俺様を分解してパーツをリサイクルしたりしない」

「そんなことしたりしないよ」

「カルマちゃん。俺様を魔改造してスーパーパワーアップさせたりしない」

「大丈夫、そこはモリモリしていくよ」

「えっ、するんですか」

 カルマちゃんのセリフにテクスチャが驚いていた。

 しかし、そんなのはお構いなしに。

「カルマちゃーん」

「ザック~~~」

「それでこそ俺様のカルマちゃんだ」

 俺様とカルマちゃんは光り輝く世界で抱き合った。(気持ちの上で)

「にんにくマシマシの改造が楽しみだな」

「俺様、ラーメンじゃないんですけど」


「それじゃぁ改めまして、明日はこの4人で観光しましょう。いいですね」

「「「はーーい」」」

 とトーンがまとめてくれた。

「それじゃあ明日までどうするかだけど……」

 カルマちゃんがつぶやくと、「はい、はーい。」とテクスチャが手を上げて来た。

「それならボクの行きつけの宿屋を紹介――――」

「そのアンタの行きつけの宿屋、先週に店主が引退して宿をたたんだわよ。今じゃあそこ葬儀屋になってるはず」

 テクスチャに容赦なくつきつけられるトーンの言葉に、テクスチャはピシリと固まった。

 そして、ギギギと首を動かしてトーンの方を見ると。

「……マジ?」

「マジよ」

「ノーーーー。それじゃあぼくは今日何処で寝ればいいんですか」

 テクスチャは頭を抱えて叫んだ。

「どこか別の宿屋を探しなさいよ」

「ボクにそんなコミュ力があるわけないじゃないですか」

「ハッキリ言うわね。なんならうちに泊まってく」

「高いじゃないか」

「トーンさん、友人泊めるのにお金取るんですか」

 カルマちゃんが意外ときついことを言う。

「いやいやそう言うことじゃないのよ。私は店に住み込みなのよ。で、それとは別に、ウチの商会旅館経営もやってるからそっちに泊まったらって」

「ああ、なるほど」

「でもそれがものすごくお高いんじゃないか」

「そりゃぁこの町でも1・2を争う高級旅館だからね。」

「へぇ~~、そうなんですか」

 おっ、カルマちゃんが珍しく研究以外のことに興味を持たぞ。

「それならご飯も美味しいんだろうなぁ」

 あっと、そうか食い意地も張っていたんだっけ。


 「どうする?」って聞いてくるトーンに店の奥から店員の一人が出てきてトーンに何か話しかけた。

 少し離れてから店員と何かを話してから戻って来たトーンがテクスチャの肩を叩いて告げた。

「あんた、タダでうちに泊まっていいってさ」

「ホントに」

 嬉しそうにするテクスチャからトーンがカルマちゃんの方を向くと。

「カルマさんもどうぞ。どうやら私たちを助けてくれたお礼を女将がしたいらしいので、ぜひうちに泊まっていてください」

 なんと、棚からぼた餅。

 今日の宿がちゃんと取れた。

 またカルマちゃんは公園でテントとかしそうだったから助かる。

「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいます」

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