第6話ー7
「え~~、みなさん。これからダンジョン探索をしていきたいと思います」
朝、リーダーであるロッキーの言葉からミーティングが始まった。
「え~~、探索と言っても我々は本隊が来る前の威力偵察を兼ねて、ダンジョン入り口付近の魔物たちを倒していくだけなのでそんなに気張らなくていいです」
「そうなんだ、ボスとか倒さなくてもいいんだ」
「嬢ちゃん、ワクワクしてくれてるけど遠足気分でダンジョンのボスに挑まないでよ。さすがにこのメンバーだけで倒せるとは思わないし」
「はい」
「どうした嬢ちゃん」
「ロッキーはボスに挑んだことがあるのですか」
「ああ、有るぞ。とは言っても大規模パーティーの一員だったけどな」
「活躍はしましたか」
「ちょこ~~~~と、だけな」
「ふふん」
カルマちゃんはなぜか満足げに笑っていた。
さて、
ミーティングも済んで俺様達はダンジョンに入るために湿地帯に入っていった。
「そこまで深くないが足を取られないように気を付けろ」
最前列を行くロッキーがざぶざぶと葦のような植物をかき分けながら進み、後列に注意を促す。
水は大体膝くらいまでの深さだが、転んで草でも絡めば十分溺死してしまうだろう深さだ。気を付けなければ。
俺達が城に近づいて入り口を探していると。
ざば~~~~~~~~~~~~~!
と、水をまき散らしながらカエル型の魔物が現れた。
「アレはビア樽フラッグ」
「知っているのかカルマちゃん」
「うん、図鑑で読んだよ。アレはお肉も美味しいらしいけど肝臓が特に良いんだよ」
「食材としての話」
「肝臓は栄養価が高く肝臓にいい食べ物でもあるんだよ。特に油で揚げた唐揚げなんかは絶品らしくて、ついついお酒が進んでビア樽一杯空けちゃうことからその名が付いたんだよ」
と、魔物相手にテンションを上げるカルマちゃん。
「魔物だけどリーグの町の特産品なんだよ」
さよか。
しかし、町の特産品でもその大きさはかなりのモノ。
しかも地の利はあちらにある。
「や、ヤバいよ、こいつ人や牛を丸呑みにすることだってあるんじゃなかった」
とリンが若干怯えながら口走る。
「ここは任せて」
そう言ってカルマちゃんは1人で飛び出したのだった。
カルマちゃんの手足は今は水場様にチューニングされている。
水や泥に足を取られずに駆け出すカルマちゃん。
高周波をうまく使い水場などを踏み固めて足場にしているのである。
カエルに素早く近づいて俺様を振り抜く。
ズドン!と柄に響く衝撃が返って来る。
カエルの魔力が俺様の斬撃を受け止めたのである。
魔力とはカルマちゃんの研究では原子に似た性質だと言っていた。
詳しい話は省くが、魔力は物質に対して被膜やコーティングのようにして干渉を防いでしまう。
それを力ずくで突破することもできるのだが、正直言って割に合わない。
硬い物質は固い物質で削る、水圧で吹き飛ばす、など、汚れを落とすのにも効果的な方法があるように、魔力で守られた奴にはそれ相応の手段で対処するのが賢明であるのだ。
単純な方法はより強い魔力で相手の魔力を削ったり、吹き飛ばしたりするのが妥当だ。
「やっぱカエルには電撃だよな」
「でもそれだと水の中にいるみんなも感電しちゃうよ」
カエルとの距離を取って右左へとステップを踏みながら作戦会議。
俺様の提案にカルマちゃんが否を申し出る。
「なら早速魔道衝撃を試してみますか。」
「う~~~ん、いきなりどっかーーーーーーんはもったいない気がするんだよね」
そのもったいないは食材としてのあれですか。
「まずは魔力関係を物理でこじ開けてみよう」
以外にも脳筋な答えが返って来た。
カルマちゃんはどうやら出し惜しみするタイプのようだ。
「それじゃぁ、まずはヒートホークから」
「合点承知の助」
宣言通り、熱で対象を焼き切るために俺様の刃が赤く加熱されていく。
そしてカルマちゃんはカエルに突撃した。
水しぶきが俺様の体に触れて――
じゅううわああああああああああああああああああ!
と音を立てて、一瞬で蒸発していく。
蒸気を纏い振り抜かれる俺様の刃がカエルの横っ腹に炸裂する。
カエルの巨体は軽々と吹き飛んだ。
だが、カエルの腹から蒸気が上がりはするけど、俺様の刃は届いていないみたいだ。
カエルのツルリとしたお腹には傷一つない。
「ダメだね。焼き切れないよ」
「温度をもっと上げてみる」
「それだと倒せても食べられなくなっちゃうじゃない」
ハイハイ、食欲優先ですね。
「しょうがない。魔力衝撃試してみようか」
「最初はちょっとずつだからね。いきなりフルスロットルでどっかーーーーーんはやめてね」
「分かってまーす」
心配だから一応リミッターかけておこう。
――――
―――――――
で、結果から言うと魔力衝撃すげーな。
あっさりカエルの魔力の被膜を切り裂いて、その下の肉をぶった切ってしまったのだ。
さすがカルマちゃんの発明。すごいぜ。
ざっぱぱああああああああああああああああああ!
喜んでいたらすぐそこに2匹目が現れて大きな口を開けていた。
あっ、これ頭からパクンチョされるわ。
ズド!バコ!ドカーーン!
と思ったら横合いから火の玉が飛んできて、2匹目のカエルの頭を吹き飛ばしたのだった。
「まったく、油断大敵だぞ」
助けてくれたのはフードをかぶったテクスチャであった。
それを認めたカルマちゃんは――
「わーい、ありがとうテクスチャちゃーん」
と抱き着きに行ったのである。
「こらやめろ、引っ付くなよ。暑苦しい」
どうやら嫌われてはいないようだ。
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