第2話ー2
「お、決まったのかい」
カルマちゃんの宣言にロッキーが訊ねる。
「はい、これです」
「なになに、『周辺の魔物調査要員の護衛。」か。これを選んだ理由は?」
「私はまだこの辺りの地理に詳しくないのでちょっと町中の仕事よりこういう誰かに付いて行く方がいいかと思いまして」
「なるほどな」
カルマちゃんの説明にロッキーが納得する。
「こいつならオジサンも付き合える。ライムさん、2人で受けていいですか。」
「もちろんよ。それじゃあ手続きしましょうか」
そう言って昨日の受付カウンターに向かうお姉さん。
「ホントはこういう依頼書は掲示板に張られているもんなんだが、今日は特別だぜ」
「はい」
「普通は掲示板で仕事を探して受付で仕事の受注手続きをするんだ」
ロッキーの説明を受けながらカウンターにやって来る。
「それじゃあ冒険者カードを出してくれる」
受付についたお姉さんからそう言われて冒険者カードを差し出すカルマちゃん。
同じくロッキーも冒険者カードを取り出してお姉さんに手渡す。
「はい、与かりますね」
冒険者カードを受け取ったお姉さんはカウンターの中で何やら作業をする。
「――――あれってなんですか」
覗き込んでいたカルマちゃんがロッキーに訊ねる。
カルマちゃんが指さしていたのは何かの機械みたいなものだった。
俺様的にはスーパーやコンビニで使われるレジのようなものに見えた。
お姉さんはその機械のような物に冒険者カードを差し込み、何やら操作をする。
「アレは冒険者カードに情報をインプットする魔法の道具だ」
「なるほど」
カルマちゃんは分かったように頷いていた。
「カルマちゃん本当に分かってる?」
俺様が訊ねると、
「分かってますよ。ザックは私を何だと思ってるのですか」
と聞かれたので。
「子供」
と正直に答えておいた。
「むき~~。ただの子供が貴方を創れるわけないでしょう。いいでしょう。今日のクエストではモンスターが出たら容赦なく貴方を叩きつけてやります」
「望むところだ」
なんてやり取りをしていたら、
「はいどうぞ、これで仕事の登録はできたわ。」
と言って、お姉さんから冒険者カードが返される。
その冒険者カードをカルマちゃんはスマホのように操作していく。
おお、なるほど。
確かに冒険者カードで、選んだ仕事、クエストの詳細が見れるようになっていた。
「集合は町舎前、時間はまだ余裕があるな」
ロッキーがそう確認して「どうする?」と聞いてくる。
「そうですね、ならば協会内を少し見ていきたいです」
「ならば案内しよう」
「ここが報酬を受け取るカウンターだ」
まずロッキーが案内してくれたのがここだった。
協会の建物の出入り口からやや奥まった場所にあるのは報酬用のお金を管理する為だろう。
「依頼を受付で受けていた場合は冒険者カードを開示して報酬を受け取る。昨日みたいな突発的なものなら領収書などで換金できるからな」
「ここは見合い室なんて呼ばれたりするパーティーを組みたい奴が集まるフロアだ。受けたい仕事があるが戦力が厳しい、なんて時はここで仲間を探すのがいいぞ」
次に紹介されたのはカジノみたいになっている場所だ。
多分手持無沙汰な冒険者が暇をつぶせるようにしているのだろう。
こういう場所はカルマちゃんにはまだ早いと思うぞ。
「ここは飲食スペースだ。冒険者がたまり場にする場所第二弾、と言ったところだな。値段も手ごろで量も多い、冒険者向きのメニューだが、たまに冒険者以外がわざわざ食べに来るくらいに味もいい」
「ほぉぉぉぉぉぉぉ」
意外と食い意地の張ったカルマちゃんが目を輝かせる。
実際いい匂いがしてきて旨そうだ。――俺様舌ないけど。鼻もないけど。
「せっかくだし腹ごしらえしておくか」
「しましょう。ぜひしましょう」
ロッキーの提案に、やや食い気味で答えるカルマちゃん。
朝ごはん足らなかったのかな。
と、いう訳でロッキーはハンバーガーだろう食べ物を、カルマちゃんは骨付きマンガ肉のプレートをそれぞれ購入してきた。
「嬢ちゃん、朝からがっつり行くねぇ」
「へっへっへ、こんなの見たら食べないわけにはいかないじゃないですか。憧れのマンガ肉。まさに冒険者の飯」
ちょっとあきれ気味のロッキーに犬みたいによだれを垂らしながら答えるカルマちゃんの目は、それはもうキラキラ――――いや、むしろギラギラしていた。
瞳の中に肉という字が見えそうなほどだ。
「それではいただきま~~~す」
カルマちゃんは両手を合わせると勢い良く肉にかぶりついたのだった。
「いや~、昨日もいい食べぷりだったけどあらためてよく食べるなぁ。あれかい。嬢ちゃんは肉食系ってやつか」
「おい、ロッキー。それは俺様達の故郷じゃ違う意味に使われるから。そんな風にカルマちゃんを呼ぶな」
と、何とはなしに言ったであろうロッキーに対して、俺様はカルマちゃんの名誉を守るために注意しておく。
「え?どれのこと」
「肉食系、ってやつですよ」
疑問を浮かべるロッキーにカルマちゃんが最後の肉を飲み込んでから答える。
「私の故郷では肉食系っていうのは男好きの女や、女好きの男なんかの、まあ節操のないとまでは言いませんが、異性との関係に積極的な人のことをさすんですよ」
「そうなのか。それは済まない」
「いいですよ。私肉食系ですし」
「「なにぃ~~~!」」
俺様とロッキーの声がハモった。
「冗談でーす」
カルマちゃんはそう言って笑いながら舌を出すのだった。
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