第31話 ドワーフ族の里へ(その1)
樵のアンドレより先に金属加工のできる鍛冶師集団のドワーフ族の元に行く事にした。・・・樵のアンドレに関してはザルーダの爺さんが姪っ子のアリアナの件でまだ気持ちに整理がついていないようだ。エルフ族は年齢も長命なことから、思いこんだらなかなか変わらなくて頑固だ。
まあ俺としても金属加工のできるドワーフ族をできれば仲間にしたい。
それは、俺がダンジョン探索の際に北海道の爺さんの遺品の一つの猟銃を使った。
その猟銃の空薬莢を拾って、
『フレッシュ』
という魔法を使ったら空薬莢の外側が綺麗になって中の火薬も再生された。
弾も再生されたら良かったがそいつは無理だった。
この薬莢に入る弾をドワーフ族の金属加工の技術によって作って欲しいのだ。
それに俺達が召喚された時に持ち込んだ裁縫用の針が全て折れてしまった。
俺も真も簡単な裁縫セットを持っていたが、この裁縫セットの使用頻度は高い。
なぜなら、アマエリヤ帝国帝都周辺ではある程度の織物や裁縫の技術が進んではいるが、地方に行くにしたがって衣服の状況は原始時代の住民のように毛皮を着ている(巻いている!)のがやっとの現状だ。
エルフの隠れ里も同様の状態である、この状態では俺達の持ちこんだ裁縫用の針は文明の利器であり使用頻度が高くなるのは当然で損耗が激しかった。
また仲間になった少年盗賊団の子供達に手足の欠損した者が多い、彼等の義手や義足は今は木製だが、これを金属製のバネを利用して歩きやすく、物をつかみやすくしてやりたいのだ。
それだけではないお粗末な石器時代のような石を使った農機具や武器を金属製のものにしていきたい。
それで優先順位を考えると樵のアンドレに会うよりも何としてもドワーフ族に会いに行く事にした。
エルフ族は木工の加工技術は天才的だが、どうしても木工品は金属加工品よりも脆く細かい部分ですぐ折れたりする。
鉄よりも固いと言う鉄骨木という木も加工する事が出来るが、鉄骨木は非常に稀にしか生えていない貴重な木ではあるが繊維方向によってはやはり脆いのだ。
種族特性で使う魔法が火と水という関係からか、種族間もあまり仲が良くないとはいえドワーフ族の里についてはエルフの隠れ里に住む住民が良く知っている。
それでザルーガさんも名乗りを上げたが身重な妻に止められて、ザルーダの爺さんがドワーフ族の里まで道案内をすると言うことになった。
ドワーフ族の里に向かって行くメンバーは俺と真、地図作成の関係でシンディそして道案内のザルーダの爺さんとその弟子のアリアナ、天使族の双子のアンソワーとアンドリュー、前回のダンジョンの事もあり護衛役としてソルジャーのおっさんと双子のドーンとソドムが同行する事になった。
少年盗賊団の砦からではエルフの里よりもドワーフ族の里が近いと言っても馬で一週間くらいの距離だ。
人間が1日歩ける距離は約30キロ程で、馬では一日その倍の約50キロ前後なので350キロ程の距離だ。・・・う~ん、ちなみに東京から名古屋付近か、かなり遠いぞ!
これは道が整備されていれば馬で1日50キロほど移動できるが、現実はその半分も移動出来ればしめたものだ。
距離的には1週間だが現実は1か月以上かかるかもしれない。
ドワーフ族への土産物にエルフの隠れ里の特性を生かした果物類を持って行く事にしたが、ひょっとして1か月以上もかかると腐ってしまうので果物類をドライフルーツにした。
ドライフルーツはこの世界には無い、最初は作っても腐っていると言って、おっかなびっくりで食べていたエルフ族もあまりの甘さに喜んでいる。・・・新たな地方の特産品が出来た!
それにエルフ族の木の皿などの木工品や工芸品も馬車に積んだ。
馬車に荷物を積んで進み始めて先行きが不安になった。
馬車の振動の凄さもさることながら、馬車が樹林地帯の木々に引っ掛かって先に進めないのだよ!
