第161話 コスプレ談義と同盟討議

 徳川邸に来た早々、茂香さんの従妹である吉川萌絵さんと小早川柊さんがめちゃくちゃ興奮している。


「も、茂香ねぇ!! 徳川さんの家ってめちゃくちゃ豪邸じゃない!?」


「でしょう? 私も最初はとても驚いたわ~」


「わ、私……お家の中や、お庭で迷子にならないかしらぁ?」


「フフフ……柊ちゃんならあり得るわね~」


「えーっ、どうしよう? 茂香お姉ちゃんも萌絵ちゃんも私のそばから離れないでね?」


「嫌よ。私は一人でこの家を探検したいんだから!!」


「私も何とかして颯君の近くにいる様に頑張ろうと思っているから柊ちゃんは他の人達と仲良くなって一緒に遊べばいいんだよ~」


「ふ、二人共、冷た過ぎるんじゃない!?」


 茂香さんが二人を呼びたいと言ったはずなのに、一緒につるむ気は全然、無いみたいだな?



「あ、あのぉ……」


「ん? あなたは徳川さんのところの服部さんだったかしら~? 私達に何か御用かな~?」


「は、はい……こういう話を一緒にできる人があまりいないので少しお話がしたいなぁと思いまして……」


「こういう話って何の話なの?」


 華子の奴、もしかしたら……


「は、はい……『コスプレ』についてお話がしたいなぁと……」


「 「 「えっ、コスプレですって!?」 」 」


 やはりコスプレの話だったか。でもまぁ華子だったらそうだろうな。


 っていうか、華子が前の『コスプレ大会』の準優勝コスプレーヤーってのは茂香さん達は知らないんだよな?


「はい、コスプレについてです……実は私……以前の『コスプレ大会』で皆さんの魔法少女コスプレに負けた『クノイチちゃん』なんです……」


「 「 「えーーーっ、クノイチちゃんですって~っ!!??」 」 」


「そ、そうだったの服部さん!? 私、ここ最近で一番驚いちゃったわ~!! その事をもっと前に言ってくれていれば、早くに仲良くなれたのに~」


「そうだよ、服部さん!! いくら徳川さんと茂香ねぇが恋敵だといってもソレはソレ、コスプレはコスプレよ!!」


 吉川さん、それを言うなら『ソレはソレ、コレはこコレ』と言うのでは?


「あ、ありがとうございます。勇気を出して声をかけて良かったです……」


「私、あの時のクノイチちゃんのコスプレを見て正直、負けるかもって思ったんだよぉ。それくらい服部さんのコスプレは完璧だったわ」


「小早川さん、ありがとうございます。そう言ってもらえるだけで幸せです」


「これは楽しい夜になりそうね? 茂香ねぇ、今日は私達を呼んでくれてありがとね? 私と柊はこれから服部さんと花火大会までコスプレ談義で盛り上がるから茂香ねえは竹中君に好きなだけつきまとってくれて構わないから、自由に行動してちょうだい!! ね、柊?」


 好きなだけつきまとわられるのは俺が困るんですけど!!


「だねぇ……私も萌絵ちゃんと服部さんが傍にいてくれれば茂香お姉ちゃんはいなくても大丈夫だから好きにしてくれていいよ」


「ちょっとアナタ達、私を仲間外れにしないでよ~? 私だって服部さんとコスプレ談義をしたいわ~」


「でも竹中君の近くにいたいんでしょ?」


「いたいけどさ~服部さんとコスプレ談義もしたいわ。衣装やメイクについて色々と聞いてみたいことがたくさんあるしさ~」


「わ、私も毛利さんともお話がしたいです……」


「あら~嬉しいことを言ってくれるじゃない。ね、二人共? 服部さんがそう言ってくれているのに私がコスプレ談義に加わらないとお話にならないわよ~って事で向こうの四人掛けのテーブルでお話をしましょう!! だから颯君? 私はしばらくお相手ができないけど寂しがらないでね~?」


