第5話ー1 弟子が出来た。

 ゴブリン退治を終えたカルマちゃんは町に戻ってきてゆっくり一息、――――と見せかけて、さっそく次の行動に出たのであった。

 町の鍛冶屋の爺さんの頼みで武器作りを教えることになったのである。

 それに加えて魔力の研究をするのも並行して行うという。

 スローライフとは程遠い生活になりそうだ。これが若さか。

「何をおっしゃるザックさん。アンタの方が若いじゃろ」

 ずずーー、とお茶をすすりながら何故かおばあさん言葉で語るカルマちゃん。

「……カルマちゃん。俺様の心読めるの」

「いや、そこまでは分からんけど、ザック顔に出やすいし」

「俺様顔ないけど!」

「ザック、新しい顔だよ」

「つけなくていいから」

 なんて、漫才をしていたらさっきの鍛冶師の爺さんが戻って来た。


「すまん、待たせたかのカルマちゃん」

「いいえ~、ゆっくりさせてもらってます」

「おんっや、その子がいっとった娘かい」

「……幼いな」

 爺さんは2人の男を連れて戻って来た。

 1人はつるりとした頭の大柄な男。

 もう1人はぼさぼさの頭で顔が良く見えない小柄な男。

 年は爺さんより少し若いぐらいのオッサンである。

「武器作りを習いたがってるもんは意外と多いのじゃが、いっぺんに来ては迷惑じゃろうとワシを含めた3人に絞ったのじゃが、良かったかの3人分でも」

「いいですよ~」

 と、爺さんの申し出を安請け合いするカルマちゃん。

「おいおい、いいのかよそんな安請け合いしちゃって」

 俺様がこっそりと聞いてみると、

「バラバラに教えるよりもまとめての方が効率いいですし、それに人手は有った方が良いんですよ。モノ作りには」

「カルマちゃんがそういうならいいけど」


「まず改めてワシの自己紹介からしよう」

 そういやぁこの爺さんの名前も聞いてなかったな。

「ワシの名前はガッツ。鍜治場街の顔役をしておる。一応は生産ギルドのリーグ支部長でもある」

 ガッツと名乗った爺さんは豊かな口ひげを生やした頑固そうな爺さんだ。

 しかし、すでにカルマちゃんにデレデレなのはお察しの通りである。

「でこっちのデカいやつが――」

「どうも、ワッシはガテンと言います」

 つるりと禿げ――もとい、そり上げられた頭に筋肉ムキムキのボディビルダーみたいな日焼けした男がソレは丁寧に頭を下げる。

 3人の中で一番背が高いのに一番腰が低い。

「で最後のコイツが――」

「……どうも、ボッチです」

「ぶふうっ!」

「ちょっとザック」

 いかんいかん、噴いてしまった。

「すまない。それよりそれは本名なのか」

「……本名です。オレ、妖精の血が入ってるんですけどその部族の伝統の名前なんだそうです」

「すまないな。その名前を笑っちまって。」

「……いいっスよ。オレにはお似合いなんで。……しかし本当にペンダントが喋るんですね。武器にもなるんっスよね」

「カルマちゃん」

「うん、いいよ~」


 ビカーって光って、ザシューんと伸びてガキーン!と決まる。

 俺様の変身バンクに爺さんら3人から拍手喝采だった。

「……すごいっス。こんなの始めて見たっス」

「ワッシもだす。こんな武器を創れるなんてすごいだす」

 それはもう俺様鼻高々になりますよ。

 カルマちゃんは照れちゃってますが、悪い気はしてないみたいだ。

「ワッシらにもこんな武器を創れるしゃろか」

 少々訛りのあるガテンの言葉にカルマちゃんは頷いて答えた。

「うん。ザックと同じものは材料が特別だから難しいだろうけど、今までよりもすごい武器を創れるようにはするよ」

「どうじゃ、この娘の弟子になる気はあるか」

 爺さんが改めてカルマちゃんの弟子になるかをガテンとボッチの2人に問う。

「もちろんなるだす。ワッシ、お師匠様にいろいろ習いたいだす」

「……オレも、ぜひ弟子にしてください」

 と、2人ともそろって頭を下げて来た。

「ワシも含めてどうかよろしくお願いします」

 爺さんも孫ほど年の離れたカルマちゃんに頭を下げる。

「あわあわ、そんな風に頭下げないでくださいよ。」

 土下座もかくやの3人の頭の下げ方にテンパるカルマちゃん。

「そ、そうだ。3人には私の実験の手伝いをしてもらうってことでお相子にしませんか」

「実験?」

「わたし、今魔力の研究をしてるんです。それで作る武具に魔力とか込めたいなぁ~、なんて思ってるんですけど手伝てくれませんか」


 そしたら3人がぽか~んとした顔をしていた。

 もしかしてこの世界では武器に魔力を付与するのが当たり前で、この子何言ってんのってえ思われちゃってるかも。

 そうしたら弟子入りの話もなくなって、鍜治場からも追い出されて、ギルドにも恥ずかしいうわさが流れちゃうことになるんじゃないのか。

「な――――何言ってんですかお師匠様」

 あ~あ、やっぱりあきれられている。

「武器に魔力を与えるなんて聞いたこともないですぜ」

 あれ?

「うーん、でもクエストで闘った魔物は魔力を武器に宿して戦ってたやつがいて、すっごく苦戦したんだよ」

「なんだすかそれ。それどこのロードだすか」

「ゴブリンロード。クリの村で倒して来たよ」

「「「はぁあああああああ~~。」」」

 3人そろってアゴがガクンと落ちた。

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