第6話ー6
ダンジョン、そう呼ばれるようになったモノを目にするのは初めてである。
湿地帯と言われていたからもっと青々しいものだと思っていた。
しかしついたそこにあったのは。
「お城だね」
「あぁ、場違いなまでにポツンとあるお城だね」
カルマちゃんがつぶやき俺様が返す。
「私知ってるよ。こういうのをラブ―—」
「はい、だめ~~~。そこから先はカルマちゃんには早いです。それ以上言っちゃだめですよ~」
「は~~~~い」
なんておチャラけてみるけどその城は湿地帯に半分沈んでいるかのようなたたずまいの異様な雰囲気のお城だった。
実際青空の中、お城の上空だけが赤紫色に濁っていた。
「うっわ、湿地帯の水も赤紫になってるぞ。これ入って大丈夫なのか」
俺様がそう叫んだところ前に出た者が2人いた。
カルマちゃんとテクスチャだ。
カルマちゃんはニコーってテクスチャに笑いかけるけど、テクスチャの方はフードを目深にかぶってその奥から睨みつけるように視線を返していた。
「とりあえずこの水を調べてみるね」
カルマちゃんがそう言って湿地の水を汲んでると、
「……お前に魔力の判別ができるのかよ」
と、テクスチャが嫌味なことを言ってくる。
コイツ、さっきまで荷車の隅でうずくまって居たくせに、急にデカい態度取りやがって、何のつもりだ。
「私、魔力のことはまだまだだけど科学を使えば結構わかるもんだよ」
「――は?カガク?なんだそれ。そんなことよりボクが魔力を調べて安全を確認する。邪魔するなよ」
と、テクスチャもカルマちゃんと同じ様に屈んで水面に手をかざし始めた。
「わ~~~~。魔法陣だ。それで魔力を調べるの」
「だ~~、だから邪魔するなって」
やたらフレンドリーに絡みに行くカルマちゃんにテクスチャはツンケンして追い払おうとしている。
「カルマちゃん、邪魔してないで俺達の方も調べようよ」
「おっと、そうだねザック。それじゃあ私たちもやろうか」
俺様が促してカルマちゃんが調査のために機材をポケットから取り出す。
「――――――は。何それ」
とそこでテクスチャの方から声がかけられた。
「ねぇ、何なのソレどういうことなの」
「ほへ?これ、これは水質をチェックするための機材で――」
「そっちじゃね~よ。いやそっちも気になるけど、今ポケットから明らかに入らないような大きなものを取り出したよね」
「あぁ、コレ。これは四次元ポケットだよ」
「なんだよそれ!」
「え、分かんない⁉コレがジェネレーションギャップか」
違う。それジェネレーションギャップじゃない。たとえるならディメンションギャップ。文字どおり次元が違うんだよ。
「はっ、ハイこれが科学~。サイエンスパワーです」
「訳わかんないよ。なんなのソレ」
「いやこれは説明が難しいんですが――――」
「ふん。まぁいいよ。そっちにも人に話せない事情があるんだろ。だったら分かるよね。触られたくないことや踏み込まれたくない気持ちが。――いい、これからはボクに関わらないで」
「あ、――――うん」
「ホント訳わかんない」
「ねぇ、テクスチャちゃぁ~~~ん。魔力の使い方とか教えて」
「だぁぁぁぁぁぁ、抱き着くな。おまえほんとにわかってねえぇなぁあああああ」
カルマちゃんとテクスチャの調査で、湿地帯の水には毒とかはなく普通に入れることが分かった。
それを踏まえて、ダンジョンの調査と魔物退治は明日から行われることになり、今晩はダンジョンの外で野営をして過ごすことになった。
その夕食時での出来事だったのだ。
俺様はカルマちゃんの首から外されて、今は1人でカルマちゃんの席にいる。
「いやぁ~~、元気でいいなぁ~~」
隣の席に座っているロッキーがつぶやく。
「すみません、うちの母が騒がしくて」
「あぁ、違う違う。まぁ、そっちもいいんだけどさ」
ロッキーはグイッといっぱい盃を飲み干すと。
「テクスチャの奴がな、あんなに声を上げて騒いでるのが良かったってな」
「……何かあったのか」
「う~ん。あいつの角見ただろ。アイツはアレで差別されてきた。しかもついこの前たった一人の家族の母親を病気で亡くしちまってな。完全に塞ぎこんじまってたんだ。だから半ば無理やり今回のクエストに連れて来たところがある」
――そういやぁ、カルマちゃんも事故で家族を失ったって言ってたけな。
もしかしたら、その時の自分とテクスチャを重ねて見える部分が有ったのかもしれないな。
「ああやって、文句でも声を出していられたら元気も出るだろう。――ほんと、嬢ちゃんを誘ってよかったぜ」
なんか俺様も酒を飲みたい気分だが、俺様口が無いんだよな。
「ねぇねぇ、テクスチャちゃん。モノに魔力を通すコツってどうやるの」
「だぁ~~。そんなん普通分かんだろ。って、近い近い顔が近い。もうちょっと離れろ」
なんだかんだ言っても、テクスチャはカルマちゃんを振りほどき切りはしなかった。
この2人に友情が芽生えたらなぁ。と思う俺様だった。
ただし、友情な、友情。それ以上は認めません。
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