第4話ー7

「この度は我々の落ち度で大変なご迷惑をかけました」

 そして「すみませんでした」とギルド協会の偉い人たちがそろって頭を下げる。

 その中にはあのお姉さんもいて、誰よりも深く頭を下げていた。

「あのあの、そこまでしていただくほどのことでもなかったですし」

 と、大人たちに頭を下げられてアワアワしてるカルマちゃんが止めるも。

「何をぉおっしゃるぅ!貴方様が勇者のごとき強さを持っていたからこそ無事であったのであってそこらの冒険者では何人犠牲者が出ていたか」

 ギルドのお偉いさんのオッサンも謝りたいんだろうが、カルマちゃんの肩を掴んで必死になってるのは傍から見たら犯罪臭がするぞ。

 と、どうやらそう見えたのは俺様だけでは無かったのか、オッサンは他の職員に引きはがされて、代わりにさっきのお姉さんが改めて謝りに来た。


「この度はホントにすみませんでした」

「そんなに謝られても困りますよ。それよりどういうことですか。本当は駆け出しには無理な仕事だったってことですか」

 カルマちゃんが頭を下げるお姉さんに「まぁまぁ」としながら訪ねる。

「だった、というよりなってしまったという方が正しいです。本来このクエストは依頼が来てからすぐに討伐してもらえるように報酬を追加したり、冒険者に斡旋したりするのですが」

「忘れちゃっていたと」

「はい。それで時間がたってしまっていたために巣が成長してしまっていたのです」

「ありゃりゃ、そう言えば村の人達もゴブリンの巣がそんなに大きいはずはないって言ってましたね」

「魔物に詳しくなければ巣が成長する速さなど知りませんから、たぶん依頼が受理されないのを楽観視していたのでしょう」

 そしてそれをそうとは知らずにお姉さんがカルマちゃんの出した条件に合う依頼だと思って回してしまった。というわけか。

「まぁ、過ぎたことはもういいですよ。私も村も無事だったんですから」

「ありがとうございます」


「それではライムさん。私研究がありますから失礼しますね」

「はい、またのお越しをお待ちしてます」

 カルマちゃんはクエストの報酬を受け取ってギルド協会を後にする。

 もちろん報酬には色が付いていた。

「それでカルマちゃん、これから研究に入るの」

「ソレもあるけど鍛冶場のおじいちゃんとの約束もあるから、先にそっちに行こうと思う」

 そう言ってとてとてとて~と街中を走って行くカルマちゃん。

 向かう先は町のはずれの方にある鍛冶屋が集まった区画、その区画の顔役がやっている鍛冶屋に直行したのだ。

「こんにちわ~。お爺ちゃんいますか」

「誰じゃい。ワシをジジイ扱いするのは」

 カルマちゃんが店の奥に声をかけるとドスの利いた声が返って来た。

「って、カルマちゃんではないか~。よう来てくれた」

 怖い顔をして出て来た爺さんはカルマちゃんの顔を見たとたん、ころりと破顔してでれでれの顔になった。

 それはまるで孫に会った頑固ジジイそのものだった。

 まぁ、カルマちゃんはカワイイから仕方ないよね。


「それでカルマちゃん、仕事は終わったのかい」

「はい、無事に終わりました」

「そうかそうか、良かったわい。しかしなかなかに早いものじゃな。あれか、カルマちゃんは凄腕というやつかのぉ」

「ははは、そんなことないですよ~」

 ははは、って爺さん笑ってるけど、カルマちゃんの戦果を知ったら目玉飛び出るんじゃないか。

「それでカルマちゃん。武器の作り方を教えてくれるのかな」

 爺さんは乙女のようにもじもじしながら聞いてくる。正直キモいぞ。

「それなんですけど、私の研究と並行してでは駄目ですか」

「研究?カルマちゃんは何の研究をしておるのじゃ」

「もともとは素材力学と機械工学、それと生体工学の研究をしてました。今は魔力を研究して素材力学や機械工学に生かせないかを研究したいんです」

「素材――?セイタイ――?ふむ、よく分からんがカルマちゃんは頭もいいんじゃの」

 そりゃもちろんだ。

 なんてったってこの世界よりずっと科学が進歩したエデンにおいて、最高の頭脳が集まる大学に12歳で院生をやっていたほどなんだからな。カルマちゃんマジ天才なんだぞ~。

「ソレでその研究は武器作りにも役立つのかのう」

「断言はできませんが上手くいけばより良い武器になると思いますよ」

「ならばよい。むしろ歓迎じゃ。――というか、ワシらが教わるほうなのじゃからカルマちゃんの事情の方が優先でよいのじゃぞ」

「ありゃ、そうなんですか」


 それから爺さんはお茶とお菓子を用意すると「少し待っていてくれ」と言って出ていった。

「カルマちゃんは人にものを教えるのは初めて?」

「うん、だからちょっとドキドキしてる」

「いいかい、カルマちゃんはこれから彼らの師匠になるんだ」

「おぉう、師匠。いい響きです」

「師匠になるためには威厳が大事だ。だからビシバシ厳しくいかなきゃならない」

「厳しく――」

「だが時には優しくしたり、上手くいったときは誉めてあげる」

「ふんふん」

「これを飴と鞭を使い分けるというんだ」

「それ知ってます。それなら眼鏡をかけた方がいいっですか」

 微妙に違う。けど、眼鏡のカルマちゃんが見たいのでそのままいこう。

「その通り」

 俺様は親指を立てて答えた。指ないけど。

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