獣道のような細い曲がりくねった道で樹木が馬車の行く手を塞いでいる。
邪魔をする樹木をエルフ族で木魔法に特化したザルーダの爺さんとアリアナが木々を切り倒した。
さらに獣道のような細い道を馬車が走りやすくするために土魔法を使って道路を整備していたら遅々として進めない。
よく考えたら先のダンジョン攻略の時に手に入れた俺の魔法の袋に馬(生き物は魔法の袋に入れれない。)は無理だが荷馬車ごと荷物を入れていけば良いのだ。
馬車や荷馬車で行くのは旅の行程の最初の1日であきらめた。
それらの荷物を積んだ荷車と宿泊用の馬車を丸ごと俺の魔法の袋に入れた。
『グニャリ』
と馬車や荷馬車が歪むと魔法の袋に入る。・・・う~ん⁉何となく変な感覚だ。
それに魔法の袋の中は別の次元で果物類は腐らない、あんなに苦労してドライフルーツを作ったのに。
新鮮な果物も追加した。
干し肉以外に生の肉も追加された。
荷馬車や馬車が無くなった事で同行者全員が馬に乗って再出発だ。
目的のドワーフ族の里はザルーダの爺さんから、小高い丘に囲まれた盆地にありそこは、火山性ガスが噴き出している温泉地帯で鉄鉱石などの有力な鉱石が採取できるそうだ。
ザルーダの爺さんの話からすると、どうも噴火口の跡に里を築いたようだ。
実はエルフの隠れ里や俺達の新たな砦からドワーフ族の里方面から立ち昇る黒い噴煙が見えるので、その噴煙に向かって行けばドワーフ族の里付近まで行くことが簡単に出来る。
エルフの隠れ里の住民は
「いつもはドワーフ族の里から立ち昇る噴煙は白色で雲に紛れて良く分からなかったのに、魔法を使う為の器官を作る儀式の最終日に起きた、泉の側の山の噴火の影響か?かなり遠いドワーフ族の里でも噴火でも起きたのか黒い噴煙になった。」
等と不穏なことを言っている。
ただ、ドワーフ族の里付近までは辿り着けてもドワーフ族の里まで行くには、この吹き出す黒い噴煙の中を進まなければいけない。
黒く噴き出している火山性ガスが自然の結界となっている、そのなかを進まなければいけない。
噴煙を吹き飛ばす風魔法が使えるか結界魔法が使えて、さらにはドワーフ族の里までの道を知っている者でもない限りドワーフ族の里まで辿り着けるものは皆無だ。
それで風魔法が上手に使える天使族のアンソワーとアンドリューの双子がこのメンバーに加わっているのだ。
それにこの双子は空を飛べる。
鬱蒼とした樹林の中や渓谷で方向が分からない時は空を飛んで黒い噴煙を確認してもらえばよい。
ついでと言ってはなんだが、今回の旅の途中この世界には無い正確な地図を作成しながら行く事にした。
地図作成上今更なのだが、この地方が何処に所属するのかザルーダの爺さんに尋ねたところ、エルフ族の隠れ里もそうだが今から向かおうとしているドワーフ族の里もアマエリヤ帝国配下のカイル伯爵が支配するカイル地方と呼ばれる地域に所属するらしい。
エルフの隠れ里やドワーフ族の里もそうだが、俺達が拠点とした砦と同様にカイル地方の領主に税金を支払っていないと言う。・・・う~んアマエリヤ帝国の関係と金の関係か、一波乱起きそうな何となくきな臭いものを感じる。
全員が馬に乗った。
この馬はアマエリヤ帝国の皇弟達が俺達を捕まえる際に乗ってきた馬だ。
馬は元々は魔獣かと思われるほど大きくて気が荒かったが、アマエリヤ帝国の人々が捕まえた馬を交配させて現在俺達が乗れるような馬が出来上がった。
それでも気が荒い馬が多い!
木でできたハミは噛み折る。・・・木魔法が得意なエルフ族のザルーダの爺さんやアリアナがいるから大量にハミの予備があるが、ドワーフ族の里で金属製のハミを作ってもらうぞ‼
鐙が無いのでよく振り落とされた。・・・俺達の乗る馬の鐙は日本風の足裏全体がのせれる形状にして取り付けたので何とか振り落とされないで旅ができる。
さあ黒い噴煙を噴き出すドワーフ族の里に向かって全員が馬を進める。
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