第1話ー3
俺様のご主人様は可愛いお手々で俺様をぶ~んぶ~ん振り回してからゴン!と石突をついて宣言した。
「私はこれより世界征服の旅に出る」
そしてグランピングの扉を開けて外へと飛び出した。
俺様にとって初めての外の光景。
それは異世界のサバイバル環境になるのだ。
どんな世界なのかワクワクしながらその世界を眺めた。
最初に目に飛び込んできたのはネコの尻尾だった。
フリンフリンとお尻で揺れていた。
のは良いのだが、そのネコは二足歩行をしている人間に見えた。ただし、頭の上にはネコミミが生えているが、ちゃんと服を着ている。
麻で出来ていると思われる素朴な感じの洋服である。
他にも動物の尻尾や耳が生えたヒトがちゃんと服を着て歩いている。
歩いてる場所もちゃんと整備された歩道で、脇の芝生では子供がボールを追いかけていたり、ベンチでお爺さんがうつらうつらとしながら日向ぼっこをしていた。
――てかどう見ても。
「ここ公園じゃん!」
俺様はそう叫ばずにはいられなかった。
「どう見ても街中の公園じゃん。しかもかなり平和で素朴な田舎町って感じの公園じゃないですか。サバイバルってどこでしてたの」
「もちろんここです。」
エッヘンと胸を張るカルマちゃん。
お歳のわりにお胸が育ってらっしゃるわね。
「――じゃない。俺様はこう巨大な猪やドラゴンの居る大自然を想像してたの」
「ドラゴンならあそこにいますよ」
カルマちゃんが指さす方を見ると公園の外だろう、道路ともいうべき場所にツルリとした肌感の、ドラゴンというよりかは恐竜のラプトルみたいなトカゲが居た。
そのトカゲは轡をかまされて馬車の車のような――というよりそれその物に繋がれて御者の指示を受けていた。
はっきり認めよう。ここは異世界だ。俺様達が生まれたエデンと言う世界とは全然違う世界だと。
だが――――。
「だが、どう見ても文明のある世界だよね」
俺様は叫ばずにはいられなかった。
しかし、カルマちゃんは可愛い顔で――――。
「そうですね」
「そうですねってえ、サバイバルはどうしたああああ」
「だからここでしてるんです」
「カルマちゃん。もしかしてブラスターを撃ち込んだウサギってうさ耳のヒトじゃないよね」
「違いますよ。ちゃんと町の外でカピバラみたいなウサギを狙いました」
良かった。
カルマちゃんが世界征服の前に殺人鬼になってなくて。しかも食う目的だったなら猟奇的とも付く。
「てかカピバラのサイズで外したんだ」
「仕方ないじゃないですか。意外と素早いんですよ」
まあそれは仕方ない。
訓練もなく動く的を打ち抜くにはセンスが居る。
爆散させたというなら当てたのだしまったくセンスがないわけでは無い。
てかブラスターは狩りには向かないだろう。
「てかそんなことより、少なくとも中世の世界位の文明は見られます。コンタクトを取ろうと思わまかったのですか」
「無視されたらつらいじゃない」
「引きこもりの発想ですよそれ」
「それに言葉が通じないかもしれないじゃないですか」
うむ、それは俺様も心配したことだ。
「だから、ザックを創るついでに翻訳機を作って、周辺の会話データを取ってあります」
「おお、やることはやってんじゃないか」
「ハイ、準備はできいてます」
「それじゃあさっそくコンタクトを取ってみよう」
「と、いう訳でザック、お願いします」
「俺様かよ。そこは自分で行きなさい」
「だってだって、怖いじゃないですか」
涙目で訴えて来るカルマちゃんが可愛くもあるが、ここは心を鬼にして言おう。
「ダメだ。これからこの世界の支配者になるお方が、自分から喋るのが恐いなんて理由であきらめちゃダメです」
「がーーーん。言われて見れば。ぅ~~~~~~分かりました。私やってみます」
うんうん、素直でいい娘だなぁ。
早速やる気を出しいたカルマちゃんが散歩中だろう猫耳のお姉さんに話しかけにいた。
「―――――ぁ、ぁの―――――――」
しかし蚊の鳴くような小さな声では届かずにお姉さんは立ち去ってしまった。
「―――――――ぁ」
しかしめげずに次は犬の散歩をして居る小太りの犬耳オジサン話しかけに行った。
「ぁのぁの―――――――――――」
しかしこれも相手にしてもらえずスルーされてしまった。
ついにはボールで遊ぶ子供たちに突撃して、顔面にボールをぶつけられていた。
「ダメです。全然話が通じていません」
カルマちゃんがオレ様を抱きしめるように泣きついて来た。
「この世界の人達は話の通じない野蛮人なのです」
ボールをぶつけられた顔をさすりながら、カルマちゃんはそう叫ぶ。
「そんなわけあるか。そもそも話し声が聞こえていないんだ」
「え?あんな大きなお耳があるのに」
「そうだよ。ボールをぶつけられたのだってわざとじゃない。むしろ子供たちも不思議そうにしてただろう」
まぁ、わざとじゃなとしてもカルマちゃんの可愛いお顔にボールをぶつけたのは許しがたいが。
「大体こんな公園でキャンプをしていて――」
「キャンプじゃありません。サバイバルです」
そこは譲れないのか。
「まぁいい、サバイバルをしていてだれにも注意されないとか、俺様がこんなに喋っていても注目されない時点で分かると思うが」
「あっ!」
どうやら分かってくれたようだ。
ステルスを切り忘れ―――。
「お鍋火にかけっぱなしでした~~~~」
「そっちかよ」
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