第6話ー1 魔力を調べよう。

 さて、魔力の研究だが――

「ザック、ザック、聞いて」

「ははは、元気が良いね。何かいいことがあったのかい」

 いつもカルマちゃんの胸元にぶら下がってるだけあって、カルマちゃんのことはよく知っている俺様。

 3日程風呂に入ってないからそろそろ怒らないと。

 出来れば毎日入ってほしいのだが。

「そんなことよりも――――」

 お風呂をそんなことと称するカルマちゃんから大きな発見が有ったのが伺える。

「何か面白い発見でもあった」

「うんうん、有ったよ」

 カルマちゃんは頭のツインテールをぴょんぴょん跳ねさせながら答えてくれる。

 いや~~、可愛いなカルマちゃん。すっごく嬉しそうだ。

「それじゃぁ、お風呂に入りながら聞かせてもらおうか」


 今は真昼間。

 1日で最も人がいない時間帯にお風呂に入りに来た。

 おかげでお風呂は貸し切り状態。他に誰もいない。だから遠慮なく話せるというわけだ。

「それでカルマちゃん。何が分かったんだ」

 俺様が訊ねるとカルマちゃんは膨らみかけの胸を張って誇らしげに答える。

「まず、強い魔物の体組織を調べることから始めたわ」

「ジャイアントやもリンやゴブリンだな」

「そうよ」

「しかし、研究のためとはいえゴブリンのチ〇コとか触らないでほしい」

「生体工学とか履修してたら見慣れたものよ。でも、ゴブリンのチ〇コって意外と小っちゃいのよね。あんまり繁殖能力とか高そうじゃない感じ」

「ロッキーが言ってただろ、アイツらは繁殖目的以外で人を犯すんだよ」

「そう、そこですよ」

 カルマちゃんは「いいところに気が付きました」と言いながら指を立てる。

「ではなぜ彼らは人を犯すのか、この疑問が後の疑問のヒントになるのです」

「ゴブリンどもが人を犯す理由か――」


「続いて調べたのがザックに観測してもらっていたゴブリンメイジたちの魔法についてです」

「攻撃だけ見れば普通の物理現象だったと思うけどな」

「ところがどっこい。ですよ」

 カルマちゃんは体を洗いながらそんなことを言ってくる。

「あの時のワタシは「やもリンEX」を付けていました」

 あぁ、あのやもリンから作った物理攻撃を逸らす化粧水だか乳液だよな。

「あれにはやもリンの魔力が宿っていました。しかし、魔法は掠るくらいの距離でもその魔力を削っていたことが観測で分かりました。」

「それはつまり」

「魔力の壁には魔力で干渉することができる。ということです。」

「魔力による防御を魔力で無効化できるということか」

「逆に、魔力で魔法を防ぐこともできるということです」


「なるほど、魔力関係はそうなる訳だ」

「ふふふ、まだ甘いですねザックは。私はその先も解明しました。」

 体を流して湯船に浸かるカルマちゃんに俺様はどういうことかを訊ねた。

「魔力は原子に似た原子じゃないもんで出来ています」

「ん?」

 カルマちゃんはお湯を手で弄びながら、

「原子は素粒子でできていますよね。魔力もまだ観測出来てませんが、仮に言うと魔素粒子というもので出来ているようなモノなんです」

「それって分かったって言えるのか」

「言えますよ。原子は素粒子たる電子の数でその違いが生まれています。魔力もどうやら同じくそのもとになる粒子の数で性質を変えているみたいですね。」

「なるほどな。だがなカルマちゃん。そう言われるとどうしても思い当たることがあるんだが」

「お、流石ザック気が付きましたか」

 カルマちゃんは手のひらで水鉄砲を作りビュッビュッと水を飛ばしながら返してくる。

「分子だよな」

「そうですよ。原子にはそれぞれ違いがあるけど、それ以上に原子同士の結びつきで生まれる分子があるのです。それが魔力の属性です」


「カルマちゃん、それだと魔力の属性が少なすぎるような。」

「何を言いますか、科学だってパラケルススの時代は四大属性とか言ってたんですよ。単に分類が追い付いてないだけです」

「なるほど」

 俺様も詳しくはないけどプラハの錬金術師もこんな感じから科学を発展させてきたんだろう。

「それでカルマちゃんはこの魔力を――」

「もちろん研究します」

「ですよね~~~~」

「安心してください。ザックもちゃんと魔力を付与してあげますからね」

 カルマちゃんはそう言って、素肌の胸の部分でペンダントの俺様を抱きしめてくれた。

「…………カルマちゃん、魔力もいいけど、13の希望も忘れないでよね」

「はっ、そうでした。あれらを見つけてエデンの技術でこの世界を征服するのが夢なのに」

「カルマちゃん、し~、し~」

 どうやら誰にも聞かれてはいないようだな。

 カルマちゃんの夢は世界征服。

 これは俺様だけが知っておくべき秘密だ。

「とりあえず、星が落ちた日の厄災が俺様達のコンテナのことだろうから14、1つは俺様達だから残り13を集めることが目的だな」

「でもその為にはこの世界の魔力を研究しないと。待っててね。必ずザックにも魔力を付けてあげるから」

 その気持ちは嬉しいがそれで無茶をしないでほしいものだ。

 なんだか嫌な予感がするんだよな。

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