第1話ー6
「なるほど、嬢ちゃんの名前はカルマちゃんか」
俺達はロッキーという冒険者の勧めで冒険者になる――――と決める前に、冒険者とはどのようなものかを説明してもらうことにした。
「冒険者とは言うけどひとくくりにしたら何でも屋みたいなものだ」
立ち話も何だし、冒険者ギルドに案内ついでに説明してくれる。
「ちなみに、さっきの牛たちは回収ギルドってとこが回収してくれた」
「そのまんまだな」
「そのまんまだろ」
俺様の感想にロッキーは快活に笑いながら返してきた。
「その回収ギルドとは」
カルマちゃんがロッキーに疑問を投げかける。
「回収ギルドは冒険者や猟師に同行して狩った獲物を回収する運び屋のことだ。こいつらが居るおかげで俺みたいなものでも大物を倒したときに手がふさがらなくて済むんだ」
「なるほど。さっきその回収ギルドの方から紙を受け取ってましたが」
「領収書だな。回収屋がどんだけ回収したかを魔法の紙に書き記してくれている。こいつを冒険者ギルドにもってけば報酬がもらえるわけだ」
「今晩はあれでステーキじゃなかったんですか」
カルマちゃんが残念そうにつぶやく。
「ハハハ。安心しな。引き取り先は顔なじみの肉屋だ。話せばサービスしてくれるぜ」
「本当ですか」
途端に嬉しそうになる我がご主人。
「良かったです。そろそろ食料の備蓄が切れそうだったんですよ」
「この街にとどまるなら他の職も紹介できるが、旅をするなら冒険者が一番儲かるぜ」
と、ロッキーは冒険者を押してくる。
「おっと、ここだ。ここがこの街の冒険者ギルドだ」
と、ロッキーが仰ぎ示してくれた建物は他の家屋よりも大きな建物だった。
この街は俺様の知識では西部劇という映画に出てくるような木造の家屋がほとんどである。
冒険者ギルドもその例にもれず木造の建物だった。
「ここは各ギルドのまとめ役が集まるギルドのギルド、マスターギルドって呼ぶやつも居るが基本的には冒険者ギルドで通っている」
ロッキーはそう説明しながら木で出来た扉を開いて俺様達を中へと案内してくれた。
中は意外ときれいだった。
ならず者たちの集まりかと思っていたが、なるほどギルドのギルド。俺様的には役所と言った方がピンとくる感じだ。
「まずはこっちに来てくれ」
ロッキーはカルマちゃんを伴ってとあるカウンターへと向かった。
「こいつの換金をお願いしたい」
そう言ってロッキーはカウンターについていた受付嬢にさっきの領収書を渡した。
「かしこまりました。黒毛魔牛3頭の討伐ですね。1頭につき3万ギャラになりますが、今回はそれに突発的襲撃の解決がありますから5千ギャラの追加が為されます」
「お、そいつはありがたい」
話を聞く限り、さっきの事故のような暴れ牛の討伐で1頭3万5千ギャラというものが支払われるらしい。
あと、ギャラと言うのがこの世界の通貨なのだろう。
その報酬を受け取ったロッキーが、
「ほれ、カルマちゃんの分」
「え?」
「なんだくれるのか」
「1頭はカルマちゃんがやったんだから正当な取り分だ。ほんとは冒険者登録してないと換金とかできないんだけどな」
「いいんですか」
「ああ、もちろんだ。それより、冒険者登録をお勧めする講釈をしよう」
そう言って、建物内にある飲食スペースに案内させてもらった。
「いいかい、冒険者になると身分証が発行されて離れた街でも身分の証明ができる。これで他の町でも仕事を受けやすくなるんだ」
なるほど、仕事にありつけるのはいいぞ。
正直、カルマちゃんはサバイバルには向かないと思うから、物作りとその販売でお金を稼ぐのがいいと思う。
「それって、モンスターを狩るとかですか」
「カルマちゃん、何言ってん」
「へへへ、嬢ちゃん結構乗り気だね。」
「伊達にハルバードは持ってません」
そういやそうだった。
俺様ハルバートだった上にさっきはそれで牛を真っ二つにして見せてくれた。
「カルマちゃん。聞いていい」
「何ですか。」
「カルマちゃんの趣味は何?」
「RPGやモンスターを狩るゲームです」
なるほど納得がいった。
「つまりカルマちゃんはもう冒険者になりたくなってるんだよね」
「はいです」
良い笑顔で言ってくれました。
もはや俺様が何を言っても無駄だろう。
「仕方ない。それはいいとして――」
「おや、嬢ちゃんはやる気なのにザックくんはご不満かな」
「ソレはもちろん不満だよ。なんてたって俺様の可愛いいカルマたん――もとい、マイマスターが危険を冒すのは見過ごせないよ」
「過保護だなぁ~。まるでお父さんだ」
「実際はカルマちゃんが生みの親なんだけどね」
「うそ。マジで。それだと鍛冶屋になった方がいいんじゃないのか」
「俺様もそう思っている。だけど、カルマちゃんが冒険に出たがっているんだよ」
「ソレは心中お察しします。それはともかく、そのザックくんみたいなのは他にも作れないの?」
「う~ん、ザックは特別な材料を使ったからなぁ~。同じものを作るのは難しいかもしれないけど、実はそれを探す旅に出たいのです」
「なるほど、ならばもう冒険者になるしかないよね」
「ですよね」
「はぁ~。そうですね」
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