第2話ー3
「ところでアレは何です。」
ご飯を食べ終えてお茶を飲んでるところでカルマちゃんから質問があった。
カルマちゃんが指さした先には仕事の依頼書が張られている掲示板に似た、もう一つの掲示板だった。
そこには依頼書の掲示板のように人は集まってはいないけど、何かと紙がいくつも張られていて、かつ人目を引くようになっている。
「ああ、アレは手配書だ。あそこに乗ってるのはみんな賞金首だよ」
賞金首。
あれだろ、捕まえたらお金がもらえるというやつだろ。
「なんだかモンスターも人間も書かれているみたいですけど」
「そりゃぁそうだ。賞金首には人間もモンスターも関係ない」
カルマちゃんの疑問にロッキーがそう答える。
「人間の賞金首は皆犯罪者だ。それも極悪のな。賞金を懸けられた時点で
「そうなんですか」
「ああ、正直、メシが不味くなるから目立つ場所には張らないでもらいたいがな」
だが、認知してもらう為には目立つ必要があるのだろう。
――――見た限り、あんまり人気はないみたいだが。
「さて、そろそろ行こうか」
「はい」
ロッキーは何かを振り払うかのようにカルマちゃんに声をかけた。
カルマちゃんも深くは踏み込まず、2人はギルド協会を後にして仕事の集合場所へと向かった。
さて、俺様達は町の中心部にある町舎前にやって来ていた。
「結構な人が集まってますね」
カルマちゃんがそうつぶやくとロッキーが説明してくれた。「今回は結構広く調べるらしいから何組かのグループに分かれてやるらしい。だから護衛役も数が必要だったみたいだな」
「なるほどー」
納得したカルマちゃんを連れてロッキーは今回の仕事のまとめ役に話しかけに行った。
「すんません。仕事を受けてきた冒険者です」
「ふむ、ならカードを――」
眼鏡をかけた白髪の学者風の男がまとめ役らしく、ロッキーとカルマちゃんの冒険者カードを確認する。
「何じゃ、そっちの子は新人か」
と、その男は無遠慮にカルマちゃんを眺めまわしながらのたまいやがった。
「こんな子供が役に立つのか?」
「大丈夫ですよ。黒毛魔牛を一刀両断できる強さです。」
「ほんとうかの~」
「まぁ、そう思われるだろうと思い自分が案内について来たのです」
「まあ、お守が居るならいいが。そう言うことならお前さんたちは同じグループにして置くぞ」
「ありがとうございます」
男は厭味ったらしくカルマちゃんを見下してやがる。
ぶっ殺してやろうか。
そう思っていたらカルマちゃんが前に出ていき。
「あの、初めてのお仕事ですが精一杯がんばります。よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「ふ、ふん。挨拶はちゃんとできるようじゃの。しかし、おぬしの活躍などないほうがいいんじゃがな」
と吐き捨てるように言う男。
にゃんだと~~~~。
俺様が文句を言ってやろうとしたら。
「ザック、護衛のお仕事なんだから活躍するような危険がない方がいいんだよ」
とカルマちゃんからたしなめられた。
なるほどそう言う意味ね。
その後、調査員と護衛の冒険者でグループ分けが行われた。
俺様達はあのいけ好かないリーダー格の爺さんのグループだった。
研究員は2人、これを5人の冒険者で護衛する。
これが5組存在した。
この人数で町の周辺を調査するらしい。
「歩いた限り町の外周部までは3㎞くらいかな」
とカルマちゃんがつぶやく。
「おい、オッサン」
「なんだいザック君」
「君はやめろ。それよりここより大きな町は近くにあるのか。」
「一応リーグの町はブランフィールド伯爵領では3番目の町だぜ」
「じゃあ、領主の居る町はどの規模なんだ。」
「どの規模って言われてもな。オジサンは土地屋じゃないから詳しくはないが、2~3倍ってところじゃないかな」
「なるほど」
俺様はそうつぶやきロッキーに礼を言って考えに耽る。
町は純粋な円ではないだろうが外周部まで3㎞ほど。
町の中央南寄りに北北東から南西に向かって川が流れていた。
そして俺達は北側に向かっている。
こちらには緑の生い茂る山々が広がっていて、川はこの山に沿うように流れているみたいだ。
ならば、街もこの川に沿って丸くなっていると思われる。
「ねぇ、ザック。やっぱり地図って買っといたほうがいいよね」
「それなら俺様が一度見ればコピーできると思うぞ」
むしろGPSが付いていたらと思うが、この世界には人工衛星なんて飛んでないから無理だろう。
「なんかそれズルくない」
「ズルくないよ」
「そうかな~」
「そうだよ」
と言ってあげるけど、カルマちゃんは納得してくれはしなかった。
さて、町から出た俺達は一応整備された道を通っていったん猟師たちが使う山小屋に向かった。
「ふむ、ちゃんと管理されとるようじゃの」
そう言う爺さんの言う通り山小屋は草木に覆われながらも、しっかりとしたたたずまいを見せていた。
「それではここを拠点に周辺の探索を行ていくぞ」
その爺さんの指示の元、俺様達は山に分け入ることになった。
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