GW編3

 道路脇の意図的に並び整えられている、自然な景観を作り上げるための不自然な木々が見えないくらいには田舎道に入ってきた頃、橋本がしっかりと寝ているのを確認した青木さんがいつもの朗らかな声で話始めた。


「しっかりと薬が効いたみたいですね。昨日連絡が伝わったわけですし、寝不足も相まってでしょうか?」


 そう言えば俺以外の連中には昨日、青木さんが連絡を回したんだったな。


「なんで橋本がいるんですか?」


「決まってるじゃん、女子一人で寂しいからだよ!」


 俺が青木さんにした質問を琴乃が拾う。


 さらに青木さんからも補足が入った。


「もともと私もご一緒させていただく予定だったんですが、急遽用事が入りまして……。このままだと四人部屋を琴乃さん一人で使うという状態になるので、お一人招待していいという話になったんです」


「琴野ちゃんなら一人でも、パソコンで無限に時間を潰せるんないかい?」


「天ちゃんの削除された閲覧履歴復元して、学校用のSNSアカウントをハッキングして誤爆ってことにしても五分も潰せないんですけど?」


「琴乃ちゃん、目が笑ってないよ……。このタイミングでスマホ取り出すのもやめて!」


 琴乃は自分からオタクを主張するくせに、人から指摘されるのを嫌う節がある。


 触らぬ神に祟りはなしということで、後部座席の会話は聞かなかったことにしよう。代わりと言ってはなんだが、橋本は琴乃への生贄として誘い出されたことは理解した。


「それはさておき、今回の趣旨を説明しますね」


 黄色の信号を後続車の関係ですり抜けながら、青木さんがゆっくりと話し始める。


「今回の依頼は、とある旅館へ送られた爆破予告を未然に食い止めることです」


「「爆破予告⁉」」


 後部座席から悲鳴に近い叫び声が聞こえてくる。


「それで爆弾解体の復習をさせられたのか」と樹人。


「そんな事なら雪ちゃん誘わなかったのに」と琴乃。


「むにゃ……」と橋本。熟睡しているようで何よりだ。


 そうして月崎から聞いた話と同様の話が進められた。


 相変わらず朗らかに語られる物騒な内容を横耳に聞きながら、俺は思考の中でため息をつく。


(爆破を未然に防ごうとする人の確保か)


 そもそも月崎の意図が分からない。なぜ爆破を未然に防ごうとする人物を捕まえなければならないのか。それではまるで月崎自身が爆破を望んでいるみたいだ。


 後部座席で映画やアニメの爆弾トークで盛り上がる二人をよそに思考を整理しようとするが、現時点では情報もなにもあったものではない。


 すべては到着してからだ。


 俺は思考を強引に中断すると静かに車窓の風景へと目を向けた。

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