第7話ー6

 ――ピーー。


 認証完了。


 「ザクカリバー」起動します。


―――――――――――――――――――――――――――――


 目が覚めて最初に目に入ったのは心配そうな顔だった。


「わ~~、動いた。良かった。ねぇ。自分が何者か分かる」


 自分を覗き込んでいるのは幼い少女だった。

 身長が140㎝くらいの長い金髪をツインテールにしている女の子だ。

 彼女が自分が何者か分かるかと聞いて来たのでそれに答える。


「はい、私はザックカリバー。私は貴方の武器であり家族であり友であります。――――マイマスター」


 自分がそう答えると目の前の少女の顔が歪む。

 眉根を寄せ、口を固くつぐんで何かをこらえるように瞳を揺らしている。

 それで自分が彼女を悲しませているんだということを理解してしまった。

 どうすればいいんだろう。

 彼女には笑顔が一番似合う。

 なのにこんな顔をさせてしまうなんて自分がふがいない。

 だから――――


「な~~~ん手冗談で~~~~す。マイネームイズ「ザックカリバー」。ザックと呼んでくれ。どうでした俺様の演技。しおらしい方がいい。今のままが良い。which is goodどっちがいい


「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」


 うん、見事に固まっちゃいましたねカルマちゃん。これはやっちゃたかな。

 そう思っていると、うつむいていたカルマちゃんがスチャッと万能工具を取り出した。

「ごめん。まって、謝るからそれだけは勘弁してくれないかな。ほんとのほんと、反省してますから。」

 しかしカルマちゃんはうつむいたまま万能工具を構えてじりじりと近づいてくる。

「やめって。許して。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


「もう、ザックのバカ。ザックのバカ。ザックのバカ」

「すみませんでした」

 プンスカ怒るカルマちゃんに俺様は土下座する勢いで謝った。

「だからそれ以上俺様の中を開かないで~~~~~」

 怒れるカルマちゃんは俺様の本体である赤い球体が付いたブロックの中身を開いていく。

 これが恥ずかしいのなんの、相手はカルマちゃんで俺様を創った母親ではあるのだが、こうやって中身を覗かれるのは恥ずかしいものがある。

 人間で例えるといい年こいて着替えを覗かれたとか、いや、隠してたエロ本が見つかる感じか?

 何にしてもそんな恥ずかしさです。


「つんつん、ねぇザック、ここら辺違和感とかない」

「工具の先っちょが中に入ってきて変な気分」

「そういうことが聞きたいんじゃないんだけど」

「じゃあどういうこと」

「ザックの修理ついでに魔力に適応した材質に変えて、かつ、魔力の循環装置も付けてみたの」

「あっさり言ってくれてますけど俺様結構改造されてません」

「デザインもちょっといじってるよ」

「マジっすか」

 後で確認してみよ。格好良くなってたらいいな。

「それでどうかな?」

「う~む、今魔力を流しているのか」

「まだ魔力は流してないよ。そのうえで違和感は?」

「無いな。ってことはこれから魔力を流すのか」

「そのつもりだけどいい?」

 カルマちゃんはちょっと心配してます顔で訪ねて来た。

「うむ、大丈夫だ。漢ザック、ヘタレたりはしない」

「ザックってオトコなの?」

「そうだぞ~、ご立派な漢だぞ」

「それじゃあいっしょにお風呂入っちゃ駄目じゃない」

「……………………………………………………」

「フンス」

「……いえ、ソレは性別的な意味じゃなくて生きざまのことなのでカルマちゃんとのお風呂は問題ないと申しますか」

「……エッチな目で見てない?」

「もちろんです。そりゃぁカルマちゃんはキュートで魅力的ではございますが、このザック、決して邪な思いはありません」

「私に対してだけじゃなくて、他の女性に対してなんだけど」

「俺様武器なんでそんなこと全然ありませんよ」

 嘘です。

 ちょっぴり興味があります。

「まぁ、ザックを信じましょう」

 やったーー。って喜びたいけどちょっと罪悪感。


「それじゃあザック、入れるよ」

「ああ、ゆっくり、優しくお願いするな」

「それじゃあ行くよ。えい」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、ああああああ!」

「あぁ、ごめん痛かった。」

「はぁはぁ……、大丈夫、続けて。魔力が何なのか感じられるようになりそうだから」

「それじゃあ続けるよ」

 今までの簡易的なアタッチメントで魔力をどっかーーーんさせるのとは違って、俺様の本体そのものにカルマちゃんの魔力を流して継続的、かつ、安定した魔力運用を可能にしようとするための実験である。

 それがまたキモチイイ。

 カルマちゃんが俺様の中に入って来てるんだと思うと、もう癖になりそうだわ。

「なんだかザックが気持ち悪い」

 がーん。

 自業自得だけどなかなかショック。


 ちなみに実験は上手くいきました。

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