私は貴方の武器であり、家族であり友である。――――だから貴方は一人ぼっちじゃない。

軽井 空気

プロローグ 少女と武器の旅立ち

第1話ー1 ザックの目覚めは異世界で。

――ピーー。


認証完了。


「ザックカリバー」初期モードで起動します。


――――――――――――――――


 目が覚めて最初に認識したのは満面の笑顔だった。


「わ~~。やったぁ~~~。動いた、動いた」


 目の前にいるのは小さな女の子だった。

 身長は140㎝位で、子供みたいにぴょんぴょん飛び跳ねて踊っている。

 きれいな金髪を頭の左右にお団子を作るように結んでツインテールにしてる。その尻尾の先は腰よりも下にあるほどに長い。

 それでぴょんぴょん跳ねるもんだから、しっぽがパタパタ跳ねて、まるで犬か何かの動物みたいだった。

 俺様を覗き込んでいた時の瞳は澄んだ湖のように青色だった。

 服は白い化繊のシャツに黒いジャケット。ジャケットにはポケットがいっぱいついている。

 スカートは紺色のミニスカート。膝上の黒いニーソックスを履いている。

 そんでぴょんぴょん跳ねるからスカートの中身が見えちまっているぜ。

 黒のガーターベルトとかしてるのに、パンツは白の清純派か。いや、見た目の年齢から考えてただの子供パンツかもしれない。

 そして靴はハイスペックなスニーカーだ。跳ね回ってもほとんど足音がしない。靴の裏もかなりグリップが良さそうだ。

 なんだか、今から山にハイキングに出かける子供みたいだ。

 と、よく周りを見ればテントの中みたいだ。とは言え、普通の小さなテントじゃなくてベッドもあるホテルの部屋のようなテント。グランピングというやつだったかな。

 そしてその女の子は踊るのをやめると俺様に近づいて来た。

「ねぇ、ザックカリバー。何かお話してちょうだい」

 可愛らしい声でおねだりなんかされちゃったら答えなきゃならないだろう。


「マイネームイズ「ザックカリバー」。ザックと呼んでくれ。ところで、問おう、お貴女が私のマスターか。それとも俺様ちゃんが貴方のマスターか?へっへっへ、which is goodどっちがいい


「……おかしいなぁ。まだ壊れてるなんて」

 そう言って工具を片手に首を傾げる女の子。

「わ~~~、待て待て壊れてない。これ正常。俺様パーペキ。イッツ、ジョーク。ユーモアが基本装備されてるだけだから。だからそのドリルをしまってちょうだい。やめて刺さないで。ああああああああああああああああああああああああああああああ」


「うむ、やっぱり壊れてない」

 女の子が腕を組んで納得した。

「だからそう言ってるじゃん。セルフチェックはオールグリーンですよ」

「じゃあこれがデフォルトなの。センス悪すぎ」

「うう、汚された。無理やり奥の奥まで見られちゃった」

「キモイ言い方しないで」

 女の子はすっごく嫌そうな顔をしながら見下してくる。

 やだゾクゾクしちゃうぜ。

「ところでザックは自分が何者か分かる」

「ハイ勿論。ザックカリバーは災害時緊急次元脱出ポッドの管制システムです」

「うむうむ。だがそれは過去の姿。見なさい貴方の新しい姿を」

 そう言われて自分の姿を見てみる。

 黒光りする長い柄。重厚な石突。1メートルはありそうな広くて分厚い刃。赤い宝石が目のように嵌まっている柄頭。

「な、なんじゃこりゃあああああああああああ」

 俺様武器になってる。

「今のあなたはハルバートよ。またはポールアックスともいうわ。」

 黒光りする鋼鉄の武器。2メートルはあるその体を俺様の意思に合わせた赤い文様が瞬く。

「なにこれかっけ~~~」

「なら文句ないわよね」

「ソレはもちろん。使われることのない緊急用の脱出ポッドとして埃をかぶっているより雲泥の差ですよ。しかし、なんで俺様ちゃんこんなんになったの」

「それは私が改造したからです。」

「なんですと。まさか俺様もう必要ないからって廃棄処分されちゃったの」

「いいえ、貴方は立派に役目を果たしました。だから私は今生きてます。」

「そうか。よかった~。俺様ちゃんと役目を果たせたのか。―――――って、よかねーよ。俺様ちゃんが役目を果たしたってことは災害があったってことだろ。しかも次元跳躍するくらいの」

「はいそうです」

「もしかしてエデン滅びちゃった」

「でしょうね。巨大隕石に衝突しちゃいましたから。最後に見た故郷の姿は火の海でした」

「マジか~。それで何で俺様改造されたの」

「そりゃあこの世界で生きるのに武器が必要だったからです」

「なるほど、――あれ?ブラスターとかは」

 女の子は顔を背けて。

「撃ち尽くしました」

「それほど過酷な世界なのですか」

「ウサギにね、うさぎに全然当たんないんだ」

「ウサギにブラスター使うなよ」

「やっと当たったと思ったら木っ端みじんになるし」

「馬鹿なの。そりゃそうなるわ」

「だからね、殴る系にしたんだ」

「それでこの図体ならまた粉々にしそうだが」

「大丈夫。手加減するから」

「左様ですか」

 正直色々心配事がありすぎる。

 てかこんな子供一人だけが生き残ったのか?

 気になるところはたくさんあるがこいつを聞いておかないと。

「で、貴方がマスターでいいのかい」

「そうだよ」

「ならばマスターの名前を教えてほしい」

「名前?名前はカルマ。エデンフィール大学院工科院生だったカルマだよ」

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