第7話ー3

「ひゅ~~っ、まさかほんとにやるとは」

 ロッキーが口笛を吹いて驚嘆する。

「言ったでしょ~~。リンちゃんなら出来るって私には分かってたんだよ」

「こりゃ嬢ちゃんに続く大型新人だな。将来が楽しみだぜ」

 カルマちゃんとロッキーはそうはしゃぎながらリンに近づいていく。

「……あの陽キャ、やるじゃん」

 テクスチャが誉め。

「俺の出番はなかったな」

 とクリートが続き。

「私の出番もないですよ」

 と、クリスが締める。

 皆でリンの健闘を称えに向かった。


「てかお前らって仲良しパティ―なんだよな」

 改めて俺様が聞いてみると。

「そうだけどどうしたよザック」

「いやな、他の奴はパティー組んでたのは分かるけど、かけだしのリンはどういう関係だったんだ」

「ああ、それな。リンは元から冒険者志望で回収ギルドの下働きしながら冒険者の見習いやってたんだ。俺達はその頃からの付き合いで、リンが冒険者としてデビューするのに付き添いに来たんだよ」

「なるほどな、でもそれで未見ダンジョンの討伐か?」

「いやいや、俺らが気づかなけりゃ本隊に交じってたんだよ。で、あぶねぇーから先遣隊という形でずらして貰たわけだ」

「厄介な討伐ってそういう意味か。これ、ギルドもあまり情報の量は期待して無い方か」

「リンには言うなよ。俺らは名誉ある先遣部隊、なんだから」

「オケードーキー」

 そんな風にロッキーは説明してくれた。


 一応このパーティーに同行したことでこの世界の冒険者の魔物討伐の基本を見ることができた。

 リンの戦いを見ていて分かったことは、この世界では戦いとは魔力の削り合いになることだ。

 カルマちゃんはこの世界で戦う時力任せで戦っていた。

 それでは勝てないと科学技術を駆使した装備を用いて倒してきたが、その後にカルマちゃんが魔力に興味を持ったのはやはり天性のセンスからなのだろう。

 この世界では魔力は物理法則を凌駕する。

 それが俺様の出した結論だ。

 しかし圧倒的に秀でていたカルマちゃんの物理攻撃がこれを覆してきたのだろう。

 そして魔力を使った戦いでも相性の悪さを覆す工夫が存在するようだ。

 つまりこの世界には絶対に有利なものなど存在しないのだ。

 あるとすれば、状況を活かす知性だろうと俺様は考える。

 ならばやはり天才的な頭脳を持つカルマちゃんが世界の頂点に立つべきじゃないのか。

 ふふふ、バラバラになった13のコンテナ。こと、13の希望を用いればそれは容易いはずだ。

 はははははは、俺様のカルマちゃんがこの世界の王になるのも時間の問題だなぁ。

「ザック、なんか悪い顔してるよ~」


 その後も探索を続けてダンジョンを回て行く。

 出てくる魔物はどれもこれもリンが倒したのと同じ中身のないカラッポの鎧兵だ。

 その後はみんなで戦うことになったが、ほとんどがロッキーかカルマちゃんが1人で倒せるレベルだった。

 その為一階の探索はすぐに終わってしまった。


「さて、これからどうするか」

 エントランスの拠点に戻って来てからロッキーは皆に訊ねた。

「とりあえず一晩ここで過ごしましょう」

 クリートがそう提案してきた。

「今のところ弱い魔物ばかりで我々だけでも対処できていますが、奥の方はまだ分かりません。それに、出てきた魔物の見た目からもしかしたら夜間に力を発揮する可能性もあります」

 アンデット、オバケ系ってやつだな。

「あぁ、その可能性は十分にあり得る。その場合、出てくる数や種類も増えるかもしれない」

「それにはボクも同意見だ」

 ロッキーのセリフにテクスチャが相槌を打つ。

「ダンジョンの規模に対して魔物の数と魔力の強さがかみ合ってない。多分ボク達はまだこのダンジョンの真の姿を見ていないはずだ」

「そうだな。この予想が当たれば回復役のクリスに戦闘に出てもらうことになるが、それだとクリスへの負担が増えるだろう。そうなれば俺達ではダンジョンの攻略はできない」

 そこにクリスが意見を言う。

「私一人での戦闘が可能なレベルだとしても奥に何が待ち構えてい居るか分かりませんから、まず退路が確保できてるここで敵の様子を見てみるのがいいでしょう。実際にアンデット系が多ければ本隊にはその対策をするようにと情報を持ち帰るだけでも大きな意味があります」

「そうだな。大まかにはその路線でいいと思うぞ。嬢ちゃんはなんか意見とかあるか」

 ロッキーが黙って会議を見つめていたカルマちゃんにも意見を聞いて来た。

「そうですねぇ~、私はダンジョンには疎いので敵が出たら突っ込んで斬る、って具合しか思いつかないですね。――あぁ、ただ本番が夜かもしれないなら今からみんなで休憩ですか」

「そうだな。グループを決めて順番に仮眠だな」

「なら私はテクスチャちゃんと一緒がいいです」

「ええぇ~~」

 カルマちゃんの意見にテクスチャが嫌そうな顔をしていた。

 このガキ、カルマちゃんを嫌がるとかふざけんな。

 カルマちゃんは天使なんだ。悦べよ。

「じゃぁそう言うことで」

 ロッキーのまとめで皆それぞれ順番に休む準備に入ったのだった。

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