第3話ー4
俺様とカルマちゃんが漂着したのは異世界の「リーグ」という町である。
とある王国の辺境伯、「ブランフィールド伯爵」の領地で3番目に大きな町であるらしい。
辺境の領地の中でも端にあるさらに辺境の町であるが、北東に大きな水源があり、豊かな水が川となって流れているため農業が盛んなのである。
また、西から北に向かって峻険な山があり、これが辺境の理由にもなっているのだが、この山にはいくつもの坑道が掘られていて、鉱物資源にも恵まれているのである。
その為、辺境であるものの統治は行き届いていてギルドをはじめとした組織も活発に活動している。
ゆえに、街道を女の子が1人旅をする事にも大きな心配事はない。――――はずだった。
「わ~~~~~~!」「きゃあああああああああああ!」そんな叫び声が聞こえてきたのはちょうど丘の窪みで、道の先が見えなくなっている場所だった。
「カルマちゃん!」
俺様は主に注意を促すために声をかけたが、
「――――――――っ!」
すかさずカルマちゃんは叫び声が聞こえた方に走り出した。
カッコイイなぁ~~~~。
誰かのピンチに迷わず走りだせるカルマちゃん、マジでカッコイイ。
そうカルマちゃんの胸元で思う俺様に、丘を越えたカルマちゃんと共に叫び声の元が見えて来た。
小さなキャラバンだったのだろう。
俺様が目覚めた最初の日に見かけた恐竜のラプトルのようなトカゲが繋がれた馬車――竜車が目に入った。
幌が張られた荷台は横転して繋がれたトカゲが混乱して騒いでいる。
荷車の向きからリーグの町へ向かう途中だったのだろう。
もう少しで町に着くところで不幸にも魔物に襲われてしまったようだ。
竜車から逃げ出したであろう人たちが、いかにもな魔物に襲われていた。
「――――祟り神か、アレ」
俺様の困惑した声などしかしお構いなしにカルマちゃんは駆け出した。
キュイィィィィィィィィ!という音と共に、戦闘モードに入った義体がカルマちゃんの体を一気に加速させる。
土煙を上げながら一直線に襲われてる人と魔物の間に突っ込むカルマちゃん。
その間にもペンダントだった俺様はハルバート――――長い棒に幅が広い斧状の刃が付いた武器――――に変身して、カルマちゃんの手に握られていた。
「チェストオオオォォォォォッォォォォォォォォォォォォ!」
カルマちゃんは魔物とキャラバンの人の間に走り込むと、間髪入れずに俺様を振り下ろした。
ズドン!
と、地面が揺れるほどの衝撃をもって魔物の頭部を打ち抜き地面に叩きつけた。
しかし魔物の勢いはすごいものだったため、地面を削りながらも止まらない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
カルマちゃんが踏ん張るが地面をえぐって後退する。
そしてようやく魔物の前進を受け止めたカルマちゃんはさらに気合を入れて押し返す。
プシュウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ。
と、カルマちゃんの四肢から蒸気が噴き出す。
「こんにゃろおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」
可愛らしい叫びと共に魔物をはじき返すと、すかさず俺様を振りかぶり、フルスイングで魔物を吹き飛ばした。
吹き飛ぶ魔物を目の当たりにして、追われていた人は助かったのかと安堵の吐息を漏らし、しかし、自分たちをかばう影があまりにも小さいことに疑問を持ったのだろう。
「――――あ、貴方は一体」
そう訊ねて来た。
振り返り、顔を向けたカルマちゃんは――。
「通りすがりのただの正義の味方です」
まさかのドヤ顔だった。
言ってみたかったんだね、カルマちゃん。
すっごいやり切った感を出して笑顔を浮かべるカルマちゃん。
「カルマちゃん。まだ終わってないよ」
俺様がそう叫んでカルマちゃんの注意を魔物に向けさせる。
地面を転がって行った魔物はすぐに起き上がって、カルマちゃんの方に赤い目のような物を向ける。
魔物は人間の手のようなモノが何本も蜘蛛の足のように生えている、黒い異形だった。
「気持ち悪いね」
「同感だ」
カルマちゃんは俺様を構えなおすと、
「こいつは黒いから多分闇属性だと思うんだ。だから――」
ビィユン。という音と共に俺様の刃が青白く光り出した。
「フォトンレーザーを試してみよう」
フォトンレーザーとは分かりやすく言うと光の刃である。
これは光の魔力を持つカルマちゃんの魔法――――ではなく、エデンの科学力を持つカルマちゃんが俺様に搭載していた機能のひとつである。
似た機能にヒートブレードがあるが、科学的なものよりもファンタジー設定の属性を考慮しての機能選択である。
魔物はカルマちゃんを捕まえようと腕の1本を伸ばしてきた。
カルマちゃんはその腕に俺様で斬りつける。
「ピイイイイイイイイギュウウウウウウアアアアアアアアアアア!」
魔物の腕が斬り飛ばされて、魔物から甲高い叫びが聞こえて来た。
斬り飛ばした腕が宙を舞って地面に落ちる。斬りつけた断面は「ジュウウウゥゥゥゥ!」という音と共に白い煙を上げていた。
高出力のレーザーで焼き切ったので、断面からは体液のようなモノは出てこなかったが、魔物本体の口から黒い粘液がこぼれる。
多分、強烈な痛みで吐いたのだろう。
「汚いなぁ」
俺様がそうつぶやくと。
「ザック、魔物とはいえ生き物にそういうこと言っちゃいけないよ」
と言いながらも、手心を加える気は全然ないカルマちゃんが俺様を振り回すのだった。
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