第7話ー5

「クリート、パ~~~~ス」

「はわわわわわわわわわわああああああああ。」

 ロッキーは担いで居たクリスをクリートに投げ渡して。

「ロッキーさん何してるんですか」

「嬢ちゃん、背中は任せな」

 キラッンと歯を輝かせながら言うロッキーは、仲間に向かって叫ぶ。

「お前ら~~~、ここは俺に任せて先に行け~~~~」

「ロッキーさ~~~~~ん」

「ロッキー、馬鹿かお前は」

 オレとカルマちゃんが叫んで罵倒するも、ロッキーは歯をキラッンと輝かせて笑う。

「馬鹿はお前達だろ。俺らのために1人で命張るなよ」

 1人じゃねーし。俺様とカルマちゃんの2人だし。

「それに俺達ならここから逃げ出すのは容易い。2人で一緒に皆のもとに帰ろうじゃないか」

「ロッキー、お前死ぬ気か~~~~~~!」

 俺様はたまらず叫んでしまった。

「すまん、ザックも入れれば3人だったな」

「そういう意味じゃね~よ。おまえ今から死ぬみたいなこと言ってんぞ」

「大丈夫だ。俺は死なねえ」

 またキラッンと歯を輝かせるロッキーは――

「俺、このクエストが終わったらライムさんにプロポーズするんだ」

 駄目だコイツ。もう逝ってやがる。

「ダメだよザックあきらめちゃ」

 そこでカルマちゃんが叫ぶ。

「私たちが諦めなければ生存ルートだってありえるはずだよ。あきらめずに戦おう」

「お、応。そうだな」

「なんだよザック、もうあきらめちまってたのかよ。俺と嬢ちゃんの実力なら何とかなるって。」

 こいつ、誰のための戦いだと思ているんだ。



「グランドスマッシャー」

 ロッキーの必殺技が炸裂する。

 仲間の皆はすでにお城から脱出して距離を取っているだろう。

 だから俺様達も逃げるために退路をふさがれないように戦ってきた。

 そしてこの技で人並みサイズの骸骨兵士たちを牽制して退路から脱出するところだ。


 てか、ロッキーの魔力はどうやら土属性だったようだ。

 大地を割り、岩石を隆起させて上下からの同時攻撃を行うパワーファイターだった。

 その技は殿の持久戦でありながら何体ものガイコツ剣士を砕いていた。

 カルマちゃんも片手ながらその圧倒的膂力で大物のガイコツ剣士を牽制し続けた。


「よし脱出だ」

 ロッキーの言葉にカルマちゃんはガイコツ剣士を押し飛ばしてから出口へと走って行った。

 お城から脱出して幾ばくかの距離を取ってからカルマちゃんはロッキーと共に足を止めて息を整える。

「ここまでくれば大丈夫だろう」

 そうロッキーがつぶやく。

 ダメじゃんそう言うこと言っちゃ。

 俺様がそう思っていると。

「嬢ちゃん、危ない」

 そう言ってカルマちゃんはロッキーに突き飛ばされた。


 突き飛ばされたカルマちゃんのわきをすり抜ける大きな剣。

 それはあの大物のガイコツ剣士のモノだった。

 そしてその剣はカルマちゃんを突き飛ばしたロッキーに当たって、ロッキーを吹っ飛ばした。

「ロッキーさん!」

 すかさず体勢を立て直したカルマちゃんは背中にロッキーをかばうようにガイコツ剣士との間に入った。


 うかつだった。

 お城の魔物はお城から出てしまえば追ってこないと勝手に思い込んでしまっていた。

 だが、よく考えてみれば湿地帯の魔物がダンジョンの影響でリーグの町まで来ていたのなら、ダンジョンの脅威はダンジョンの外にも及ぶはずだったのだ。

 それを前日に近くで野営したとき知ることができなかったことで、ダンジョンの魔物は外に出てこないと思いこんでしまっていたのだ。

 おかげで油断したところを襲われてロッキーがやられてしまった。

 怪我のほどは分からないがかなりのダメージを受けたはずだろう。


 ダンジョンから追ってきたのはこの大物のガイコツ剣士一体である。

 他に敵はいないようならば――

「カルマちゃん、別にコイツは倒してしまっても構わないのだろう」

「……ザック」

「ど派手にドカーーーーーンしようぜ」

「……それはザックが――」

「俺様がいいって言ってんだからためらわずに行こうぜ。な、カルマちゃん」

「……うん」

 カルマちゃんが俺様を握りなおすと、ガチャン!ジャキン!ガッコン!と音を立てて俺様の内部が駆動する。

 そしてアルものがアル場所へと装填された。

 それはカートリッジ。

 カルマちゃんがゴブリン退治の際に手に入れたゴブリンの巣のコア、その一欠けらを加工して作られた今はただ一発限りの切り札である。


 カルマちゃんは片手で俺様を構えってガイコツ剣士に挑んだ。

 剣げきを躱して足の速さで翻弄して、ガイコツ剣士の頭部の目の前に飛び上がって俺様を頭上に振りかぶっている。


 ここからは実験だ。

 実証できていない機構であるために上手く動作するか分からない。

 求める性能が得られないかもしれないだけじゃない、必要以上の性能を発揮するかもしれないのだ。

 だが、ためらってはいられない。

 すでに撃鉄はあげられた。

 後はそれを落とすだけ。

 ガイコツ剣士に振り下ろされた俺様は閃光を放ち魔力の爆発を起こしたのだった。


 ガイコツ剣士は打ち倒した。


 ピシリパシリという乾いた音がする。


 遠くから仲間が迎えに来る声が聞こえる。


 俺様目がないから見えないや。


 いや耳もないからもう言葉も聞こえない。


「……ザック」


 最後にカルマちゃんの声を聴いて俺様は砕けた。

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