第4話ー3
前回、可愛らしくアニメのOPのように女の子ジャンプでこぶしを振り上げたカルマちゃんは何かをぐしゃりと潰して、頭から液体をひっかぶった。
「うえ~~。なにこれ~、ぬるぬるする~」
と謎の液体が体に絡みい付いたカルマちゃんがうめく。
「カルマちゃん。体に異常はない」
「気持ち悪い以外にないよ。ザック、これが何かわかる」
「待ってな今スキャンするから」
俺様はすぐにカルマちゃんの全身をくまなくスキャンした。
それこそ頭のてっぺんから足の先まで。
カルマちゃんに付着しているのは青く透明の粘液である。
成分のほとんどが水なのだが、水の中に粘性を与えるものが含まれているらしい。
その成分が――
「どうやら動物性の粘液みたいだね」
「えぇ~、それって唾液とか汗とかそんな感じの奴だよね。エンガチョ」
と、すっごく嫌そうな顔をしていた。
「ただ、その粘液自体に生体反応があったから多分スライムってやつだね」
「スライム!」
途端に嬉しそうな顔になるカルマちゃん。
「もう死んでるけどね」
「何で!」
次はショックって顔をする。
コロコロする表情が可愛いぜ。
「多分カルマちゃんのアパカァッで死んだんだよ」
「何で今巻き舌で言った」
「そっちの方がカッコイイかと思って。あと俺様舌ないけどね」
と冗談交じりで返していたら。
「今度ザックに舌を付けて冗談言ったら引っこ抜けるようにしようかな」
「ちょっとちょっと、冗談だよね」
「さぁ、どうでしょうねぇ~」
カルマちゃんは舌をべぇ~と出してからかってきた。
なにそれカワイイ。
「うわっ、ぺっぺっ、口に入った」
と口に入ったスライムを吐き出すカルマちゃん。
「カルマちゃんでもスライムは食べないか」
「私でもって何よ」
「何でも食べそうだったから」
「そこまでじゃありませ~ん」
「で、スライムはどんな味だったの」
「重曹の味がした」
「重曹か……たしかレモン汁で味が良くなるってデータがあるけど。」
「よし、持って帰って試してみよう」
「試すんかい」
「それで、何ですライムがアタシのアッパーカットで死んだの。なんか物理攻撃とか効きずらそうじゃない」
体に付いたスライムの粘液を採取して容器に詰めているカルマちゃんが聞いて来た。
「どうやらスライムには核があるみたいなんだけど、上から襲い掛かる時にカルマちゃんのアパカァッが運悪く直撃したみたいだね」
「ザックは気が付かなかったの?」
「うぐっ」
カルマちゃんから痛い指摘をされた。
高性能サーチ機能があると高をくくっていながらスライムに気が付かなかったのだ。
「え~と、言い訳をさせえてもらうとスライムの生体反応が虫みたいに小さかったんだよ」
「ふむ、これだけの質量があるのに」
「でも、核はちょっと大きい虫サイズだよ」
「ふむ、つまり生物としては虫レベルだけど大きな質量を操ると、……これは生きているやつを捕獲したいな」
また好奇心に火が付いちゃったかな。
「ふふん。スライムさんでてこーい」
カルマちゃんの希望は叶わず再度スライムと遭遇することはなく坑道の奥にやってきた俺達。
出迎えたのはゴブリンの巣と言って差し支えの無い数のゴブリンたち。
開けた場所の中央に紫色のもやがたつ明らかに穢れていると言える岩の塊があり、それを守るかのようにゴブリンたちが並んでいた。
「なんかちょっと違う個体もいるみたいだね」
「多分ゴブリンの亜種だろう」
「魔法とか使ってくるかな」
「嬉しそうに言うけど、魔法とか防ぐ方法が分からないんだから喰らわないようにしてね」
「OK~。それじゃあザックは観測モードで」
「え?戦闘機能は使わないの」
「多分大丈夫。それより魔法が使われたりしたらそれのデータを取る方を優先して」
「う~ん、分かったよ。けど、ヤバそうだったらすぐに俺様の機能を使ってよ」
「任せんしゃい」
そこからは戦闘と呼べるくらいにはゴブリンたちも頑張ったものだった。
ゴブリンの中に魔法を使える奴が居たのである。
ゴブリンメイジというやつだろうか。なんかインディアンのシャーマンみたいな恰好したやつらだ。
そいつらから火の玉、水の鞭、石礫、風の刃などが飛んでくる。
それを――
「ホップ、ステップ、ランランル~~~」
カルマちゃんは軽々と躱していく。
「次の風の刃、後ろに一匹いるよ」
「ほいっとな」
魔法と連携して襲い掛かって来たゴブリンをカルマちゃんは俺様でやすやすと一刀両断してしまう。
スライムには不覚を取ったが俺様の索敵ではあるが、ゴブリンの奇襲など通すわけがないだろう。
「しかし、やはり魔法は面倒だな」
次から次へと繰り出される多様な攻撃魔法。
ゲームで出てくるようなデバフがないだけましだが、この弾幕はなかなかに連携が取れていて隙がない。
その合間に小さなゴブリンたちが奇襲を仕掛けてくるのだ。
カルマちゃんは魔法を躱しながらゴブリンを切り裂いているが、肝心の巣には近付けない。
見れば巣と言えるコアからは時折ゴブリンたちがズルリと吐き出されている。
これではキリがない。
「ねぇ、ザック、データは集まった」
「ん?まぁ、そこそこ」
「ならもういいよね」
「は?」
そう言うとカルマちゃんは魔法の弾幕に飛び込んで行った。
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