第1話ー2

 カルマ、それが俺様のマスターの名前か。

 しかし、エデンフィール大学院の工科院生か。

 なるほど、納得だ。

 俺様が設置されていたのはそのエデンフィール大学院の校舎だったからな。

 しかしそうなると気になるのが。

「カルマちゃんの歳はいくつですか」

「え~、女の子に歳を聞く」

「いいじゃん。相棒になるんだから」

「しょうがないね。実は12歳なのです」

「マジで。それで院生だなんて、しかもエデンフィール大学院ってことは世界最高の頭脳が集まっていた場所だろ。カルマちゃんマジ天才?」

「うん。カルマちゃんマジ天才なのだ」


 まずいな。

 ロリババアじゃなくてマジのちびっこ天才か。

 こういうやつは得意分野はいいが、それ以外ではメンタルが豆腐だ。

 聞きたくはなかったがもう確認しなければ。

「で、カルマちゃん以外の人は?」

 すっごい可愛い笑顔が返って来た。

「いないよ」


 ですよねー。だって俺様は1人用の脱出ポッドだったもん。システム的には他にも連結してたけどそれって物資や研究資料用だったし。マジでカルマちゃん1人ですか。

 つまり俺様が面倒見なくちゃダメなんだよな。


「一つ聞きたいがいいかい」

「なんですか」

 俺の質問に元気よく答えてくれるカルマちゃん。

「なんで俺様をサルベージして喋れる武器にしたんだ」

 本来脱出ポッドのシステムである俺様は、カルマちゃんが脱出して生き延びた時点でお役御免のはずだ。

 それをわざわざ改造して喋れるようにした理由とは?

「…………人間て、研究の為なら1週間くらい人と話さなくても平気なのに、なんでサバイバルだと3日と持たないの」

「いえ、普通人間は研究でも1週間も喋らねーとか無理だから。今が正常なんですよ。マスター」

「それじゃあ私が異常だったみたいじゃない!」

「みたいじゃなくて、そのものですよ」

「そんな馬鹿な私はエデン始まって以来の天才と言われたのよ。その私が異常なんて」

 カルマちゃんは頭を抱えて叫んでいる。

 大分情緒が不安定になっているみたいだ。

 早く何とかしないと。

「とりあえずこの星に喋れる人間はいないのですか」

「分からないわ」

「分からない?何故です。コンテナに積んでる機材を使えば簡単に探索できるじゃ――――」

 そこで思い至った。

 俺様に繋がっていたシステムたちはどうした?

 何故俺だけがこうして喋っている。

 疑問の答えはカルマちゃんが口にしてくれた。

「この世界に来た時にばらばらになってどっかに飛んで行ったわ」

 事態は思った以上に深刻みたいだ。


「それで、コンテナを失ってしまった為、カルマちゃんは究明ポッドに持ち込んだグランピングキッドと、そこに入れていた物資以外に何もない状態だと」

「はい」

「あの~、別に怒ってるわけでは無いのでそんなに落ち込まないで」

「でも、所詮天才だって言われたのも学校の中だけ。外に出れば私なんてゴミクズなんだわ」

 あ~~。泣いてるカルマちゃんも可愛いなぁ~。

 けど笑ってる顔の方が可愛いし、良し。ここは慰めてあげよう。

「けどその状況で俺様をこんな風に改造してしまえる才能はすごいぞ」

「え?」

「だってそうだろ。モノが作れるって言うことは生き残るすべを創れるってことだ。カルマちゃんはゴミクズなんかじゃない」

「本当ですか」

 カルマちゃんの顔に明かりがともる。

「本当だとも」

「ふへへへ。そうですか。私すごいですか」

「ああ、すごいすごい」

「それってどのくらいですか?」

「どのくらいって――――あ~~~~。」

 期待に満ちた瞳を向けられるけど、どう答える。

 う~~~ん。

 そうだ。

「世界を支配できちゃうくらいだよ」

「世界を支配。つまり世界征服。いやいやいや。さすがにそこまでは~~~」

「そんなことないって。俺様思うに、もしコンテナがあったらあっという間にこの世界を支配する王に成れてたよ」

「またまた~。おだてすぎですよ」

「そんなことないって」

「ほんと~ですか~」

 うんうん、まんざらでもない感じ。

「そおういうなら~。一緒にしませんか」

「ん?何を」

「散らばったコンテナを回収して世界征服。しませんか?」

「――んん?」



「という訳で私の世界征服計画がここから始まるので~す」

「お~~~~~」

 おだてたら調子に乗りまくりました。

 ところでこの世界には知的生命体は居るのかな。

 いまだに外の様子を見れてないんだけど。

「まずはこの世界のことを知ることから始めた方がいいと思うぜ。」

「おお~~~、ザックが私にない発想をしてくれます。ザック作ってよかった。」

 目をキラキラさせながら俺様を軽々掲げるマイマスター。

 ――――あれ?俺様そんなに軽いかな?

 あぁ、そうか。俺様おもちゃなんだ。

 まあ、こんなおこちゃまが刃物を振り回すのは危ないし、その方がイイかも知れないけどね。

 出来ればロボットにしてくれればいろんなことを代わりにしてあげられたのに。

「それで世界を知った後はどうしますか」

「散逸したコンテナを探そう」

「おう。なんだかやる気が出てきました。折角だしコンテナじゃなくてなんかこう、かっこいい名前を付けましょう」

「かっこいい名前か。全部で13個あったはずだから、13のナニナニとか?」

「世界を手にする13の~~~、13の~~~~、う~~~ん。」

「希望とかどうだ」

「希望。13の希望ですか。いいですね」

「じゃあそれで決まりだな。」

「それじゃあ、世界征服の野望を秘めて、13の希望を探すたびに出ましょう」

 そう言ってカルマちゃんは俺様を片手で振り回しながら、外へと飛び出したのである。

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