第4話ー4
火の玉をサイドステップ躱す。
水の鞭を俺様で叩き落す。
石礫をしゃがんでやり過ごす。
横薙ぎの風の刃を飛び越える。
カルマちゃんは次々と飛んでくる魔法を躱しては前進していく。
「す、すごいじゃないかカルマちゃん」
「ふふん、同人のVR弾幕ゲームに比べたら、ならこんなのイージーモードだよ」
またゲーム知識ですか。
確かそれってイージモードが許されるのは小学生までじゃなかったですか。
まぁ、カルマちゃんは実際は小学生の年齢なんだけど。
それでもカルマちゃんはやすやすと魔法を躱していく。
途中に奇襲してくるゴブリンを俺様が注意するけど、必要ないんじゃねぇかと思うぐらい的確に対処する。
結果、カルマちゃんはやすやすとゴブリンたちの群れに肉薄して、ゴブリンメイジごと俺様で一掃してしまった。
「ふんぬらばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
カルマちゃんがゴブリンたちを虐殺していると、一際野太い声とともにこん棒が振り抜かれてきた。
カルマちゃんはそれを俺様の柄で受け止めるも、ずざざざ~~、と後退させられた。
「ふしゅ~~」
棍棒を振り抜いたのは上半身だけをコアから這い出してきた巨大なゴブリンだった。
ゴブリンは140㎝のカルマちゃんよりも小柄な緑色の体をした魔物である。
人型の魔物としては最弱種とされているらしいが、弱いからだからこそだろうか、その数はネズミのように増えるという。
しかし、そんなゴブリンでも数を増やすだけではない。成長したゴブリンの巣は多様性も生み出すとのことだった。
土地の穢れが溜まるとゴブリンが生まれやすくなり、ゴブリンの影響でさらに土地が穢れる。そうなるとコアも成長してホブゴブリンやゴブリンメイジ、ゴブリンライダーなどを生み出し始める。
中でもゴブリンロードなんかが居る巣はダンジョンと言って差し支えの無い成長をしていて、冒険者の中では討伐隊を組織するほどに危険なものなのであった。
そのゴブリンロードがカルマちゃんの目の前で生まれ落ちたのである。
ゴブリンロードはカルマちゃんに倒されたゴブリンから立ち上る黒いモヤ、俺様の観測からは闇の魔物に似た力が観測されているので、これは魔力なのだろう。これをどんどん吸い寄せて取り込んでいく。
「カルマちゃん、コイツ周りの死体から魔力みたいなのを吸い込んでる」
俺様の意見にカルマちゃんは、
「ソレは土地の穢れとかいうやつかもね。そう考えるとゴブリン何十体分なんだろう」
若干額に汗をかいたカルマちゃんが答える。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ゴブリンロードは咆哮をを上げると、手にしたこん棒でカルマちゃんに襲い掛かて来た。
棍棒の一撃をカルマちゃんは正面から受けて立つ。
ガキャァァァン!という甲高い音が響いて互いに弾かれる。
「おいおい、マジかよ。俺様はタングステンも含んでるんだろ。なんであのこん棒は無事なんだ」
「多分魔力の効果――っ!」
ゴブリンロードに気を取られがちだがまだ小さいゴブリンが残ている。それが横から攻撃してくるのである。
カルマちゃんは囲まれないように素早くバックステップで回避しながら距離を取る。
「ザック、戦闘モードに移行。」
「合点承知の助」
俺様は観測モードから戦闘用の機能を発揮するモードへと変化する。
出力の向上と俺様のテンションに合わせてハルバートの表面に赤い模様が浮かび上がる。
それと同時にカルマちゃんの手足からも低いうなり声のような音が響きだす。
俺様達はまだゴブリン相手に本気を出していなかったのだ。
その低い音に獣のような威圧感があったのだろう。
数匹のゴブリンたちが気おされている。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
そのゴブリンたちを鼓舞するかのようにゴブリンロードが吠え立てる。
その耳障りな音に顔をしかめながらカルマちゃんがつぶやく。
「ザック、ソニックモード」
その指示と共に俺様はすぐにその機能を解放する。
そして爆発的な加速でカルマちゃんはザコゴブリンに肉薄する。
やもリン戦で見せた金色の稲妻がまた走ったのだ。
通常のゴブリンもゴブリンメイジも関係なくカルマちゃんはあっという間に倒してしまう。
これでも最大出力ではない。
俺様とカルマちゃんの義肢はシステム的に連動されるように作られている。
カルマちゃんは戦闘機動に意識を割くことで、代わりに義肢の出力調整やカルマちゃんの生身の部分のバイタルチェックなどを俺様が担っているのである。
だてに喋れるわけじゃないんだぜ。
残るはゴブリンロードのみとなった。
仲間をやられて怒り狂うゴブリンロードに、カルマちゃんは俺様をくるくる回してからビシッと刃を突き付けるように構えて不敵に笑う。
「と、恰好を付けたけど、こいつは結構強いと思う」
「そうだろうね。俺様が計測してた限り魔力が段違いだ」
俺様の答えにカルマちゃんは「う~ん」と考えて、
「それってどういう風に」
「簡単に言うと密度だな。サーモグラフィーってあるじゃん」
「うんうん」
「あれで例えるとゴブリンとかが温度低いのにこいつは真っ赤っかってところだ」
「あの闇の魔物と比べても?」
「断然コイツの方が強いね」
「そっか、じゃあ気合い入れていかないとね。」
改めて俺様を構えなおすカルマちゃん。
そしたら会話中に突っ込んできたゴブリンロードが目の前で棍棒を振り上げていた。
「「あっ」」
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