「ハ、ハハハ……」



————————————————————————


 さてと、茂香さんの従妹さん達はいきなりこんな大勢いるところに来ても大丈夫みたいだから次は静香さんのグループの人達を……


 ん? 向こうの方でアレは山本カンナさんかな? 何か怒っている様に見えるけど……


「どうかされましたか?」


「ああ、竹中君、ちょっと聞いてよ!? 静香ね、身勝手で酷いのよ!!」


「えっ?」


「カンナ、私は別に身勝手でも無いし、酷くも無いわよ!!」


「でもカンナが怒るのも無理ないわ。こんな大事な事を勝手に決めちゃうんだからさぁ……私だって良い気はしないわよ。私達に相談してからでも遅くは無いじゃない!?」


 えっと……このメガネをかけた人はたしか馬場野々花さんだったよな?


「そうそう、今まで静香の願いを叶える為にカンナや野々花が中心になって色々と考えてくれていたのにさぁ……いくら戦況が不利だからって、よりによってさぁ……」


 この千夏と同じ匂いがする金髪ギャルは内藤麻美子さんだったっけ?


 しかし俺もよくこれだけ多くの人達の名前を短期間で覚える事ができたよな?

 それだけは自分で自分を褒めてやろう……


「あ、あのぉ? 静香さんが勝手に何を決めたのですか?」


「 「それがさ、織田会長と同盟を結んだって言うんだよ!! どう思う、竹中君!?」 」


 この二人は超脇役の山県真優さんと高坂真樹さんだな!?


 うん、俺偉い!! って褒めている場合じゃないよな?


「ああ、その事ですか? 俺は妹の詩音から聞いて知っていましたよ。その同盟に何か問題があるんでしょうか?」


「大アリよ、竹中君!!」


 ビックリするじゃないか? 山本さん、いきなり大きな声を出さないでくださいよ。


「私達は今まで色んな形で打倒織田乃恵瑠を掲げて行動してきたの。それは『竹中颯争奪戦』でも例外じゃ無いわ。仮に誰かに負けたとしても織田会長だけには負けたくないっていう思いが全員にあるのよ。それが張本人の静香がちょっと織田会長の家でプチ合宿をして親しくなったからって同盟を結ぶのはあり得ない話なのよ」


「でもカンナ、私は三年だから生徒会長にはなれないんだし、生徒会長候補の誰かを応援しなくちゃいけないんだしさ……それで織田会長が勝てば後は颯君が織田会長か私のどちらかを選ぶだけなんだし……」


 俺がらみの話だからめっちゃくちゃこの場に居づらいぞ!!


「竹中君が静香を選ばなかったらどうするのよ!? 諦められるの? 一番、負けたくない人に負ける事に静香は耐えれるの!?」


「うーん……」


 山本さんの問いかけにめちゃくちゃ悩んでいるぞ。元々、静香さんと乃恵瑠さんは犬猿の仲だったしな。そのお陰で俺は二人に校門前で殴られた事もあったくらいだからな。


「冷静に考えるとカンナの言う通りかもしれないわね……織田会長の作戦に引っかかるところだったかもしれないわ。そ、それじゃぁさぁ……同盟を結ぶ前に私が浮かんだ案を聞いてもらえるかな? まぁこの案も無謀だと思うから、あなた達に大反対されるかもしれないけどさ……」


 え? どんな案なんだろう?


「颯君、ゴメンね? この案は颯君に聞かれちゃ困る案だから……」


「え? わ、分かりました。俺は仕事に戻りますね?」


 俺に聞かれたら困るって言われると凄く気になるじゃないか!!


 俺がその場から離れると直ぐに静香さんはカンナさん達に小声で話をし始めたみたいだけど……


「 「 「おーっ!! その案、めちゃくちゃ良いじゃない!!」 」 」

「 「うん、一か八かそれでいきましょうよ!!」 」 

「は、颯君……困らないかなぁ……?」

「大丈夫よ。何とかなるわよ!!」


 めっ、めちゃくちゃ気になるじゃねぇか!!

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