第2話ー1 カルマちゃん冒険者になる。
カルマちゃんが冒険者になった次の日、カルマちゃんはギルド協会の前に立っていた。
「やぁ、カルマちゃん待った?」
「いえ、私も今来たところです」
カルマちゃんにロッキーが爽やかに話しかけた。
「お”い”。何デートみたいなやり取りしてるんっだ」
「こらザック。折角ロッキーさんが案内してくれるのにそんな言い方はないでしょう」
「ははは、いいさ、ザック君は妬いてるだけだろうからね。それだけ嬢ちゃんのことが好きなんだろう」
く~~~~。その分かってます感がムカつくぜ。
後ザック”君”と呼ばれると鳥肌が立ちそうだ。俺様肌が金属だけど。
俺様の嫉妬はロッキーに軽くかわされ、カルマちゃんは俺を軽くたしなめると、軽い足取りでロッキーの後を付いて行く。
冒険者ギルドに入ると朝も早いうちなのに結構な人手があった。
「こいつら全員冒険者か」
「そうね。みんな同じ職種ではないけど、新しいクエストの張り出しはほとんど朝に行われるのよ。いい仕事が欲しい人は朝早くに来るし、そんな冒険者と提携する人たちも朝からやって来るという訳なの」
「俺様はてっきり冒険者てなぁ昼まで寝こけて夜に騒ぐ奴らだと思ってたぜ」
「あら、そう言う人も多いですよ」
俺様にそう答えたのは昨日カルマちゃんの冒険者登録を行った――
「ライムさん。おはようございます!」
とたんにロッキーのテンションが上がる。
「今日はどうしました」
「アンタに用じゃないわよ。そっちの子。今日がデビューなんでしょ。折角だからよさげなヤツを見繕っておいたのよ」
「わー、ありがとうございます」
受付の姉ちゃんのおかげでカルマちゃんが喜んでいる。
グッジョブだ、姉ちゃん。
「ところで、カルマちゃんはこの世界の文字が読めたりするの」
「読めますよ。翻訳機の応用です」
俺様がこっそりそう聞くとカルマちゃんがそう答えてくれる。
「例えばあそこにある文字ですが、「トイレはあっち」って書いてあります」
「いや、そんなのどうでもよくねぇ」
「どうでもよくないです。お外でトイレに行きたくなったら大変じゃないですか。文字の翻訳ができるまで公園の隅っこでトイレをしなければならなかったりしたのですよ」
「それはどうもすみません」
そう言えばトイレって近代になってからやっと汎用化されて、中世では野ぐそ、野しょんは当たり前だったらしい。
確か何処そこでクソをしてはいけませんって法律があったのは日本の平安京ぐらいだったらしい。
「でもこの世界にはトイレがあるみたいじゃないか」
「……有料ですけどね」
マジか。
さすがは中世ファンタジー。
「それでどのようなお仕事があるのですか」
カルマちゃんは期待に顔をキラキラさせながらお姉さんに詰め寄る。
「とても気になります」
「ははは。やる気があって嬉しいわ」
そう言ってお姉さんは数枚の紙をテーブルの上に広げた。
「今日は初日だから町の近くで出来る仕事をチョイスしておいたわよ」
「ありがとうございます。ですが、町の近くじゃないお仕事もあるんですよね」
「そうね。ここリーグの街はこの辺りじゃ大きな町だから、近くの村々の問題や仕事もやって来るの。で、村によっては片道で数日かかるものもあるわね」
「そう言った依頼の方がやっぱり報酬は良いんですか。」
ちょっと、カルマちゃんがめついな。
それにお姉さんは「もちろんよ」と答える。
「ギルド協会ではそう言う遠い町の依頼なんかが受けてもらえるように追加報酬を出しています。その追加報酬は近くの依頼の報酬から手数料としていただいた分から支払われています。ですので近くの依頼をたくさんこなしていただければギルド協会が潤い、遠くの依頼に出せる追加報酬が増える。という仕組みです」
「なるほどー」
ほう、なかなか考えてあるじゃないか。
それなら大きな町だけが発展せず、複数の町と村のコミュニティーが発展していけるだろう。
追加報酬目当てで村にやってくる冒険者を護衛にしたら輸送も安全が確保でき、流通も盛んになる。
そうすれば町も栄えるし、村も潤う。
ギルド協会がしっかり報酬のバランスを取れば離れた村が依頼を出せない、依頼をこなしてもらえない、で荒廃することもなくなるわけだしな。
「では遠慮することなく今回はご厚意に甘えて近くでのお仕事をしましょうか。どんなのがありますか~」
カルマちゃんがお姉さんの用意してくれた依頼書に目を通していく。
「なになに~、『昼間の町の臨時衛士、期間は1週間』ですか」
「ソレは最近町に侵入する魔物が増えているから臨時で人手を増やそうとする町役場からの依頼よ。期間もあるし信用も置ける、手堅い仕事ね」
カルマちゃんが読んでる依頼書の説明をお姉さんがしてくれる。
何か至れり尽くせりじゃね。
「なるほど~、こっちは『周辺の魔物の調査要員の護衛』ですね」
「さっきの魔物の侵入が増えてる原因の調査をすることになったから護衛役を頼みたいというやつね」
「ふむ、どれもこれも臨時雇いの仕事ばかりじゃないか。」
俺様がそう言うと、
「そうね、定期的なのは常連さんが居たりして信用を築いてたりするから新人さんはまず信用作りから始めるのが普通なの。でも、今魔物の活性化で人手が不足してるから美味しい仕事があったりするわけ」
「う~ん、私としては助かります。お仕事頑張って美味しいご飯が食べたいです」
「そうね」
「よし、決めました。これにします」
カルマちゃんは一枚の依頼書を手に取って掲げたのだった。
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