第1話ー7
「それで、お嬢ちゃんに聞かせてもらいたいんだけど、冒険者になった後の夢ってある」
「夢ですか?」
すわ、ここで世界征服とか言わないだろうな。
と、身構えたが。
「へへへ、私王様になりたいんですよ」
「王様に」
「ソレも世界一の王様」
「ハハハ、ソレは大きく出たね」
「夢はいつだって大きくですよ」
「ハハハ、大きいのはいいことだ」
ふー、良かった。
カルマちゃんは純粋だから正直に言っちゃうかとも思ったが、意外としっかりしているようだ。
伊達に子供で大学院の院生をやってただけのことはある。
「それで、ロッキーさんの夢は何ですか」
屈託なく笑いながら問いかけるカルマちゃん。
それにロッキーはあからさまなぐらい照れながら顔を赤くして答えた。
「ハハハ、恥ずかしながらオジサン可愛いお嫁さんをもらって、幸せな家庭を築くことが夢なんだ」
あ”ぁ”。
何言ってんだコイツ。
「お”い”、言っておくがカルマちゃんは12歳なんだぞ。手ぇ出したらぶっ殺すぞ」
「へ?」
「はい?あ~、違う違う、そう言う意味じゃないから。ってカルマちゃんてまだ12歳なの」
「そうですよ」
「嬢ちゃんってドワーフだよね」
「違います」
「マジで、オジサンてっきりドワーフなんだと思ってた。」
ドワーフ。
ファンタジーに出てくる鍛冶に秀でた半分妖精の人種だったな。
その姿はヒト種としては子供のような小柄な体型をしていながら、大きな金づちを振り回す膂力を持つ頑丈さで知られる。
なるほど、ドワーフがこの世界にいるならばカルマちゃんの見た目と力からドワーフの成人ないしそれに近いものだと思われてもおかしくはない。
「ここにはドワーフが居るのですか」
「この辺りじゃ珍しいけどね」
カルマちゃんの質問に「驚いた~。」と言わんばかりに上を向いたロッキーが答える。
「しかし、ドワーフじゃないのにその力はすごいな」
「へへへ、自慢の腕力です。ロッキーさんと腕相撲しても負けませんよ」
「そんなにかい」
「やりますか」
「遠慮しとく。負けたら自信失くしちゃうから」
「おい、言っとくが本当にカルマちゃんに手出さないだろうな」
俺様は仲良く話す2人を見て、ロッキーに釘を刺しておく。
「安心しなよ。オジサングラマラスなお姉さん派だから」
「ガーン、フラれちゃいました」
「安心しろ、カルマちゃんには俺様が付いてる」
「わーい、ザックありがとう。ずっと一緒だよ」
「本当に仲いいわね。うらやましいぞ」
「それで早速だけど、冒険者登録しちゃいましょうか」
「は~い」
ロッキーの言葉に元気に返事をするカルマちゃん。カワイイ。
多分、RPGとかが好きなだけあって冒険者になるのが楽しみで仕方ないのだろう。
ワクワク、ウキウキしていらっしゃる。
そして、さっきとは別のカウンターに案内してもらった。
「ライムちゃ~ん。ちょっといいかい」
「ナンパならお断りよ」
とカウンターの中にいた女性に声をかけるロッキーだったが冷たく返される。
「違う違う、今回は冒険者志望の子の案内だよ」
ロッキーのその言葉でカウンターにやって来た女性は淵のとがった眼鏡をしたグラマラスな女性だった。
「あら、本当なのね、貴方が冒険者志望の子」
女性はカルマちゃんを見て納得した様子だ。
「貴方が新人を連れてくるなんてね、これもナンパの口実?」
「違うって。純粋に縁があって連れて来たんだ。やましいことはない」
ライムという女性とロッキーのやり取りを見ていて気が付いた。
「ねえねえ、ザック。あの2人ってやっぱり」
「おやおや、お子ちゃまなカルマちゃんでも気が付きましたか。ありゃイイ感じのお2人だぜ」
「お子ちゃまは余計だよ」
カルマちゃんは、ライムさんに手続きのためのテーブルに案内されて席についた。
「それじゃあカルマちゃんだっけ。さっそく冒険者の登録をしましょう。とはいっても簡単なものよ。冒険者カードを創るための質問をしていくからそれに答えてくれれば良いは。」
「はい。」
「ただし嘘はダメ。嘘は魔法でバレるから正直に答えてね」
「分かりました」
ライムさんはテーブルの中央にある地球儀みたいな道具の球体からぶら下がる振り子の下にカードを1枚セットする。
「それでは球体に手を置いて答えてください。」
そう言われてカルマちゃんは球体に手を置く。
すると球体はぼんやりと青色に輝きだした。
「汝の真名を応えよ」
「カルマです。」
ライムが質問してカルマちゃんが答えると、球体の明かりがわずかに強くなる。
「年は?」
「今年で12歳です」
そうやっていくつもの質問が続けられていき、今では球体よりもカードの方が明るく発光している。
「最後に問おう。汝は冒険者になって何をなす」
「13の希望を見つけ出して王様になります」
答えたとたんカードは虹色に光を強めていき、俺様は目をつぶらざる負えなかった。目ないけど。
「おめでとう。これで嬢ちゃんは冒険者だ」
「へへへ、ありがとうございます」
カルマちゃんは嬉しそうに冒険者カードを眺める。
「これってレベルとかも見られたりするんですか?」
「ん?レベルってなんだ」
「あ、そうですか。ありませんか」
若干しゅんっとするカルマちゃんも可愛い。
「それでこれでお仕事貰えるようになるんですよね。」
「ああ、それでだがどうだ。折角だし明日一緒に仕事をしないか。」
「え、案内してくれるんですか」
「ああ、せっかくだしな」
「お願いします」
ロッキーはどうやら面倒見がいいやつらしい。――のだが、俺様的にはカルマちゃんと仲良くなっていくのが妬ましい。
「それじゃぁ、今日はこのままステーキでも食いに行くか」
「ステーキ。ハイハイ、行きます」
と、この日は最後にカルマちゃんが満面の笑みを浮かべたのだった。
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