第1話ー3

 突如襲ってきたフードをかぶった魔術師は一緒に仕事をしたこともあるテクスチャだった。

 まぁ、俺様はつぶやき声で分かってたけどね。

「テクスチャちゃん、どうしてここに」

 カルマちゃんが質問をするとテクスチャは気まずそうに。

「ちょっと里帰りをしようと思って旅に出たんですけど」

「とか言って、ホントはカルマちゃんを追いかけて来たんじゃないの」

 俺様がちゃちゃを入れると。

「いえいえいえ、そんなはずないじゃないですか」

 と言って、顔を真っ赤にして振り乱す。


 知らない人のために言っておこう。

 このテクスチャというやつ、最初に会ったときはカルマちゃんがいくらコミュニケーションを取ろうとしても邪険にするだけのツンキャラだったのだが、カルマちゃんに助けられてカルマちゃんの体の事情を知ってから――デレた。

 俺様が壊れている間、カルマちゃんの腕がちぎれているからと世話を焼きまくるほどにデレていた。

 カルマちゃんの腕がくっついてからも世話を焼きまくっていた。

 そして俺様が再度目覚めてから聞いたことだが、何とコイツお風呂の世話までしてたとか言うじゃないか。

 それを聞いて俺様怒りゲージがマックス。

 燃え上がるんじゃないかと言うほど赤くなってそれはもう怒り散らしたものだった。

 でもね、その後一緒にお風呂に入って俺様の怒りは収まった。

 だって、テクスチャの奴ついてなかったんだもん。

 そう、おちん〇んが付いてなかったのである。

 俺様としたことが~~~、女の子を男と勘違いしてちゃったわけですよ。べらんめ~~。

 しかしこいつも一人称がボクだったり、おっぱいがペタン子だったりするから勘違いしちゃうのも仕方ないやろがい。


「それで、なんでカルマちゃんを攻撃したのだよ。カルマちゃん相手じゃなかったらフツーに危なくなかったさっきのぉ」

「く、相変わらず絡み方がウザいなザックカリバーは」

 俺様がちこーっと顔を近付けて、俺様顔ないけど、詰め寄ると。

「すみませんでした。カルマさんとは知らずに盗賊たちの残りと思って攻撃してしまいました」

 そう言って素直に頭を下げるテクスチャ。

「それって、テクスチャちゃんも盗賊を退治してたの」

「はいそうです」

「お揃いだね」

「はい~~~~~~~~」

 嬉しそうだなテクスチャの奴、顔がとろけているぞ。

「まぁなんだ、それで商隊の方は無事なんだな」

「大丈夫ですよ~。ボクがきっちりやっつけておきました。それで1人盗賊に追われていった女性がいると聞いて助けに来たのですが――」

 そう言いながらテクスチャはジト―とした目をお俺様達の後ろに向けた。

「追われた女性って君だったのか、トーン」

 そう声をかけられた後ろにいたトーンはさっきのしおらしさはどこかに行って、腕を組んで強気に鼻を鳴らした。

「誰かと思ったら弱虫テクスチャじゃない」


「お2人はお知り合いなんですか?」

 カルマちゃんの質問にテクスチャが答える。

「はい、一応幼馴染というやつになります」

「あら、テクスチャったら私以外にそんな風に話せるようになるなんて変わったわね」

「そういうトーンこそ1人で逃げちゃうなんて変わってないよね」

「うぐ、いやあれは「私が引き付けるからその間に皆は逃げて」って言ったんだけど3人しか釣れなかったのよ」

「よく言うよ。昔から何かあれば人に意識が向いてるうちに1人で逃げ出してたくせに」

「言うようになったじゃない」

「へっへーん。これでもボクだって成長してるんだから」

「あら何処がですの。真っ平のままじゃないですか」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ、勝手に触るな~~~」


「おやおや仲が宜しいと思いませんかザックさんやぁ」

 お歳寄りみたいに言うカルマちゃん。日本茶があったらズズズゥッと飲んでそうな感じだ。

「まぁ、気の置けない喧嘩友達って感じかな。――おいおいお2人さん、痴話げんかはその辺にして――」

「「痴話喧嘩じゃない」」

 ぎゃあぎゃあ罵り合っていた2人が、俺様が口をはさんだとたん声をそろえて否定してきた。

 息ピッタリじゃないか。

「そんなことより、商隊の馬車迄行こうぜ。向こうも心配してるんじゃないか」

 そう俺様が提案して何とか2人は落ち着いたようだ。

「そうだね。早く戻ってベーカリーの町へ向かおう。」

「この盗賊たちはどうしますか」

「ほっていってもいいけど、下手な死に方して魔物になられても困るから持って帰るか」

「じゃあだれが持ちますの」

 テクスチャとトーンが互いに見つめ合う。

「「最初はグー」」

「あ、ソリがあるから私が引っ張て行くよ。」

 じゃんけんを始めた2人をよそに、カルマちゃんはポケットから取り出したソリに盗賊たちを雑に載せていく。

「ぎゃふ」

「へげ」

「だふんだ」


 それから少し離れた場所に峠の街道があって、そこに2台の馬車が止まっていた。

 そしてその周りには20人ばかりの盗賊と思しき奴らがフン縛られて転がっている。

「ああ、魔導士様御無事ですか」

「はい盗賊たちもこのように捕まえました」

「おおぉ、トーンも無事だったか。して、そちらの方は?」

「この人がトーンを助けていたボクの大恩人です」

「そうですか」

 フードをかぶりなおしたテクスチャが商隊の代表と思われるオジサンに礼を言われている。

「それで、ボク達もベーカリーの町に向かうので宜しければ同行させてもらえませんか。盗賊の残党がいるかもしれませんし」

「それはぜひ、こちらからお願いしたいことですよ」

 というわけで、迷子だった俺様達は無事に町に向かうことが出来そうだ。

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